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No.100 新型コロナウィルス感染者をホテルに収容する場合の問題点


2020年8月26日

 新型コロナウィルス感染者 (COVID-19)が一気に増加し、病床の不足が懸念され、それを補う目的ですでにホテルの利用はわが国でも広く実施されています。

 ホテルを臨時の病棟として使用するというアイデアは、「逆方向トリアジー」と呼ばれ他の災害時での応用が提案されています[1]。

 しかし、ホテルを病室代用として使用するとしてもその問題点や、さらに軽症のCOVID-19をどのようなコンセプトの下で管理していくかについてはまだ多くの不明の点があります。

 ここで紹介する論文[2]は、すでにイタリアのローマで2020年4月1日より5月1日までの1ヵ月間で、COVID-19の診断が確定した1,239名についてホテルに収容(滞在期間は3~23日)、うち、126名は自宅に退院し、その後、病院への入院がなかったという経験をもとにさらに効率的な収容方法を工夫したコンセプトです。


図:Bruni T. et al. Telemedicine enabled accelerated discharge of patients hospitalized COVID-19 to isolation in repurposed hotel rooms.

Am J Respir Care Med. 2020 Aug 15;202(4):508-510.より改変



Q.どのような患者をホテルに収容したか?


・PCR検査で診断が確定しており、発熱を含め症状がなく安定している。

・酸素吸入や点滴が不要。

・スマートフォンが使用できること。




Q.どのような状態でホテルから帰宅させたか?


・スマートフォンによる遠隔モニターで、呼吸数、脈拍数、パルスオキシメータによる酸素飽和度(SaO2)が安定していること。

・医師あるいは看護師の判断で帰宅可能とした。

・鼻、咽頭の擦過で採取した検体のPCR検査が2回、陰性。




Q.問題点は?


・医師、看護師の配置を少なくせざるを得ない。


・病室の床と異なり、ホテルの部屋、廊下の消毒は手間がかかり複雑。


・部屋使用のコストは旅行者、宿泊者が少ないことと一致しているので安くできる。


・緊急検査などは実施できず患者の監視は、十分にできない。高血圧など他の治療中の投薬はかかりつけ医の判断にゆだねることになっており不安材料となる。


・ホテル収容患者では不安感、孤独感を訴えなど心のケアをどうするかが問題。


・ビデオ装置を利用し、医師や看護師と常に連絡がとれるようにして不安感を改善することができそうである。


・どのような場合にホテル利用とするか、指定感染症であるため法律的な裏付けの整備が必要である。



参考文献:


1.Bruni T. et al. Telemedicine enabled accelerated discharge of patients hospitalized COVID-19 to isolation in repurposed hotel rooms.

Am J Respir Care Med. 2020 Aug 15;202(4):508-510.

2.Pollaris G. et al. Reverse triage: more than just another method. Eur J Emerg Med 2016;23:240–247.


※無断転載禁止


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