2019年10月1日
慢性の病気では重なりあうと治療が複雑化するだけでなく、どちらか単独よりも入院回数が増え、生存期間が短くなることが知られています。
COPD(慢性閉塞性肺疾患;肺気腫、慢性気管支炎)は中高年に多い病気です。他方、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)もまた中高年に多い病気です。COPD、 OSAの有病率はそれぞれが40歳以上では約10%と云われています。具体的にはOSAの患者でCOPDを合併しているのは8-16%。COPDの患者でOSAを合併しているのは5-65%と報告されています。なお、両者が重なった病気は、重複症候群(overlap syndrome)と呼ばれています。
どのくらいの人が両方を合併しているかは不明です。COPDもOSAも経過中に心血管病変(心筋梗塞、脳梗塞など)を起こしやすいことが知られています。
ここで紹介する論文 [1]は、両方を合併している人を中心にカナダ、トロントで約1万人を10年以上、追跡調査し、心血管病変がどのくらいの頻度で起こるかを調べたものです。
Q. 研究の方法と対象は
OSAは、AHI指数(睡眠中に1時間当たり無呼吸、低呼吸がどのくらいの頻度で起こるか)が30以上の患者としています。これは重症のOSAに相当し、調査患者の30%が相当しています。また、睡眠中の血中酸素飽和度(正常では97%以上)が計10分間以上、90%以下になる患者が全体の25%いました。COPD患者は全体の12%いました。COPDの診断基準は救急受診か、入院となった人を対象としています。すなわち、COPD、OSAの両者とも重症の人について長期間、調査をしたということです。
Q. 何が判明したか
OSAで夜間にくり返し血中の酸素飽和度が90%以下となり、かつCOPDのある場合には、そうでない場合に比較して心血管病変による死亡は1.91倍に増加します。特に女性では男性よりも危険度が増すことが判明しました。
Q. COPDとOSAが重なるとなぜ危険か
・睡眠中に血液中の酸素の濃度がくり返し起こる。また、同時に二酸化炭素の濃度も上昇する。
・その程度はそれぞれが単独の時よりも強くなる。
・不整脈が起こりやすくなる。
・肺と心臓を結ぶ肺動脈の血圧が上昇する肺高血圧がおこり右心不全となりやすい。
・血管の内面を覆っている血管内皮細胞が広い範囲で傷つきやすい。
・その結果、動脈硬化が進みやすくなる。
・長い年月の間に心血管の病変が進み、救急入院となったり、死亡の原因となる。
女性の喫煙率が高くなり、それと伴に女性のCOPDが急増しています。米国の大都市では、圧倒的に男性患者が多かったCOPDが女性に移りつつあることが報じられています。都内でも女性のCOPDの患者さんが急速に増えてきています。
COPDとOSAの合併は、両者を詳しく調べる必要があります。どちらも早目の診断と治療が勧められています。
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