2020年5月18日
2020年2月および3月にそれぞれ、香港でペットとして飼育されていた犬が新型コロナウィルス感染症(COVID-19)に罹患していたことが判明しました。
調査の結果、2匹ともウィルスRNAは陽性でしたが、生ウィルスは1匹から検出されただけでした。ヒトから犬への感染が起こった、と推測されましたが、犬からヒトへの感染の可能性については否定。また、オランダからの報告では、COVID-19に感染した患者と一緒に生活していた15匹の犬のうち2匹だけが感染していたことが判明しました[1]。
その後、ニューヨークのブロンクス動物園でトラ4頭、ライオン3頭のCOVID-19が報告されましたがこれも飼育員からの感染であると報道されています。
ここで紹介する論文は、実験的に猫に新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)に感染させ、経過でウィルス量と症状がどのように変化していくか、また、感染させた猫とケージ内に同居させた猫に感染するかどうかを研究した論文です。哺乳類動物へ感染させた実験としては貴重なレポートといえます。
Q. 実験の方法?
・3匹の飼い猫の鼻腔にSARS-CoV-2を感染させ、その後、毎日、鼻腔粘膜のウィルス量を定量、症状を詳しく調査した。また、感染させた翌日から感染していない別の猫を同居させ、同じようにウィルス量、症状を調べた。
Q. 実験の結果?
ウィルスを接種した日をDay0とし、翌日をDay1とし、Day1より感染していない別の猫をそれぞれのケージ内で同居させた。
No.1の猫および同居猫の感染:Day2からDay6までウィルス陽性。同居猫はDay 3より陽性でDay7まで持続。いずれもウィルス量は, No.1の猫より多かった。
No.2の猫および同居猫の感染:Day2からDay5まで陽性。同居猫は、Day6から
Day9まで陽性。ウィルス量は次第に減少。
No.3の猫および同居猫の感染:Day3からDay6まで陽性。同居猫はDay5からDay 9まで陽性。
全ての猫で体温上昇、体重減少、結膜炎はみられず。直腸粘膜よりウィルスは検出されなかった。
以上より、感染猫と同居した猫には全て感染がみられたが、ウィルスが検出される時期は必ずしも一定ではなかった。猫が感染しているかどうかは症状からは判定できない。
この実験では、ウィルスを鼻腔粘膜に接種された猫は3匹とも発症しましたが、ウィルスが陽性となる日は、No.1の猫では翌日から陽性ですが、他の2匹は1日遅れています。同居猫のウィルス陽性は、それぞれ、Day3, Day6, Day5と必ずしも一定ではありません。外から見た症状は特に観察されませんでした。また、接種後の翌日にはウィルスが検出されなかったのにその後は継続して陽性となっています(No.2およびNo.3の猫)。このことは人の場合でもPCR検査が初回陰性でその後、陽性となった症例があることにも一致しています。感染後の症状の変化は軽い咳と鼻汁程度のことがあることも報告されており、これも人にあてはめた場合の注意点でしょう。軽い鼻かぜ症状で終わる人でもウィルス陽性であり、他の人たちに感染を広げるリスクがありうるからです。
これまで報告された犬、トラ、ライオンと今回の実験の猫では、いずれも人間と同じようにウィルス感染が認められました。SARS-CoV-2は多種の動物感染が起こりうるという点ではさらなる研究が必要です。
COVID-19の感染では、嗅覚が著しく低下することが報告されています。そこで、麻薬取締まり犬として使われている場合、感染すると薬物、爆発物、その他、違法な品物をかぎ分ける犬の能力が著しく低下する可能性が心配されています[1]。
著者たちは、避難生活でペットが一カ所に集めて管理されるような状態では、動物間の感染が起る可能性があると警告しています[2]。
ペットから人間への感染は、確認されていませんが米国疾病予防管理センターでは警告を出しています。(www .cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/daily-life-coping/animals.html)。
感染の疑いがある人は、ペットに触れたり、抱いたり、動物と食べ物を分け合ったりすべきではないと注意しています[1]。
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