No.218 5歳~11歳までの小児に対するコロナワクチンの有効性と副反応


2021年11月17日


わが国における新型コロナ感染症(COVID-19)のワクチン接種は、医療関係者から開始され、高齢者層、成人層、青年層へと進められていきました。


学童期にあたる小児に対し、ファイザー・ワクチン(BNT162b2ワクチン)の治験の結果が最近、発表されました[1]。

論文は、小児に対し、ワクチン接種が必要な理由、投与量、有効性、副反応について報告しています。ワクチンの有効性の理解は得られやすいとしても心配されるのは副反応だろうと思われます。ここでは、副反応についての発表データをやや詳しく述べます。




Q.なぜ小児にワクチン接種が必要か?


・COVID-19は、一般的に成人よりも小児の方が軽度であるが重度では小児の多系統炎症性症候群(MIS-C)などの長期的な合併症を起こす可能性がある。


・2021年9月末の時点で、18歳未満の感染者は、米国の毎週の症例の4分の1以上を占め、累積入院の1.6-4.2%を占めていた。米国では、2021年7月初旬以降、COVID-19による小児の入院が着実に増加し、5~11歳の子供の有病率は、9月下旬に人口10万人あたり1.1という史上最高に達した。


・パンデミックは教育を中断させ、子供の社会的および心理的な発達と精神健康に悪影響を及ぼした。従って、学齢期の子供のための安全で効果的なワクチンの必要性は重要である。


・ワクチン接種では高齢者グループが優先され、その結果、パンデミックの初期段階と比較すると、学齢期の小児の症例増加、入院例が増加してきた。


・学校での集団感染例が発生している。


・小児のCOVID-19 を予防する利点は、重度の疾患、入院、MIS-Cなどの重度または長期の合併症に対する保護がある。


・間接的な利点では、脆弱者に対する感染予防、家庭や学校での感染減少により安全な対面学習が可能となる


・この年齢層に効果的なワクチンがなければ子供が感染の継続的な貯蔵庫となる。変異株が新たに出る可能性を高める。




Q.第1相試験、第2-3相治験の結果は?


第1相試験では、5〜11歳の合計48人の子供に10μg、20μg、または30μgのBNT162b2ワクチンを接種した(各用量レベルで16人)。この結果に基づいて、10μgの用量で追加研究を実施した。対象はアジア人を含む多民族から成っている。


第2〜3相試験は、合計2,268人の子供を2:1にランダムに割り当てた。BNT162b2ワクチン(1517人,実薬)またはプラセボ(751人)を接種した。米国、フィンランド、スペイン、ポーランドでの共同治験。追跡期間中央値は2.3か月。


・他の年齢層と同様に、5〜11歳では、BNT162b2ワクチンの安全性プロファイルは良好。ワクチン関連の重篤な有害事象は認められなかった。


・2回目接種から1か月後、新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)中和力価は、5〜11歳と既報の16〜25歳の幾何平均比は1.04(95%CI間、0。93-1.18)で有意差なし。


・治験前に指定した免疫原性成功基準を満たす比率(両側95%CIの下限、> 0.67;幾何平均比率点推定値、≥0.8)。期待値と同等の効果を証明した。


・BNT162b2ワクチン接種の3人と偽薬接種16人で2回目の投与から7日以上後にCOVID-19が発症した(ワクチン有効性、90.7%; 95%CI、67.7〜98.3)。




Q.ワクチンによる副反応は?


・5〜11歳では、BNT162b2ワクチンの安全性プロファイルは良好。ワクチン関連の重篤な有害事象は認められなかった。


図1はBNT162b2またはプラセボの注射後7日以内にフェーズ2–3試験で報告された局所反応および全身イベントを示す。


図1:Walter E.B. et al. Evaluation of the BNT162b2 Covid-19 vaccine in children 5 to 11 years of ageより一部改変


・BNT162b2接種者は、偽薬接種者よりも多くの局所反応と全身性イベントを認めた。


・報告された副反応とイベントは一般的に軽度から中等度で、1日から2日続いた。注射部位の痛みが最も一般的な局所反応であり、BNT162b2レシピエントの71〜74%で発生した。1回目または2回目の接種後の重度の注射部位の痛みは、BNT162b2レシピエントの0.6%で報告され、偽薬群ではなし。


倦怠感と頭痛が最も頻繁に報告された全身性イベントであった。BNT162b2の1回目または2回目の投与後に重度の倦怠感(0.9%)、頭痛(0.3%)、悪寒(0.1%)、および筋肉痛(0.1%)が報告された。


・倦怠感、頭痛、悪寒の頻度は、1回目の接種後と偽薬接種で類似しており、2回目の接種後の偽薬群よりもBNT162b2接種群では高率。


・全身性イベントは、BNT162b2の2回目の接種後の方が1回目の接種後よりも頻繁に報告された。発熱は、1回目または2回目の投与後にBNT162b2レシピエントの8.3%で発生。BNT162b2レシピエントの間での解熱剤の使用は、最初の投与後よりも2回目の投与後に頻繁であった。うち1人のBNT162b2接種群は、2回目の投与の2日後に40.0°Cの発熱あり。解熱剤が投与され、翌日解熱した。


・最初の接種から2回目の接種後1か月まで、有害事象はBNT162b2接種の10.9%および偽薬接種の9.2%によって報告された。偽薬接種群(2.1%)よりもわずかに多いBNT162b2接種群(3.0%)が、ワクチンまたは偽薬に関連すると研究者たちは判断し有害事象とした。


重篤な有害事象は、BNT162b2レシピエントの0.1%および偽薬接種の0.1%で報告された。2人の治験参加者における3件の重篤な有害事象が治験終了日までに報告された。3件すべて(偽薬群の腹痛と膵炎、およびBNT162b2接種群の腕の骨折)は、ワクチンまたは偽薬とは無関係であると見なされた。治験中止につながる死亡または有害事象は報告さていない。


・リンパ節腫脹は、10人のBNT162b2接種者(0.9%)と1人の偽薬接種者(0.1%)で報告された。BNT162b2接種者おける心筋炎、心膜炎、過敏症、またはアナフィラキシーは報告されていない


・BNT162b2接種者の4例の発疹(腕、胴体、顔、または体幹で観察され、一貫したパターンはなし)はワクチン接種に関連していると見なされた。発疹は軽度で自己限定的であり、発症は通常、ワクチン接種後7日以降であった。




Q.有効性は?


・2回目の投与から1か月後の5〜11歳のBNT162b210μgと16〜25歳のBNT162b230μgの中和GMTの幾何平均比は1.04(95%)であった(95%CI、0.93〜1.18)。両方の年齢層で、参加者の99.2%が2回目の投与の1か月後に中和抗体獲得を達成した。血清反応を達成した5〜11歳の割合と16〜25歳の割合の差は0.0パーセントポイント(95%CI、–2.0〜2.2)であり有意差なし。すなわち、5~11歳群のワクチン接種による中和抗体獲得は16~25歳群と同等であった。


・BNT162b2の2回目の投与から1か月後の血清中和幾何平均(GMT)は、5〜11歳で1198、16〜25歳で1147であった。偽薬接種の対応するGMTは11と10。

ベースラインから2回目の投与後1か月までの幾何平均倍数の上昇は、5〜11歳で118.2、16〜25歳で111.4であった。




BNT162b2ワクチンですでに安全性、有効性が確認されている成人のデータをもとに接種用量を減らし5~11歳までの子供に対する安全性を証明した臨床治験成績です。すでに実施された16〜25歳における臨床治験との比較という視点で実施されているのが特徴です。


成人の場合がそうであったように、高い必要性を背景に極めて短期間に実施されました。治験成績は順調であっても数百万人単位で実施される接種では予想もしない副反応が報告される可能性は残っています。

本論文では詳細が記載されていますが、企業がプレス・リリースした際には、12歳から15歳で実施した同様の臨床試験および今回の臨床治験の子供たちの症例数を報告しませんでした。

これに対し「プレスリリースで科学を語る時代になってしまったことに苛立ちを感じます、とフィラデルフィア小児病院のワクチン学者ポールオフィットは述べた。両社は、5歳から11歳の緊急使用のために具体的な数値を示すことなく、米国とEUの規制当局からの許可をすぐに求めると述べた。他方でCOVID-19の米国の小児症例は、7月以来約240%増加しているのでワクチン効果は期待されている」。これはScienceの記事 [2]ですが、皮肉っぽく、BNT162b210ワクチンを開発した2企業の姿勢を批判しているのが印象的です。




参考文献


1. Walter E.B. et al. Evaluation of the BNT162b2 Covid-19 vaccine in children 5 to 11 years of age

New Eng J Med. This article was published on November 9, 2021.

DOI: 10.1056/NEJMoa2116298


2.News at a glance: India’s COVID-19 vaccine exports, inoculating kids, and tiny flying sensors.

Science 2021; 373: issue 6562

doi: 10.1126/science.acx9167e


※無断転載禁止

閲覧数:103回

最新記事

すべて表示

2022年1月13日 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による感染症がCovid-19です。Covid-19は、わが国では2022年に入って第6波の可能性が極めて高くなりつつあります。感染者の総数は約174万人、死者は、1万8,000人あまりに達しており(2022年1月5日現在)、収まる気配を見せていません。 他方、Covid-19に関する基礎科医学および臨床情報は短期間で莫大な量に増加し

2021年11月29日 新型コロナウィルス感染症(COVID-19)は、多くの慢性疾患がある場合に感染リスクが高くなることが知られています。 米国疾病予防管理センター(CDC)は、学術論文の裏づけに拠ってCOVID-19の感染リスクの高い疾患として以下を挙げています[1]。 ・癌 ・脳血管障害 ・慢性腎臓病 ・慢性呼吸器疾患は以下 間質性肺疾患 肺塞栓症 肺高血圧症 気管支肺異形成症 気管支拡張症