No.65 新型コロナウィルス感染症の解剖例の報告


2020年5月25日

 流行の最初のころは、微熱や咳が新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の典型的な症状でPCR陽性により診断されてきました。

 医学的な研究論文が多数、報告されるにしたがって、感染の全貌が次第に明らかになってきています。

 ここで紹介する論文は、ドイツ、ハンブルグ大学法医学教室で解剖されたCOVID-19 の診断が確実な27例の解剖例について新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)どの臓器にどのくらいの強さ(ウィルス量)が見られたかを報告し、22例については詳しい臓器ごとにウィルス量を半定量で表示しています。その内訳は以下の通り。

・解剖例は、全て50歳以上であり、50歳代(3人)、60歳台(2人)、70歳台(8人)、80歳台(6人)、90歳台(3人)。男性16人。

・臓器別のSARS-CoV-2が陽性となった比率は以下の通り。

 肺組織(20人が陽性/全22人, 以下同じ)、喉頭粘膜(16/22)、心臓(17/22)、腎臓(13/22)、肝臓(17/22)、脳(8/22)、血液(8/22)、全ての臓器組織に陽性だった人はなし。


・血液中にウィルスが確認されたウィルス血症と多臓器の傷害は一致しない。すなわち、ウィルスが血流に乗って臓器にばらまかれたとしても必ずしも病変を起こす訳ではない。


・77%(17例)に多臓器傷害が認められた。慢性に経過する腎病変がある場合に多臓器傷害となるのではないか。慢性の腎病変は、慢性腎炎、動脈硬化性の腎病変、糖尿病性腎傷害が当てはまる。


・組織の細胞当たりのウィルス量を比較すると、最多は肺組織であり、反対に低レベルのウィルス量は腎臓、肝臓、心臓、血液であった。

 ➡ しかし、頻度の比較では、中でも腎臓にウィルスが局在している頻度が高かった。


・各臓器で基礎病変があり、それがSARS-CoV-2を呼びこむ受容体の数に影響を与え、病変の強弱を起こしているのではないか。高血圧に伴う心血管病変、長年の喫煙歴に伴うCOPD (慢性閉塞性肺疾患;肺気腫、慢性気管支炎)、糖尿病に伴う腎症などがそれにあたる。


・その受容体の候補は、遺伝子レベルからRNA–angiotensin converting enzyme 2 (ACE2)、transmembrane serine protein2 (TMPRSS2), cathepsin L(CTSL) の各遺伝子のRNAがウィルス呼び込み役となっている可能性がある。



SARS-CoV-2が定着し、COVID-19を発症させる始まりは呼吸器系ですが、重症化させる機序は血管病変が中心となりやすく、中でも腎病変を起こす頻度が高いという報告は注目されます。簡単な尿検査で新型コロナウィルス感染症の診断ができる可能性があることになります。



参考文献:

1. Puelles, VG. et al. Multiorgan and renal tropism of SARS-CoV-2

New Eng J Med, May 13, 2020


※無断転載禁止

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