2021年7月14日
現在、わが国では、BNT162b2(ファイザー、ビオンテック社)とmRNA-1273(モデルナ社製)のmRNAタイプのワクチン接種が進められています。これは米国を中心に実施した臨床試験にもとづき安全性と有効性が証明された結果を受け、食品衛生局(FDA)から緊急使用許可(EUA)を出し、予防接種の諮問委員会(ACIP)が許可を与えました。
わが国でも高齢者のあと、若い世代へとワクチン接種が進んでいますが、妊婦に対する安全性は不明でした。他方で妊婦が新型コロナウィルス感染症に罹患すると重症化することが知られています。その問題点は以下の通りです。
ここで紹介する論文[1]は、妊婦へのワクチン接種が安全であることを確認したという趣旨ですが疑問点も挙げています。
Q.妊婦のCOVID-19の感染リスクとは?
1.妊娠中のCOVID-19(新型コロナウィルス感染症)に罹患すると同世代の女性と比較すると、重症化しやすく、集中治療室で人工呼吸器やエクモ使用が必要となったり、死亡リスクが高いと報告されている。
2.妊婦では、感染により早産などのリスクが高くなる可能性がある。
3.初期段階で実施された臨床治験では、妊婦を除外されてきた。従って、妊婦に対するワクチン接種の安全性は確立されていない。
Q.どのようにデータを集めたか?
V-safeとVAERSによるデータ収集。
V-safeデータ
・米国におけるV-safeを利用している。V-safeは、COVID-19 ワクチン接種プログラム用に開発された新しいCDCスマートフォンベースのアクティブ監視するシステムである。登録は任意。
・V-safeは、ワクチン接種後、12カ月間継続して副反応、健康状態を、オンライン調査により継続して実施するシステムである。
VAERSデータ
・1990年に開始されたワクチン接種後の症状などを自己登録するシステムであり、CDC, FDAにより運営されている。
Q.調査の対象は?
本論文で研究対象としたワクチン接種を実施した妊婦は、2020年2月より2021年2月までの計35,691人。うち、ファイザー社製は53.9%, モデルナ社製は46.1%。
・注射部位の疼痛が妊婦の副反応の中で最多。その他には、頭痛、筋肉痛、悪寒、発熱は妊婦ではむしろ少ない。
Q.V-safe登録者の結果は?
・3,958人の妊婦の登録あり。
・827人➡妊娠は無事に継続。
・115人➡早産、流産。
・712人➡元気な生児を出産。この多くは妊娠前期1/3以内の期間にワクチン接種済み。
・ワクチンによる副反応➡早産(9.4%)、低体重児出産(3.2%)。胎児死亡例なし。
Q.ワクチン副反応登録システムVAERSでの妊婦の集計結果は?
・流産が多く46例。
・妊娠中の副反応は221例。
Q.妊婦にファイザー社製あるいはモデルナ社製のワクチン接種を行ったときの局所的および全身的な副反応の発生比率の比較は?
図.V-safeデータで比較した妊婦におけるファイザー、モデルナワクチンの副反応の発生率
出典:Shimabukuro, TT. et al. New Eng J Med 2021; 384: 2273-2282.より一部改変
Q.結論は?
・以上の結果より、妊婦に対するワクチン接種はおおむね安全と考えらえるが妊娠中の母体の変化、妊娠中の異常さらに出生後の小児の変化などの予後調査を行う必要がある。
・CDCとACIPは米国差婦人科学会、米国小児科学会では、妊婦へのワクチン接種は控えるべきではないというガイダンスを発表した。
米国において妊婦に対し、ワクチン接種したときの副反応の報告では、おおむね、安全との結論です。
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