2020年9月1日
新型コロナウィルス感染症(COVID-19)は、基礎疾患を持つ人たちに多いことが知られています。例えば、米国、CDCのレポートとして知られるMorbidity and Mortality Weekly Report (MMWR)、(2020年4月8日付け)[1]では、患者178人のうち、89.3%に1つ以上の基礎疾患がありました。頻度が高い順に高血圧(49.7%)、肥満(48.3%)、慢性肺疾患(34.6%)、糖尿病(28.3%)、心血管疾患(27.8%)でした[1]。また、高齢者のCOVID-19は重症化しやすいことが判明しています。さらに先行研究では、喫煙者は非喫煙者に比べて感染リスクが高いことも知られています。
若い世代にユーザーが多いタバコおよび電子タバコでは、COVID-19に感染するリスクが高いかどうかを調べたのがここで紹介する論文です[2]。
Q.どのような方法で調査したか?
対象は合計、4,351人。米国、50の州、コロンビア特別区、および3つの連合地域からのオンライン調査。13歳から24歳までの若い世代を対象に2020年5月6日から14日まで、アンケート調査を実施した。一人、15-20分間の調査。
調査は、電子タバコの常用ユーザー(50.2%)と非・常用ユーザー(49.8%)を対象。対象者の構成は、思春期群(13〜17歳、33.7%)、青年期群(18〜20歳、41.6%)、成人群(21〜24歳、24.7%)とし、性別と人種/民族のバランスをとるようにした。
統計は、COVID-19に合致する症状ありの場合、PCR診断による診断確定例に分けて解析。
過去あるいは30日以内に電子タバコの使用者、電子タバコとタバコの二重使用者に対し多変量解析を実施。なお研究はスタンフォード大学の倫理審査委員会によって承認されている。
Q.何が判明したか?
・COVID-19の診断確定者は、4,048人。結果はCOVID-19の症状に匹敵する場合とPCR検査による診断確定の場合に分けて統計処理したが、症状がCOVID-19合致群よりも診断確定群の場合の危険度がいずれも高値であった。
・COVID-19診断が確定している対象者のみに絞った結果は以下の通り。非使用者を基準値とした場合の比較は以下の通り。
過去にタバコだけ使用 3.94倍(95%信頼区間[CI]:1.43-10.86)
過去に電子タバコだけ使用 3.25倍(95%信頼区間[CI]:1.77-5.94)
過去にタバコと電子タバコの両者の使用 3.58倍(95%信頼区間[CI]:1.96-6.54)
現在、タバコだけ使用 1.53倍 (95%信頼区間[CI]:0.29-8.14)有意差なし。
現在、電子タバコ使用 1.91倍 (95%信頼区間[CI]:0.77-4.71) 有意差なし。
現在、タバコと電子タバコ使用 6.84倍(95%信頼区間[CI]:2.40-19.55)
・さらに低体重者は、2.5倍高値(95%CI:1.05–6.20)。
Q.なぜ電子タバコ、タバコ利用とCOVID-19発症が関係するか?
・電子タバコに含まれるニコチンおよび他の化学物質への曝露で肺組織の傷害を起こしCOVID-19を起こしやすくするのではないか。
・COVID-19は、タバコ、電子タバコを吸う際に口と顔に繰り返し手を触れることで感染が広がる危険性がある。また、電子タバコ器具の回し使いをしていることも危険性を高める。
・肥満と体重不足の両方の状態がCOVID-19の感染しやすさに関連していたが若年者の痩せすぎはリスクを高める。
・感染リスクは黒人、ヒスパニック系に高いなど、人種差があった。
現在、電子タバコとタバコを利用している人が最も高値で非喫煙者と比較すると6.84倍の高値に達しています。他方、過去に吸っていた人でも、タバコ、電子タバコおよび両者の利用者はいずれも3倍以上の高値です。この理由は、恐らく肺組織に広く傷害を起こし、その結果、COPVID-19にかかりやすくなっていると考えられます。この結果をみると、電子タバコは決して安全とは言えないことが分かります。
人種差もみられ、アフリカ系米国人やヒスパニックではタバコ、電子タバコの使用者が多く、患者も多く見られています。母親が受けた教育レベルが子供の喫煙習慣に影響するのではないか、という仮説で母親が受けた教育程度との関連を調べていますが、子供の喫煙習慣は、むしろ母親が高学歴に有意に多いという結果は、青少年に対する禁煙教育の難しさを示しているかのようです。
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