喘息・咳喘息
特徴
具体的に以下の症状がある場合は気管支喘息や咳喘息の可能性があります。
咳喘息ではゼーゼー、ヒューヒューという音(喘鳴)を伴わず、激しい咳が症状の主体となりますが、ともに気管支の慢性的な炎症が主な原因です。
・風邪のあとに咳だけが長い期間残りやすい。
・春先や初秋頃など、気候の変わり時に咳などの症状が出る。
・8週間以上、咳が続いている(8週間以上続く咳を慢性咳嗽といいます)。
・発作的に咳や痰が出て息苦しくなる。(激しく咳込むのみならず、ゼーゼー、ヒューヒューという音を伴うこともあります。)
・夜間や早朝に症状が出やすい。
・アレルギー体質である。
・小児喘息があった。
・家族に気管支喘息の人がいる。
・点眼薬や鎮痛薬の副作用で喘息が起こることがある。
・気管支拡張薬の吸入により楽になる。
・40歳以上で喫煙者の場合は、COPDである可能性も疑われます。
治療
主に治療に使われるのはステロイド薬と気管支拡張薬です。ステロイド薬は気道の炎症を抑える効果があり、状態を安定化するための長期管理薬として吸入ステロイド薬を使用するのが基本治療となります。
さらに、症状の程度、ステップにより、長時間効果の持続する気管支拡張薬の吸入薬やアレルギー性炎症を抑える効果のある内服薬を併用します。
発作時の治療としては、短時間で効果の現れる吸入気管支拡張薬を用いるほか、発作の程度が重症である場合には点滴や内服薬のステロイド薬を用います。
タバコは喘息を悪化させるため、患者さん本人だけでなくご家族や周囲の人の禁煙協力が必要です。
気管支喘息は高血圧や糖尿病のように慢性の病気であり、継続的な治療が必要です。
発作が起きないように適切な薬を適切に使用することで、健常者と同様の生活を送ることができます。
咳喘息の患者さんの約3割は気管支喘息に移行するとも言われています。
軽い気道炎症でも残った状態で長引くと気道の変性(気道リモデリングといいます)に繋がるため、症状が軽くなってからも全く症状の出なくなるまではきちんと治療を続け、自己判断で中断してしまわないようにしましょう。
女性の喘息では肥満が悪化因子となります。
また、高齢者女性で夜間や夜明けに強い発作を起こす場合には致命的になる危険が高くなりますので厳重は治療、管理が
必要です。
治療
慢性咳嗽の原因となるその他の疾患
気管支喘息や咳喘息以外で咳が長く続く原因として、カゼ症候群後の咳、逆流性食道炎、副鼻腔気管支症候群、後鼻漏、薬剤性咳嗽、COPDなど様々なものがあります。
それぞれの病態により使用する薬剤が異なるため、きちんと診断したうえでの適切な治療を受けましょう。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)
特徴
慢性気管支炎、肺気腫は2001年より国際的にCOPD(慢性閉塞性肺疾患)と呼ばれるようになりました。
慢性の咳、たん、息切れが主な症状です。最初は症状が軽いのですが、数年かけてゆっくりと悪化していきます。
時にカゼなどをきっかけに急激に悪化することもあります。
タバコを一定期間吸ったことのある40歳以上の方に発生しやすいと言われ、世界中で問題となっている「タバコ病」の代表です。
禁煙しても病気は進むと云われます。
現在、タバコを吸っていなくても、後から症状が出てくることもあり、該当する症状がある時には精密検査が必要です。
近年はタバコ以外にも子供の頃に呼吸器の大病をした方の中にも同様の状態になる人がいることが判明しました。
診断
COPDではタバコなどの有害物質が原因で肺に長期間にわたる炎症を起こすため、肺内の空気の流れが悪くなる病気です。
(この現象を気流制限といいます)
気流制限があるかどうかがCOPDの診断の上で重要です。
COPDに気管支喘息が合併することもしばしばあり、治療が複雑になります。
検査
スパイロメトリーと呼ばれる肺機能検査を行い、気流制限の程度を調べて診断します。
また、肺内の壊れ具合(いわゆる肺気腫)の有無を知るため胸部CT検査などの画像検査も有用です。
当院では、胸部CTを3D変換し、分かりやすい画像を提供しています。
呼吸状態が悪化すると運動能力も低下してくるため、どのくらい運動ができる能力があるのかを調べるため6分間歩行試験を行います。
病気が進むと体重も落ちて筋肉量が減ってくるため、体組成検査にて定期的に筋肉量を計測します。
治療
禁煙とワクチン接種(インフルエンザ、肺炎球菌など)は、すべての患者さんについて重要です。
重症度に応じて、気管支拡張薬やステロイドなどを主に吸入薬として投与します。
患者さんが適切に吸入薬が使え、治療効果を十分に発揮できるよう、繰り返し看護師が指導しています。
体調の維持のためには在宅酸素療法や運動療法、栄養療法なども重要で、全治療をまとめて「包括的呼吸リハビリテーション」と呼びます。
当クリニックはCOPDを抱える患者さん自身に、ご自分の病気を理解し、将来を快適に過ごすための手段を覚えていただくため、積極的な指導体制に力を入れています。
慢性呼吸不全
特徴
呼吸は、息を吸う時に空気中の酸素(O2)を取り込み、吐く時に体内で産生された二酸化炭素(CO2)を排出します。
この機能をガス交換といいます。肺の病気が進行すると、このガス交換がうまくできなくなります。
その異常状態を呼吸不全といい、呼吸不全が1か月以上続く状態を慢性呼吸不全といいます。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)や結核後遺症が原因のことが多く、その他に気管支拡張症、間質性肺炎、脊椎側彎症などの
胸郭の変形、神経筋疾患などが原因となります。
診断
動脈血ガス分析(動脈血採血)で診断します。肺を通過してきたばかりの動脈血に含まれる酸素と二酸化炭素の量(分圧)を
みることで、ガス交換の機能を調べます。酸素の分圧が一定以下になっている場合に呼吸不全と判断します。
検査
治療
慢性呼吸不全の原因となった肺の病気に対する治療と、酸素吸入を行います。
病院だけでなく自宅でも酸素吸入が可能です(在宅酸素療法)。
これは自宅に設置した酸素供給器(酸素濃縮器といいます)から細長いチューブをとおして鼻から酸素を吸入します。
また、携帯用酸素ボンベを使うことで外出や旅行も可能です。在宅酸素療法は健康保険が使えます。
呼吸不全の重症度に関する条件を満たせば、身体障害者(呼吸器機能障害)の申請も可能です。
酸素吸入を続けることにより身体に十分な酸素を取り込むことができるようになり、息切れが軽くなります。
また、肺の血流が酸素不足によりさらに悪くなるのを予防し、心臓の負担を軽減します。
不眠や食欲不振を改善し、QOL(生活の質)を高める効果もあります。
睡眠時無呼吸症候群
特徴
寝ている時に呼吸が止まってしまう病気です。太ると舌が厚くなり起こりやすくなりますが、やせていても顎が小さい、喉が狭い
などで起こり、アジア人に多いです。日本には1000万人以上患者さんが居ると言われています。
呼吸を回復するために眠りが妨げられ眠りが浅くなること、自律神経のバランスが狂うこと、酸素低下が起こることなどから、
日中の眠さや判断力の低下、交通事故のリスク上昇といった社会的な損失を生み、高血圧症、高脂血症、糖尿病といった
成人病の危険因子となり、脳梗塞や心筋梗塞、不整脈といった死につながる疾患も増やします。
いびきがひどい人、寝ても疲れが取れない人、起床時に頭痛がある人、夜間お手洗いに何回も起きる人、複数の成人病を
持っている人などは睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
検査
治療
・軽症の場合
マウスピースを患者さんにあわせて作製して使用します。(提携している歯科をご紹介します。
かかりつけの歯科でも取り扱っている場合はそちらへの紹介も可能です。)
・重症の場合
CPAPという機械を使った治療(経鼻的持続陽圧呼吸)を行います。その場合、以後継続的に月に1回の受診していただき、
治療効果や使用状況を確認します。
よくある質問
Q.なぜ気道が塞がるの?
眠る時は重力のかかり方が変わること、筋肉が緩むことから、舌の付け根やのどが落ち込み、気道が塞がってしまいます。
Q.肥満以外に注意する体型ってある?
顎が小さい人、首が短い人は起こし易いと言われています。口を大きく開けたとき、喉の奥が見えにくい人は起こし易いので、鏡を見てみてもいいでしょう。
Q.男性に多いと聞いたんだけど?
20代、30代では男性の方が女性の10倍くらい多いです。これは女性ホルモンが無呼吸から体を守っているからと言われており、更年期を過ぎると女性も増え、70歳くらいで男女同数になるといわれています。
Q.交通事故リスクはどのくらい上がるの?
カナダの研究ではアルコールの酒気帯び運転と同じくらい事故を起こし易くなると報告されています。そのため、電車、バス等の交通機関の運転手はほとんどの会社で検査をしています。
Q.眠さがなければ大丈夫なの?
この疾患の怖さは眠さだけでなく、死につながる疾患のリスクをかなり上げる事です。また、寝不足の状態が普通と思い、治療してから以前の眠さに気づく人もいます。
Q.CPAPやマウスピースを使うと病気が完治するの?
治療により無呼吸を抑えると、合併症のリスクが無呼吸がない人と同じ確率に下がるといわれています。ただ、使用していないときは無呼吸を起こしてしまうため、継続した使用が必要です。
Q.CPAPの機械は購入できますか?
当クリニックは保険診療で治療を行っており、機器はレンタルになります。
Q.機器トラブルが発生したようですが?
CPAPの機器がうまく継続使用できない場合には、使い方が適正でないか、機器にトラブルがある可能性があります。当院では医師、看護師が継続して細かく指導を行っていきます。
禁煙外来
禁煙外来について
喫煙は単なる嗜好の問題ではなく「ニコチン依存症」という疾患に位置づけられ、保険治療できる病気のひとつです。
当クリニックでは以下の条件を満たす場合に保険診療をすることができます。
期間は12週間で5回の禁煙治療外来があります。
1. タバコ依存スクリーニングテスト(TDS)で5点以上(=ニコチン依存症)。
2. 一日の喫煙本数×喫煙年数(喫煙指数・ブリンクマン指数)が200以上。
3. 直ちに禁煙することを希望している。
4. 本人が禁煙の意志があり、治療の同意書にサインしている。
禁煙外来では、以下のことを行っていきます。
1. ニコチン依存度の評価
2. 喫煙の害の説明
3. 行動療法の説明(喫煙の代償になる行動など)
4. 呼気CO濃度測定(喫煙・禁煙の確認)
タバコは喫煙者本人だけではなく、受動喫煙によって周囲の人にも健康被害を与えます。
あなた自身はもちろんのこと、あなたの大切なご家族の健康も考えて、禁煙と向き合ってみてはいかがでしょうか?
咳や痰、息切れなどの症状のない生活やおいしい食事のため、今、始めることをお勧めします。
標準的な治療スケジュール
初回診察
禁煙開始
再診・処方
2週間
2週間
再診・処方
4週間
再診・処方
4週間
再診・処方
治療完了