• 木田 厚瑞 医師

No.144 無症状の新型コロナウィルス感染症のリスク


2021年2月16日


 新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の一部には、感染しているのに無症状の人たちがあり、その人たちが知らないうちに感染を広げているのはないか、という疑問があります。

 パンデミックに近い状態の中でCOVID-19の人たちの実態を大づかみで知らせているのがこの論文[1]です。

 韓国、大邱広域市の宗教団体で発生したクラスターでの調査結果です。大邱広域市は、人口247万人、広島市と姉妹都市であり、医療環境は整備されています。

 掲載誌は、呼吸器専門誌としての評価が高い英国のThorax誌の最近号です。




Q.COVID-19の有症状者とは?


・発熱(37.5℃以上)、悪寒、筋肉痛、倦怠感、鼻汁、鼻閉、味覚障害、嗅覚障害、咽頭痛、声枯れ、息切れ、咳、痰、血痰、頭痛、めまい、食欲不振、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢などの症状がある場合。




Q.論文の概要は?


・宗教団体の中で発症したクラスター。計3,000人以上が発症。この中に有症状者、無症状者を含んでいた。本研究は、そのうち計213人を対象とした。 


・COVID-19の診断確定は、咽頭粘膜、口腔粘膜のそれぞれから得たサンプルでのPCR検査によった。


・41人(平均、25歳:21.5歳―34歳)が無症状者。このうち、39人を診断確定から平均13日まで追跡調査。他方、有症状者は、172人(平均、26.5歳:22歳―46歳)。うち、144人に対しPCR検査実施。無症状の21人、有症状者の92人はPCR検査の追跡調査を実施した。


・約1/5が無症状であり、PCR検査による推定ウィルス量は無症状の人たちのウィルス量は有症状者と同様であった。


・症状が軽症の人、無症状のCOVID-19ではPCR陽性が持続している可能性がある。




Q.問題点は?


・無症状でPCR陽性者の場合に加え、有症状者であった人が無症状となってもなおPCR陽性者が一部にいる。


・この人たちが感染源となるかどうかは、PCR検査では分からない。PCRはウィルスを構成する一部であるE, RdRp, N geneの有無をチェックしているだけである。ウィルスに感染能力があるかどうかは培養細胞を使って感染させるかどうかの検証が必要であるがそのデータはないに近い。


・無症状の感染者は、一般の人たちだけでなく医療従事者が危険にさらされることになる。




 無症状のCOVID-19に関する論文は他にもあります。この論文で述べているように、PCR検査は、検査の時点でウィルスを構成する一部組織が、粘膜組織にあるかどうかを判断するものであるということです。

 この論文のもう一つの特徴は、クラスターとなった人たちが若い世代であったことです。若い世代に無症状者が多いことは他の論文でも報告されています。

 また、症状のうち一つでも該当する場合や、無症状感染者が周囲にいる可能性には常に注意すべきでしょう。



参考論文:


1. Ra SH. et al. Upper respiratory viral load in asymptomatic individuals and mildly symptomatic patients with SARS-CoV-2 infection

Thorax 2021; 76: 61-63. Doi:10.1136/thoraxjnl-2020-215042


※無断転載禁止

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