2021年4月20日
5月5日は国際喘息デー(World Asthma Day; WAD)です。1993年、WHO(世界保健機関)の支援で組織されたGlobal Initiative for Asthma (GINA)の企画によるものです[1]。
喘息はわが国でも患者数が多いことで知られますが全世界では3億3,900万人の患者数であり、2016年には、総死亡者数が約42万人に達しています。
喘息の治療は治癒させることではなく、急激な症状(発作)を回避し、日常生活に支障がなくなることが目標です。
多くの人たちに誤解があるのは次のような事柄だと云います[1]。
1. 喘息は小児の病気である。大きくなると良くなってくる。
2. 喘息は感染症である。
3. 喘息の人は運動を避けるべきである。
4. 喘息は、高容量のステロイドだけで改善する。
これらに対するGINAの答えは以下の通りです。
1. 喘息は全年齢で起こる病気である(小児期、思春期、成人、高齢者)。
2. 喘息は感染症ではない。しかし、ウィルス感染症(風邪やインフルエンザ)で発作が起こる。小児期の喘息はアレルギーと密接に関係しているが成人で発症した場合にはアレルギーの関与は少ない。
3. 喘息が、うまくコントロールされている場合には運動はできる。トップ・アスリートとしてもできる。
4. 多くの喘息は、少量の吸入ステロイドでコントロールできる。
喘息には、多様な種類があります。これに対する治療法を一定にするために国際的な診療ガイドライン(GINA 2020)が発表されています。多様な喘息に対し、どのようにして治療法を選択するか、科学データを集積し、方針が書かれています。他方で、喘息に使われる吸入薬などの種類は、近年、急増しており、それぞれ治療上の特性があります。喘息の治療は、選択肢が多くなった分、実は複雑化しています。
ここでは、多様であるがゆえに新薬の治験が必ずしも当初の計画通りに進まなかった、という論文を背景に、多様さを整頓した論文を紹介します[2]。
Q.長期の経過からみた喘息の多様性とは何か?
・遺伝的背景、喘息とアトピーの家族歴、幼少時の呼吸器感染症や、アレルギー性疾患、症状の持続に伴う肺機能低下などに基づき喘息が分類される。
・小児期、思春期では、男性は、症状がしだいに改善していく寛解が起こるが、成人女性では、逆に新たに喘息が発症する。
・持続型喘息は、小児期に発症して生涯にわたり喘息が持続するタイプの喘息であるが少数例のみである。
Q.生涯の経過から見た喘息の分類とその特徴は?
上記の4型を下に図示した。
私たちが日常診療でもっとも多く診ているのは喘息ですが、喘息だけを軸に考えるとGINAが主張する通りですが、実際には、COPD(慢性閉塞性肺疾患)や気管支拡張症との合併、あるいは閉塞性睡眠時無呼吸症候群との合併など多様で複雑な場合が多く見受けられます。
さらに高齢者では、独居の場合や、日常的な薬の管理がうまくいかない場合などがあり、どのようにして間違いなく、効率的な治療を進めるかに腐心しています。
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