2019年8月22日
はじめに
私は、若いころから晴耕雨読という言葉が好きでした。
医師となって半世紀になりますが、今の生活こそ晴耕雨読にしたいと考えています。
私にとって耕とは眼前の患者さん方を診ること、読とはヒマを見つけて新しい医学論文に目を通し、自分が診る目を高めたいという気持ちです。
たくさんの方々を診るほど、難しい、と実感しています。
他方でこれまでの知識に新しく付け加えられていく情報は、特に欧米から伝えられてくる最新の臨床情報は際立って増えています。
山中伸弥先生のiPS細胞に関するような研究は、基礎研究として従来の考え方を根こそぎに変えていく大きな力を持っています。
しかし、臨床医学の中ではこれまでの情報をすっかり変えるような研究はわずかであり、多くの研究はゆっくりですが積み上げることにより、確実に医学は進歩していきます。 断片的であっても、それらの一部を患者さんに届けたいというのがこのコラムの趣旨です。
松岡正剛氏は、幅広い著作活動をしている評論家です。私が長く診ていた患者さんが教えてくれました。患者さんは元高級官僚でしたが、長い間、重症の呼吸器疾患の治療を受けており、殆ど自宅からは出られない生活でした。
正剛ちゃん(と彼は呼んでいました)の評論はどれも面白く、身動きできない体でも生きる勇気を与えてくる、今はこれだけが楽しみ、と言っていました。
松岡正剛氏は、千夜千冊というホームページ( https://1000ya.isis.ne.jp/top/ )の中で目に留まった単行書の評論を長い間、書き続けています。
2019年8月7日現在で、1717夜の連載となっています。
私は、光栄にも1629夜に自分の著書、「肺の話、岩波新書、1998年刊」を取り上げて戴くという名誉に浴しました。
これは、呼吸器の解説書が少なく、しかも、たまたま、松岡さんが肺がんの手術を受けられたという偶然があったからであり、千夜千冊で取り上げられている他の有名な文学書とは同じ棚に並ぶべくもありません。
しかし、いつか松岡さんのように医学論文を患者さんの目線で解説したいと考えていました。
呼吸ケアクリニック東京は、2019年4月1日に開院しました。
この日は、ちょうど、新元号「令和」が発表され、私たちには厳粛な記念すべき日となりました。
呼吸ケアクリニック東京は、私たちの前任地、日本医科大学呼吸ケアクリニックでの16年間の診療経験を踏まえての新しい出発です。
当施設での診療の目標は以下の4点です。
1)専門性の高い呼吸器診療の実践
2)高い医療サービスを行う
3)医療連携を重視する
4)つねに新しい医療情報の発信と受信を行う
これらは、独立した項目のように思えますが、専門性の高い医療は新しい情報にもとづき、これが日常の診療に反映されるべきであり、また、慢性の疾患では他の医療機関との綿密な連携が必要です。
このコラムでは以上のような視点に立ち、日常の診療で必要な情報を解説していきたいと考えています。
どうか宜しくお願い申しあげます。
呼吸ケアクリニック東京・臨床呼吸器疾患研究所
理事長 木田 厚瑞
医師スタッフ:
所長 茂木 孝
副所長 平松 久弥子
医員 森井 恵子
※無断転載禁止
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