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No.46 新型コロナウィルス感染についての医学情報まとめ

2020年3月26日


 わが国の新型コロナウィルス感染(COVID-19)は、1054人(死亡者36人)、クルーズ船 712人(死亡者8人)ですが、米国内の感染者は3月19日に1万人を超え、20日夕方には1万6000人を突破しました。世界全体では感染者数は27万5千人を超えたと報道されています(読売新聞、3月22日、朝刊)。

 医学情報を最新の学術文献にもとづき提供しているUp-to-Date は、3月20日付け論文で現状を、これまでに英文で発表された131編の研究論文をもとにCOVID-19を以下のようにまとめています[1]。ここではその概要を紹介します。



Q. COVID-19とSARS-CoV-2について


 2019年年末に中国、武漢市で発生した新型コロナウィルス感染症は、2020年、WHOによりCOVID-19と命名された。

このウィルス感染の結果、最重症では、急性呼吸窮迫症候群(Acute respiratory distress syndrome; ARDS)を起こし、この病態がSARSと類似していることからウィルスをSARS-CoV-2と命名した。



Q. 流行の様式

 

・南極を除く全世界で流行が見られるが解析結果はまだ不十分な点が多い。


・武漢市海鮮市場の生きた動物からの感染と推定され、ヒト―ヒト感染がある。


・感染は主にインフルエンザと同じく呼吸器系飛沫により、感染性の咳、鼻汁、くしゃみ、会話などによる。口、鼻、目の粘膜に感染した手が触れることによる。飛沫は通常は2m以上の範囲を越えない。


・実験データからエアゾルとしては、ウィルスは少なくとも3時間は生存する。


・ウィルスRNAは発症直後の早期で症状出現の段階で感染能力を呈する可能性があるがデータは結論的ではない。


・濃厚接触者1万人のうち1-5%が感染した(中国)。


・濃厚接触者445人中に0.45%が感染した(米国)。


・血液、便からウィルスは検出されるが糞便からの感染は否定的。




Q. ウィルス学の検討


・ベータコロナウィルスであり、SARSの原因ウィルスと同種である。蝙蝠がもつコロナウィルスと同種祖先から進化したが別のクレードに区分されている。


・受容体遺伝子構造はSARSウィルスと近似しており、同じ受容体を利用している。細胞内に進入する際(cell entry)ではACE-2(angiotensin converting enzyme-2)を使っている。


・MERSとは異なる別個のベータ―コロナウィルスである。


・蝙蝠が元と推定されるがCOVID-19が蝙蝠に由来するか、別種の動物によるかは不明である。


・COVID-19は2種類に分類される。

 L型:全体の70%を占めており中国での感染流行の初期にみられた。  S型:30%。武漢以外は少ない。

 この違いの臨床的意義は不明である。




Q. 臨床像


・潜伏期間:COVID-19ウィルスに曝露14日以内。多くは、4-5日後に発症する。

・重症度の分類:軽症から重症までに区分されるが全てが重症化するわけではない。


中国CDCが44,500人の患者を分類した結果は以下の通りである。


軽症(全体の81%)

:肺炎ある、なしの区別ではなくて全体像として軽症。


重症(全体の14%)

呼吸困難あり、低酸素血症あり。24-48時間内に胸部X線所見、胸部CT所見で肺の50%以上の面積に浸潤影が認められる。

重篤(全体の5%)

:呼吸不全があり、血圧下降などのショック症状があり、多臓器障害がある。


全体の死亡率は2.5%。軽症、重症患者では死亡例なし。

武漢での死亡率は、5.8%であるが、中国の他地域では0.7%。

・死亡者の特徴:高齢者、基礎疾患あり(心血管疾患、糖尿病、慢性呼吸器疾患、高血圧、癌)

・発症年齢:平均 64歳。韓国では中央値が40歳台。



Q. 年齢の問題

 

・ARDSはどの年齢でも起こりうるが高齢者に多い。

・中国CDCが44,500人の患者を分類した結果は以下の通りである。

 87%は30-79歳。

 8%は70-79歳。

 15%は80歳以上。

・子供の有症状者は少ない。あっても軽症。

・中国では20歳以下はわずか2%。しかし、韓国では6.3%。



Q. 無症状感染者

 

・頻度は不明である。


・クルーズ船ではSARS-CoV-2のチェックを乗客、スタッフに実施。2月20日現在で約17%が陽性。619人は診断陽性の段階でも無症状だった。しかし、無症状でも客観所見は認められた。すなわち、無症状の24人の胸部CTでは50%には典型的なスリガラス陰影が認められた。他の20%には何らかの異常所見あり。5人は診断が陽性であったが微熱のみで典型的な症状なし。



Q. 臨床症状


 初発の症状:肺炎が最も多い。重症例の症状は、発熱、咳、呼吸困難、胸部X線所見では左右、両側肺の浸潤影。

武漢市での発症例(138例)の解析:

発熱 99%。ただし、常に高熱ではない。20%では微熱。

倦怠感 70%

空咳 59% 

低酸素血症 4%

筋肉痛 35%

呼吸困難 31%

喀痰  27%

経過中の合併症:

・初期には軽症であっても1週間以内に重症化することがある。

・急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は最重症の合併症である。武漢市(138例)の解析ではARDSは平均8日後に20%が発症し、人工呼吸器の装着は12.3%に達した。


別の武漢市での統計では201人の入院例のうち41%がARDSとなった。この統計では糖尿病、65歳以上、高血圧が、ARDSの発症に関係していた。

その他の合併症では、不整脈17%、急性心筋障害7%、ショック状態9%。




Q. 検査データ


・好中球数は、増加、減少の両方があり一定しない。リンパ球の減少が多くに認められる。


・血液生化学のデータでは、LDH, フェリチン、AST、ALTの上昇がみられることがある。最重症例で、血中のD ダイマー高値、リンパ球減少例では死亡率が高い。


・胸部画像所見(X線、CT画像):スリガラス陰影(肺病変の中に含気が残された状態)、に加え、浸潤影(肺胞内の空気が液体や組織で置き換わった状態)がみられる。両側の肺に見られることが多い。画像所見のsensitivity(感受性)は97%と高いが、この中でPCR法により確実に診断された症例は25%であった。すなわちspecificity (特異度)は低いことから画像所見で「疑い」を持つことができるが、確定することは難しい。



参考文献:

1.McIntosh K.et al. Coronavirus disease 2019 (COVID-19) Up-to-Date. Literature review current through: Feb 2020. This topic last updated: Mar 20, 2020.


※無断転載禁止



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