2019年9月11日
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は睡眠中にくり返して呼吸が停止し、その結果、血液中の酸素濃度が低下し、その影響が全身の臓器に及ぶ病気と考えられています。
OSAの治療ではCPAP治療は効果が期待できる治療として確立していますが、決められた通りに治療が継続できる人は約半数に過ぎないと云われています。
他方で、高齢者では最初からCPAP治療が難しい人が少なくありません。
しかも、OSAは高齢者では頻度が高くなり、中には重症のCOPD (慢性閉塞性肺疾患;肺気腫、慢性気管支炎)や夜間に強い発作を起こす喘息の人でOSAを合併している人が少なくありません。
これらの人では、夜間の酸素不足は高度となり、危険な状態となりがちです。
そこで、CPAP治療の代わりに行われるのが酸素療法です。
OSAで行う酸素療法がCPAP治療と同等の効果があるかが問題でした。Turnbell ら、英国、オックスフォード大学のグループはこの問題に取り組みました。
Q. くり返して起こる低酸素状態が血圧を上昇させる
1997年、COPDの研究で有名なFletcherらのグループは実験動物を使い、低酸素状態が繰り返し起こると血圧が上昇してくることを発見しました。血管、腎臓、副腎などへの影響を調べましたが確認されませんでした。2011年に別のグループが健康人をくり返し酸素不足の状態で生活させると血圧が上昇してくることを発見し、ヒトでも同じことが起こっていることが明らかになりました。
Q. OSAで血圧が上昇する機序の確認
Turnbellらは重症のOSAでCPAP治療を行っている人に対し、2週間、CPAPを厳密に使用➡その後、2週間は本人には分からないように1分間に5Lの酸素吸入か、同じ量の空気を吸ってもらい➡次いで2週間、本人には分からないように酸素と空気の吸入を入れ替えました。
研究の全期間で夜間睡眠中の酸素飽和度、日中の血圧、血液、尿に含まれる物質の測定を行いました。
OSAで生ずる血圧の上昇は、CPAP治療に比較すればやや小幅にとどまりましたが、酸素療法でも同じように降下させる効果があることが確認されました。
その機序ですがこれまでは、OSAがあると交感神経の働きが過剰に刺激され高血圧が起こると考えられていましたが、そうではなくて酸素欠乏が高血圧を起こす主原因であると結論されました。
この研究には次のような大きな意味があります。
1. 重症のOSAで血圧が上昇する機序をかなり明確にできたこと。
2. 酸素不足がくり返し起こると血圧が高くなること。
3. CPAP治療が継続実施できない場合には酸素療法が次の治療方法になりうること。
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