• 木田 厚瑞 医師

No.5 閉塞性睡眠時無呼吸症候群とはどのような病気か


2019年9月10日


閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は、わが国でも新幹線の運転士の居眠り事件などから注目されるようになりましたが、歴史的には肥満者の多い欧米が出発点です。OSAとはどのような病気なのか。その概要を分かりやすく解説した論文が米国で最も評価の高い臨床雑誌に発表されました[1]。ここでは、その文献に沿って問題点を紹介します。

なお、記載の内容は米国の睡眠学会、米国胸部学会など3つの大きな学会が決めたガイドラインに沿っていると述べています。一部はわが国のガイドライン、保険で定めた基準と異なる点があることをお断りしておきます。




Q.OSAはどのようにして起こるか。


睡眠中にくり返して上気道が狭くなることにより起こります。狭くなることにより、肺に送られ、肺から出される空気の量が減り、その結果、血液中の酸素濃度が低下し、二酸化炭素の濃度が上昇します。




Q.病気の頻度はどのくらいか


欧米では30-49歳では男性10%、女性3%に見られ、加齢とともに増加し、50-70歳では男性17%、女性9%に見られると云われています。

血液中のプロゲステロンと呼ばれるホルモンがOSAの発生を抑えており、閉経後にはこの濃度が低下するので女性の頻度が増すと云われます。

高齢で増える理由は、喉の筋肉の緩みが進み狭くなりやすいからだと考えられていますが、詳しいことは分かっていません。

反対に筋肉増強の目的で男性がテストステロンを服用すると、結果として舌の容積も大きくなりOSAが悪化することが知られています。

年齢が若い人や、閉経前の女性では血液中の酸素濃度の低下が著明とならないことが多いようです。




Q.どのような症状があるか。


以下のような症状が知られています。

・大きないびきを不規則にかく。

・昼間に眠くなる。

・睡眠時間が長いのに爽やか感が少ない。

・座りがちな生活では疲労感が強くなる。

・夜間にトイレの回数が多い。

・睡眠中に歯ぎしりや喘(あえ)ぎ呼吸がある。

・朝、起きた時に口の乾燥が強い。

・起床時に頭痛がある。

・BMIが30以上の肥満がある。注)BMI=体重(㎏)/ 身長(m)の2乗で求める。

・口を開けて観察すると喉の中が狭く見える。

・首回りが太い。注)欧米人データで男性:43.2cm以上、女性:38.1cm以上。




Q.重症度をどのように決めるか


1時間当たりの無呼吸、低呼吸指数(AHI)が5以上の場合にはOSAと定義されています。

AHIが5-15では軽症、16-30は中等症、30以上は重症です。




Q.発症のリスクは何か。


肥満が原因としてもっとも多いですが、やせていても起こります。

昼間の眠気がなくとも重症のことがあります。




Q.どのような手順で診断していくか。


上記の症状があり、身体の所見で肥満などのリスクがある場合、あるいは、OSAで合併しやすい病気がある場合にはOSAを疑い検査を行います。

検査は、最初は自宅で実施する簡易検査を行い、この段階で重症のOSAと判明すれば後述するCPAP治療を開始します。

注)米国の簡易検査はわが国より簡便な方法が取られていることが多いようです。




Q.OSAで合併することの多い病気の種類


・心不全

・心房細動

・コントロールが難しい高血圧

・II型糖尿病 注)成人発症の糖尿病。

・メタボリック症候群

・夜間に起こる不整脈

・脳卒中

・肺高血症

以下の二つはOSAの原因となる疾患です。

・甲状腺機能低下症

・末端肥大症




Q.合併症の問題点


・心臓病、血管病変の頻度が高くなります。

AHIが20以上では脳卒中の発生は男性で4倍、女性で2倍に増加します。


・高血圧

薬物治療でもなかなか低下しない難治性の場合が多くみられます。特に朝方の高血圧が問題です。これをきちんと診るには24時間連続の血圧測定が勧められます。


・不整脈がみられることが多くなります。

特に心房細動が起こるとさらに脳梗塞を起こしやすくなります。


・糖尿病は肥満の程度と無関係に悪化します。


・LDL (悪玉コレステロール)、中性脂肪が高値となりやすくなります。これらはさらに動脈硬化を進めることになります。


・夜間の不整脈が多くなります。特に脈拍が少なくなる徐脈を起こしやすくなりますが、これはOSAによって血中の酸素濃度が低下しやすくなることを反映していると云われます。その結果、睡眠中の突然死の頻度が高くなります。


・癌の発生頻度が高くなります。40-70歳ではAHIが30以上の場合に特に増加することが知られています。


・認知症の発生は強く疑われていますが、現在までの臨床統計では確実と結論されていません。手先の細かな作業ができにくくなることも疑われていますが、これも結論が出ていません。




Q.どのような治療を行うか。


・CPAP治療

睡眠中の吸気、呼気の両方で圧を加え、狭くなった気道を広げる効果があります。


・マウスピース

軽症ではある程度の効果が期待できると云われます。AHI数がどのくらいであればマウスピースが良いという数値は不明です。


・外科手術

難治性のOSAの場合に試みられることがあります。


・減量効果

体重減量に成功し10kgに達した場合にAHI数が低い軽症のOSAでは約50%の人で治療が不要になりますがそれより重い人では減量してもOSAの治癒は難しいようです。


・水分バランス

体内の水分バランスが崩れると臥床するような水平になった体位では昼間には下肢にあった水分が夜間には首の回りに増え、これがOSAを悪化させるという説がありますが確定していません。




Q.生活上の注意点


・高度の肥満では並行して減量に取り組むことが必要です。


・飲酒はOSAを確実に悪化させます。晩酌など夜間に飲酒の習慣がある人ではCPAPの使用が必須です。


・寝つけないからといって睡眠薬を服薬することがOSAを悪化させます。特に、睡眠薬の中ではわが国で汎用されているベンゾジアゼピン系が危険です。

OSAは睡眠中だけの病気ではなく、合併症の頻度や種類の多さからみると全身性の病気であると言えましょう。高齢者では頻度が高くなり、COPD (慢性閉塞性肺疾患:肺気腫、慢性気管支炎)ではOSAとの合併が多く、オーバーラップ症候群とも呼ばれています。また、重症の喘息での合併頻度が高いことが知られており、病気の連鎖を断ち切るためにもOSAの治療が大切です。





参考文献:

Veasey SC. et al. Obstructive sleep apnea in adults. N Eng J Med 2019; 380:1442-1449.



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