• 木田 厚瑞 医師

No.136 新型コロナウィルス感染症:ワクチンに関するQ&A

2021年2月2日


 新型コロナウィルス感染症(Covid-19)による国内の死者は、5,000人を超えています(2021年1月24日、現在)。4千人に達した1月9日から急増し、わずか2週間で1千人の増加です。

 三密やマスク着用だけではもはや、防ぎきれない段階にきています。新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)に対するワクチンが予防の切り札となりそうですが期待感と不安感が共存した状態です。


 New England Journal of Medicine ではハーバード大学医学部教授であり、感染症の専門家であるPaul Saxがワクチン接種に関する臨床医の質問、および患者がもつ質問と懸念に対し、分かりやすく回答していますので紹介します[1]。主に、米国で働く医師に向けたメッセージとなっています。

 報道(1月29日)によれば、英国製薬大手のアストラゼネカ社とオックスフォード大学の共同開発のワクチンは日本国内で製造される予定とのことです。

 

 わが国で、一般的に広く接種されるワクチンは、どちらが選択されるのか、あるいは3種が採用となるかは現時点(1月29日、現在)では不明です。




Q.米国で使用されるCovid-19ワクチンの種類は?


・米国では、2種のワクチンの利用が可能である。

1つは、Pfizer(ファイザー)/BioNTech (BNT162b2), 他は、Moderna(モデルナ) (mRNA-1273)により開発された。


・両者とも新しいメッセンジャーRNA(mRNA)メカニズムを介して機能する。


・新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)は球形の表面に多数の棘のような構造模型として表現されるがこの棘にあたるのがmRNAである。


・推奨事項は共通している。




Q.ワクチンはどのように働くか?


・ワクチンの注射➡mRNAは、注射部位の近くにあるマクロファージに取り込まれる。➡それらの細胞にスパイクタンパク質を作るよう指示を出す。➡その後、スパイクタンパク質がマクロファージの表面に現れ、感染と戦う方法を模倣し、SARS-CoV-2による自然感染から私たちを保護する免疫反応を誘発する。➡次に、体内の酵素が分解され、mRNAが廃棄される。こうして、生きたウイルスは関与せず、遺伝物質は細胞の核に入ることはない。




Q.mRNAワクチンの特性は?


・2つのワクチンは、臨床応用された最初のmRNAワクチンである。mRNAを脂質微粒子に封じこめ分解を防ぐようにした点が画期的な発明である。




Q.ワクチンの有効性は?


・mRNA-1273SARS-CoV-2ワクチンの有効性と安全性[2]、BNT162b2mRNACovid-19ワクチンの有効性と安全性[3]という二つの論文がNew England Journal of Medicineで発表された。


・両ワクチンの臨床治験は、無作為で偽薬を対照としたもので、その特徴は、1)重篤な病気を悪化させることがない、2)効果は年齢、性別、人種差が無かった、3)2回の接種が必要であるが、第1回目接種から10~14日目である程度の予防効果が得られた。


・2回目接種により95%のワクチン効果が得られる。


・筆者(Paul Sax)の印象では、短期的な効果では、インフルエンザワクチンよりもはしかワクチンの効果に近い。




Q.ワクチン接種後の無症候性感染はありうるか?


・SARS-CoV-2に感染した人の最大40%には症状がない、いわゆる無症候性感染であり、この人たちがウイルスを他の人に感染させる可能性がある。

ワクチンの臨床試験の結果から、ワクチンの有効性に関する情報の限界として、無症候性感染に関する情報は欠如している。




Q.ワクチン接種後の感染予防の変更は?


・ワクチンが無症候性感染を予防するかどうかがわかるまで、ワクチン接種ではCovid-19の蔓延を防ぐための他の重要な対策を止めることはできないことを患者に強調し続ける必要がある。すなわち、ワクチン接種後であっても、3密禁止、社会的距離、マスク着用、混雑した屋内環境の回避、および定期的な手洗いを継続する必要がある。




Q.ワクチンの感染予防の効果は?


・モデルナ社製のワクチン(mRNA-1273)の治験ではワクチン接種前と4週目で鼻咽腔擦過によるPCR検査を実施し、第2回目のワクチン接種を実施した。接種前の検査で陰性で無症状者のうち、偽薬群で39人(0.3%)、mRNA群で15人(0.1% )であり、第1回目投与後でも予防効果はあった。




Q. 両ワクチンの違いは?


・2種のワクチンは、同様の作用メカニズム、安全性、および有効性があるにもかかわらず、2つのワクチンは特定の重要な点で異なる。広く公表されているように、どちらも配布中に極低温を維持することが問題である。


・ファイザー/ BioNTechワクチンは特に厳しい冷蔵要件がある。


・ファイザー/ BioNTechワクチンは-70℃を維持した出荷と保管の要件があり、超低温冷凍庫がない場所には適していない。解凍後、5日以内に使用しなければならない。


・他方、Modernaワクチンは、やや穏やかな-20℃で出荷でき、冷蔵庫の温度で30日間安定である。


・ファイザー/ BioNTechのワクチンは、16歳以上で認可されており、モデルナのワクチンは18歳以上で認可されている。小児での研究が計画されているが、現時点ではどちらのワクチンも小児に投与すべきではない。


・両ワクチンは、2回の投与を必要とする。ファイザー/ BioNTechワクチンでは21日、Modernaワクチンでは28日の間隔である。必ずしも厳密な予定である必要はないが2回目の投与の21日または28日間隔の前後4日間の「猶予期間」が有効と見なされる。患者が2回目の投与でこの猶予期間を逃した場合、どちらのワクチンも1回目と2回目の投与の間隔が長くても最初の投与が無効になることはない。つまり、最初からやり直す必要はない。本来の21日または28日の目標の後、できるだけ早く2回目の投与を行うことが必要である。




Q.接種するワクチンを自分で選択できるか?


・Pfizer / BioNTechワクチンは16歳以上、Modernaは18歳以上で認可されている。この年齢差を除けば、どちらかのワクチンが適しているかどうかの選択はない。供給が限られているので、利用できるようになったワクチンを利用する。


・英国で開発されたアストラゼネカ社のワクチンは、現時点で(2021年1月)米国では使用できない。




Q.第1回目と2回目のワクチンの種類を変えることはできるか?


・ワクチン投与が開始されたら、推奨されるスケジュールで同じワクチンを接種する必要がある。最初に投与したワクチンと、2回目の投与で別のワクチンを投与することに関する安全性または有効性のデータはない。ただし、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は現在、初回投与ワクチン製品を決定できない場合、または入手できなくなった場合、2回のワクチン接種シリーズを完了するために、使用可能な同じmRNA Covid-19ワクチンを投与間隔28日以上で投与できると述べている。あくまでも例外的な措置である。




Q.ワクチンに接種の禁忌はあるか?


・これらのワクチンに対する唯一の絶対禁忌は、ワクチン成分に対する既知の過敏症である。禁忌に関する特定のCDCの推奨事項は、以下のとおりである。


・mRNA Covid-19ワクチンまたはその成分のいずれかを前回投与した後の重度のアレルギー反応(アナフィラキシーなど)


・mRNA Covid-19ワクチンまたはその成分(ポリエチレングリコール[PEG]を含む)の以前の投与量に対する任意の重症度の即時アレルギー反応


・ポリソルベートに対するあらゆる重症度の即時アレルギー反応(ワクチン成分PEGとの潜在的な交差反応性過敏症による)


・他のワクチンあるいは注射による治療法に対するアナフィラキシーは、これらのCovid-19ワクチンの禁忌ではないが、この病歴のある人は、投与を受けてから少なくとも30分間観察する必要がある。


・第1回目接種時に深刻な反応(特にアナフィラキシー)を経験した場合、その人は第2回目の接種を行ってはならない。


・第1回目で激しい痛みを経験している人は、第2回目を行うかどうかは個別に判断する必要がある。禁忌ではないが、2回目の投与で副反応が悪化する傾向がある。対応として、2回目の投与後に痛みが始まるとすぐにアセトアミノフェンまたはイブプロフェンを投与することである。しかし、CDCは、理論的にはワクチン誘発性の抗体反応を鈍らせる可能性があるため、これらの薬剤のワクチン前投与を推奨していない。


・新型コロナ感染症(Covid-19)の治療のためのモノクローナル抗体または回復期血漿は、理論的にはワクチンの有効性を低下させる可能性がある。これらの治療を受けた人の投与後は、ワクチンの接種を少なくとも90日間遅らせる必要がある。この期間は、これらの治療の既知の半減期と、この期間に再感染を経験する可能性が低いことの両方を考慮に入れている。




Q.既往にアレルギー反応がある人はワクチンを接種できるか?


・アレルギーの病歴のある人はワクチンを接種できる。他のワクチンや薬に対するアレルギーや、ハチ刺されや食べ物や花粉に対するアレルギーであろうと関係なく接種できる。ただし、これらの病歴のある人では、通常の15分間ではなく、ワクチン接種後30分間観察する必要がある。




Q.免疫不全の患者はワクチンを受けるべきか?


・CDCは、免疫不全の患者は重症となるCovid-19のリスクが高いと考えている。これに該当する人は、以下の基準を満たす病歴のある患者であるが、該当しない場合がありうる


・癌がある場合


・骨髄移植後


・臓器移植後


・がん治療のための幹細胞移植実施後


・遺伝的免疫不全


・HIV


・一部の感染症と戦う身体の能力を低下させる免疫抑制剤と呼ばれる経口または静脈内コルチコステロイドまたは他の薬剤の使用中(例、ミコフェノール酸、シロリムス、シクロスポリン、タクロリムス、エタネルセプト、リツキシマブ)


以上の集団では重症のCovid-19のリスクが高いため、禁忌がない場合、免疫不全の患者はCovid-19ワクチンを接種する必要がある。


・難しいのは、この集団におけるワクチンの安全性、特に有効性の推定である。どちらの臨床試験にも、上記のカテゴリーに入る多数の人々が含まれていないためである


・Pfizer / BioNTechおよびModernaワクチンには生ウイルスが含まれていないため、ウイルスが蔓延するリスクはない。


・ワクチン中の抗原が拒絶反応のリスクの増加(移植患者の場合)または自己免疫疾患(リウマチまたは他の自己免疫状態の患者の場合)のいずれかを引き起こすかどうかは不明であるが、そのような悪影響が他のワクチンではまれである。さらに、臨床試験では、プラセボと比較して、ワクチンを接種した参加者の自己免疫状態または炎症性疾患の発生に違いは見られなかった。


・ワクチンの有効性は、無傷の宿主反応に依存する。そのため、免疫不全の宿主では、一般集団よりも予防接種の効果が低くなる可能性がある。Covid-19で免疫不全の患者に対しワクチン接種を行うときには、これを知らせておく必要がある。したがってマスクの着用、社会的距離、3密の回避、手洗いなどの他の予防策の継続的な重要性について患者に助言する必要がある。免疫力が低下している同居者も、可能であれば予防接種を受ける必要がある。


・臨床医は、Covid-19ワクチン接種を開始する前に免疫抑制療法または化学療法を遅らせたり中止したりして、2回の接種が終わったら再開することがありうる。このような場合、基礎疾患の重症度とその治療の緊急性などに応じて、ケースバイケースで免疫抑制の保持または遅延を検討する必要がある。


・両方の臨床試験には、抗レトロウイルス療法を受けていた少数の臨床的に安定したHIV患者が含まれていた。ファイザー/ BioNTech試験とModerna試験ではそれぞれ120人と176人であった。これらの数値は、HIV感染者の安全性と有効性について結論を出すには小さすぎるが、HIVが十分に管理されている人がこれらのワクチン接種に対し問題を抱えているという理論的な理由はなく、予防接種が推奨される。抗レトロウイルス療法を受けていないHIV患者、特にCD4細胞数が少ない人々では、HIV関連の合併症の予防とワクチンの反応性の改善の両方のために、Covid-19ワクチン接種よりもHIV治療を優先する必要がある。




Q.妊娠中または授乳中の女性はワクチンを接種する必要があるか?


・妊娠中および授乳中の女性はCovid-19ワクチンの臨床治験に登録されておらず、その結果、安全性に関するデータは限られているが接種可能だとしている。アメリカ産科婦人科学会などが同意している。mRNAワクチンが妊娠中の母親、発育中の胎児、または授乳中の乳児に有害であるという理論的な理由はない。また、Modernaワクチンを接種した妊娠中のラットは、胎児または胚の発育に関連する安全上の懸念を示さなかった。


・妊娠中の女性は、インフルエンザの場合と同様に、妊娠がCovid-19の重篤化の危険因子であることを知らされるべきである。この情報とCovid-19曝露の可能性、およびこれまでに入手可能な限られた安全性データに関する情報に基づいて、妊婦はワクチンを受け入れるかどうかについて知識に基づき自分で判断することが必要である。ただし、インフルエンザワクチンと同じように、ワクチン接種の必要があり、疑問があれば答える機会を与える必要がある。


・社会的交流がほとんどない在宅勤務の人は、さらなるデータを待って、接種しないことを選択するかもしれない。




Q.患者がワクチンを受けるための最低年齢または最高年齢はあるか?


・Pfizer / BioNTechワクチンは、16歳以上の患者に、Modernaワクチンは18歳以上に認可されている。小児での研究が計画されているが、現時点ではどちらのワクチンも小児に投与すべきではない。高齢の年齢制限はない。高齢者は重篤化の危険因子である。


・重要な点は、ワクチンが虚弱な高齢者、特に非常に高齢の人々やナーシングホームに住む人々にどれほど効果的であるかということである。これは臨床治験では、早期予防接種の対象集団であるが、参加者は歩行可能で臨床的に安定している必要があるため、この特定の高齢者サブセットは第3相臨床試験に参加していない。このグループのワクチンの安全性と有効性については、ワクチンが広く使用された後に疫学的な研究が行われた後に判断がゆだねられている。




Q.ワクチン接種の忌避の人への対応策は?


・ワクチンの安全性と有効性についての国民の疑惑は長く続いている。歴史的には18世紀初頭に人痘接種法を使用して天然痘の重症度を軽減する最初の取り組みにまでさかのぼる。

ワクチン接種に対する他の議論には、体内への「毒素」の導入に対する恐れ、免疫系を圧倒することへの懸念、「自然」免疫への欲求、および政府または製薬業界、あるいはその両方を含む陰謀説が含まれる。


・ワクチン忌避の理由は多様であるため、すべての患者に最適な「万能」のアプローチはない。ワクチンや感染リスクについて理解のギャップを埋めるのに役立つ信頼できる情報を提供することは確かに重要ですが、最終的な説得とならないことが多い。

多くの臨床医の説得方法は、自分自身、および家族にワクチン接種を受けさせるか、どうかという、ということから説得する方が良いという。




Q.ワクチン接種により生じたアナフィラキシーの治療に備えるべきは?


・重要な機能ことは、アナフィラキシーを管理するために対応できる医療スタッフ(看護師、薬剤師、医師など)と機器の両方をあらかじめ準備しておく。

エピネフリン、H1抗ヒスタミン薬、血圧計、聴診器などに加え、可能であれば治療に必要なアイテム(パルスオキシメータ、酸素、点滴、挿管キット)などを準備しておく。


・Covid-19は無症状の人から広がる可能性があるため、すべての医療者とワクチンを接種している人が、ワクチンの予約時に感染予防策を遵守するようにすることが重要である。マスクの着用、他の人との密接な接触の時間を最小限に抑えること、換気の悪い混雑した屋内スペースを避けることなど。




Q.接種後初期の副反応の管理方法は?


・アセトアミノフェンやイブプロフェンなどの鎮痛薬や解熱薬は、注射部位の痛み、筋肉痛、発熱などのワクチン接種後の副反応の管理に効果的である。ただし、CDCは、これらの薬剤をワクチン接種前に投与することは推奨していない。これらの薬剤は、理論的にはワクチン誘発性の抗体形成を鈍らせる可能性があるためである。


・アナフィラキシーのリスクは小さいがワクチン接種を行う場所には、副反応を評価および治療するための準備が必要である。




Q.予防接種後に患者にどのような指示を与えるべきか?


すべてのワクチン接種者には、次の情報が与えられる。


・Covid-19の基本情報、症状、および予防接種の前に医療提供者と話し合うこと


・誰がワクチンを接種すべきか、接種すべきでないか


・ワクチンを受けるためのレシピエントの選択


・ワクチンシリーズの情報


・一般的な副反応を含む、ワクチンの潜在的および既知のリスクと利点


・ワクチン有害事象報告システム(VAERS)への副反応の報告に関する情報


・EUAとは何か、なぜ発行されるのかについての説明 (注:EUAとは米国食品医薬品局緊急使用承認。臨床治験結果でもデータが不十分な点がありうる )


・Covid-19を予防するための承認された利用可能な代替案


・追加のリソース




Q.ワクチン投与後に医師の立場で注意または報告する必要があるものは何か?


・予想される副反応は、入院や救急科への訪問を引き起こすほど深刻でない限り、報告する必要はない。


・最も一般的な副反応は、特に投与後12〜24時間の注射部位の痛みである。研究参加者の約1%が痛みを「重度」と分類した。


・倦怠感と頭痛は他の比較的一般的な副反応である。高熱はあまり一般的ではない。

これらの副反応は通常、数日以内に解消し、アセトアミノフェンまたはイブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬に反応する。


・一般に、副反応は年配の接種者よりも若い接種者でより一般的であり、2回目の投与は最初のショットよりも多くの副反応を誘発する。


・臨床医は、深刻な副反応はワクチン有害事象報告システム(VAERS)を通じて深刻な悪影響を報告する。


・これは、副反応がワクチンに関連していると思われるかどうかに関係なく行う必要がある。FDAは、重篤な副反応を次の1つ以上と定義している。


・死亡


・生命を脅かす有害事象


・入院または既存の入院の延長


・通常の生活機能の持続的または重大な無能力または実質的な混乱


・先天性異常または先天性欠損症


・(適切な医学的判断に基づいて)人を危険にさらす可能性があり、上記の結果の1つを防ぐために医学的または外科的介入を必要とする可能性がある重要な医学的事象


・多臓器炎症症候群


・入院または死亡につながるCovid-19の症例


・ワクチンの開発と臨床試験が短期間で実施されたので、医療提供者は、イベントがワクチンに関連しているかどうかわからない場合でも、ワクチン接種後の臨床的に重大な有害事象をVAERSに報告することを強く勧告する。たとえば、心臓病の病歴を持つ75歳の男性が、1回目と2回目のCovid-19ワクチンの間に心筋梗塞を患っている場合、ワクチンが心筋梗塞を引き起こしていない可能性があるとしても、これを報告する必要がある。潜在的な関連性を特定できるのは、そのようなデータの蓄積を通じて行われるからである。


・同様に、筆者(Paul Sax)ら医師の多くは、現時点で重要性が不明確な遅延性の副反応について聞いている。筆者の経験では、びまん性発疹、めまい、注射部位での遅発性不快感などがある。これらすべての状況で、ワクチンとの関係は不明のことがあるが、特に注射部位の疼痛は関係している。これらの新しいワクチンに利用できる安全性データを広げるために、VAERSにそれらを報告するようになっている。




Q.ワクチンを接種した後、ワクチンが効いたかどうかを判断するための検査が必要か?


・Covid-19ワクチンを接種された人々は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に対する抗体が体内で作られる。ただし、現在、接種後に抗体が作られているかどうかの血清学的検査に関する推奨事項はない。


・将来的には、これら検査の結果が感染防御となっているか、特に追加免疫が必要かどうかを決める場合に方針が変更される可能性がある。その際、利用可能なすべての抗体検査が抗スパイク抗体を評価するわけではないことに注意することが重要である。


・予防接種後にスパイク抗体が体内で作られているかどうかを確認する血液検査は推奨されないが、免疫機能が抑制されていることなど懸念する他の理由がある場合、または単に好奇心が強いために、この検査を受ける患者もいる。もし、このような検査結果が陰性に戻っていた場合、免疫能との明確な相関関係がまだないこと、または免疫能の保護の欠如があることを教えておくことが重要である。しかし、その結果、その時点でワクチン接種を繰り返すことは勧められない。




Q.2回目のワクチン投与を確実に受けるようにするためのシステムはあるか?


・最初の予防接種時に、患者が受けたワクチンと2回目の接種予定日に関する情報が記載された予防接種カードを患者に提供する必要がある。2回目の投与は、最初の投与から21日後(ファイザー/ BioNTechの場合)および28日後(モデルナの場合)にできるだけ近く設定する必要がある。その日付での接種が不可能な場合は、ワクチンを早めに接種するよりも、ワクチンを数日間遅らせる方がよい。




Q.ワクチンの数量が十分にあるのであれば、2回目のワクチン投与は21日または28日より早く受けてはどうか?


・ワクチン接種の間隔は、推奨されている間隔よりも早くワクチンの2回目の接種を行うべきではない。2回の接種が確実に行われるようにワクチンを接種する必要があります。しかし、どうしても2回目のワクチン接種が指定された日(Pfizer / BioNTechの場合は21日、Modernaの場合は28日)よりも遅れる場合は、まったく投与しないよりも少し早く投与する方が良い。




Q.2回目の投与は21日または28日以降に投与しても効果があるか?


・第1回目のワクチンの目的は、免疫反応を「プライミング(点火)」することである。2回目はそれを「ブースト(増強)」する。臨床治験の参加者のほとんどは、予定された期日またはそれに近い期日に2回目の投与を受けたが、2回目の投与が遅れると、ワクチンの有効性が低下するというデータはない。もし、期日より遅れた場合には、2回目の投与は予定された期日後のできるだけ早いうちに接種する。


・2021年1月21日、CDCはワクチン投与の間隔に関するガイダンスを更新し、投与の遅延に関する追加情報を提供した。具体的には、推奨スケジュールが予定通りでない場合、2回目の投与は1回目の投与から6週間(42日)後までに投与が予定されるべきであるとする。現在、この間隔を超えて投与されたmRNA Covid-19ワクチンの有効性に関するデータは限られているが、2回目がこれより遅れた場合でも、第1回目からやり直す必要はない。




Q.患者に急性疾患を疑わせる何らかの症状がある場合、または活動性の病気がある場 合、予防接種を遅らせる必要があるか?


・急性疾患のある人では、できれば回復するまでワクチン接種を延期する必要がある。ただし、慢性疾患および症状が安定している人はワクチンを受けることができる。


・例としては、呼吸困難があるCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の人、または炎症性腸疾患と胃腸症状のある人が挙げられる。第3相臨床試験の参加者の多くは慢性的な医学的問題を抱えており、急性の疾患ではなかった。




Q.2回目の接種は同じ種類のワクチンである必要があるか?


・2つのワクチン(Pfizer / BioNTechおよびModerna)の作用機序は同じであるが、同一ではない。2回目のショットは最初のワクチンと同じワクチンでなければならない。第2回目に別のワクチンを接種することは安全ではないか、効果が低いことを示すデータはないが、ワクチンはこのように研究されておらず、そのようなハイブリッド投与戦略は避けるべきである。




Q.Covid-19の人と濃厚接触者は、感染を予防するためにワクチンを接種する必要があるか?


・現在、濃厚接触者で発症を予防するためにワクチンの急性使用を支持するデータはない。Covid-19の潜伏期間は平均約5日間であるため、ワクチンが感染を阻止するのに十分な速さで免疫反応を誘発する可能性は低い。そのため、Covid-19との濃厚接触者は、予防接種を受ける前に10〜14日間の観察期間をおく必要がある。他の病気(特に水痘)に対するワクチンは、曝露後の感染を防ぐのに効果的であり、Covid-19でも同じく推奨となる可能性があるが、現時点はそうではない。




Q.Covid-19から回復した患者はワクチンを受けるべきか?


・ワクチン接種を受けるべきである。臨床治験に参加した人々の何人かは、以前にSARS-CoV-2感染の証拠があり(抗体検査陽性に基づく)、ワクチンはこのグループで安全でかつ効果的であった。


・Covid-19からの回復後の再感染は最初の90日間はまれであるため、この期間、予防接種を延期したい人もいるかもしれないが、もっと早く予防接種を希望する場合は、禁忌はない。ただし、モノクローナル抗体または回復期血漿で治療された患者は、90日間、待つ必要がある。これらの治療法はワクチンを不活性化し、効果を低下させる可能性がある。モノクローナル抗体または回復期血漿による治療後、90日間の予防接種の延期が推奨される。




Q.最初の投与の直後にCovid-19と診断された患者は、2回目の予定された投与を受けるべきか?


・ワクチンは、最初の注射から10〜14日後に防御免疫を生成し始める。最初の予防接種の直後にCovid-19に感染を経験した人がいることはありうる。その場合、当初の予定どおりに2回目の接種を続行すべきかどうかの疑問が生ずる。

現在の推奨事項では、現在、感染している人は、急性疾患から回復し、隔離期間が過ぎるまで延期する必要がある。これらの推奨事項は、最初の注射の前にCovid-19に感染した人と、2回目接種した人の両方に適用される。このガイダンスに基づけば、後者の場合、予定通り接種するか、延期するか、は状況による。


・Covid-19をモノクローナル抗体または回復期血漿で治療すると、理論的にはワクチンの効果が低下する可能性があるため、ワクチンの接種を90日遅らせる必要がある。




Q.Covid-19の抗体治療、回復期血清、またはその両方を受けた患者はワクチンを受けるべきか?


・Covid-19および回復期血漿に対するモノクローナル抗体治療は、ワクチンによって誘発される免疫反応を妨害し、効果を低下させる可能性がある。従って、予防接種を90日間延期することが勧められる。




Q.ワクチン接種は、Covid-19の診断テストにどのように影響するか?


・Covid-19ワクチンは、この病気のPCRまたは抗原検査の結果に影響を与えない。

ワクチンは、スパイクタンパク質に向けられたSARS-CoV-2に対する抗体を生成する。現在、いくつかの利用可能な血清学的診断は、この抗体をテストするように作られている。個々の抗体検査ではこの情報を提供できることになっており、それは添付文書に記載されている。




 パンデミックとなり患者数が急増している中での希望は、できるだけ早いうちにできるだけたくさんの人にワクチン接種を完了することです。他方で、ワクチンに対する不安、心配の声は私が診ている患者さんからも聞かれます。わが国には「ワクチン禍」という言葉があった時代がありました。科学的に理解することこそ、ワクチン不安を解消する最良の方法と言えます。 

 この論文の中でも述べられていますが、ワクチン接種が完了したとしても、3密回避、マスク着用、手洗い、うがいの注意は変わらないようです。




参考文献:


1.Sax P.1.Sax P. Covid-19 Vaccine —Frequently asked questions. New Eng J Med. https://www.nejm.org/covid-vaccine/faq#Clinicins


2.Baden LR. et al. Efficacy and safety of the mRNA-1273 SARS-Cov-2 vacctine.

N Eng J Med December 30, 2020

DOI: 10.1056/NEJMMoa20353893.


3. Polack FP. et al. Safety and efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 vaccine

N Eng J Med 2020; 383:2603-15.

DOI:10.1056/NEJMMoa2034577


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