No.84 無症状の新型コロナウィルス感染症の問題点


2020年7月10日


新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の典型的な症状は、発熱、咳、息切れ、筋肉痛、鼻汁、咽頭痛、味覚異常、嗅覚異常であると報告されています。

ウィルス感染による重症度は、年齢、職歴、持病としての慢性疾患の有無と種類、免疫能の低下、感染者との接触歴、妊娠、在宅生活、施設生活者など多彩な影響を受けることが知られています。

他方、感染しても症状が出ない、無症候あるいは無症状感染者がいることも知られており、この人たちが、知らないうちに、感染拡大の原因となっていることが注目されています。

ここで紹介する論文は、既報の16論文について無症状のCOVID-19が40-45%を占めていること、さらに無症状ではあるがこの人たちは14日以上にわたり他の人たちへ感染させた可能性があることを示唆しており、注目されます。中には刑務所、矯正施設で、約70%が感染したのに96%が無症状であったという不思議な報告もあり、興味が持たれます。



Q.何を明らかにしようとしたか?


・無症状COVID-19の実態を明らかにすることによりPCR検査の範囲、予防法、対策を考える。



Q.どのように研究を進めたか?


・2020年4月下旬から5月末までに発表されCOVID-19の無症状症例について述べている16論文の再解析。


・PCR検査で診断が確定している人だけを対象。地域の一般住民、クルーズ船の船者、ホームレスシェルター住人、妊婦、空母乗船者、他国からの帰国者、避難民。ナーシングホーム居住者、大学生、刑務所収容者、など。

流行初期の中国データは信ぴょう性に乏しいので含めず。



Q.何が分かったか?


・PCR陽性の40-45%は無症状である。


・感染してから14日以降でも感染ウィルスを放散している可能性がある。


・無症状であっても胸部CTで異常陰影が見られることがある。



Q.トピックスは何か?


・米国、4州の刑務所、矯正施設収容者、計4,693人のうち、PCR陽性者は3,277人(69.8%)であったが3,146人(96%)は無症状であった。

この理由として、米国CDCによれば2019/11-2020/2までベータコロナウィルス(HCoV-HKU1)の流行があり、これとCOVID-19を起こす同じコロナウィルスであるSARS-Cov-2との交差免疫による効果を推定している。無害に近いベータコロナウィルスには、HCoV-OC43も上げられている。

・空母乗務員では4,954人のうち856人が陽性で60%は無症状であったがこれは平均年齢が20-30歳代であったことが理由ではないか。


・ダイヤモンドプリンセス乗員でPCR陽性で無症状者のうち胸部CTでは54%に異常所見がみられた。無症状であっても肺病変がある可能がある。




Q.どのように応用するか?


・PCR陽性で無症状者のフォロアップは、インターネット利用で発熱、心拍数などを継続管理してはどうか。


・下水汚泥の調査が無症状者の割合を推定するのに役立つ。


・症状がある人だけにPCR検査を実施しても予防策にはならない。


PCR陽性で無症状の人をどのように早めに隔離するかが流行を食い止める重要な課題です。

別種のベータコロナウィルスの感染が先行した場合に、交差免疫を起こし、COVID-19の発症を抑制する可能性はワクチン開発のヒントとなる可能性があります。

PCR陽性で無症状の人達がその後、どうなったかについては詳しいデータはありません。これについても知りたいところです。




参考文献:

1.Oran DP. et al. Prevalence of asymptomatic SARS-CoV-2 Infection: A narrative review. Ann Int Med. 2020 June 3. Published as in press.

https://www.acpjournals.org/doi/full/10.7326/M20-3012


※無断転載禁止


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