No.346 社会的な背景が大きいCOPD ―コロンビア、英国にみる苦悩と対策―
2026年2月25日 COPDの発症は、遺伝的な負荷要因も指摘されていますが多くの未解決な社会的背景を特徴としています。これは喘息とは異なる点の一つです。 COPDの主な原因は喫煙と大気汚染と言われてきましたが、喫煙率が低下し、公害と騒がれた時代の大気汚染はわが国では今では改善してきました。わが国の統計ではCOPDは次第に患者数が減りつつあると言われています。しかし、私たちのような診療現場では、COPDは次第に減少している病気とはとても言えない状況です。重症者は減少していますが軽症者は決して減少していないようです。 途上国を含めた多くの国では、環境要因と社会的な啓発活動、未解決な政治的問題など多数の対策が不十分なまま、COPD患者数は増え続けています。 「WHO 世界電子タバコ使用状況推計」では、世界中で 1 億人以上が電子タバコを利用し、成人では少なくとも 8,600万人の使用者がいる。その大半は高所得国に居住している、といわれます。少なくとも1,500万人の子ども (13~15歳) が既に電子タバコを使用。...
2月25日
No.344 肺と心臓の病気に関わるタバコ問題
2026年2月12日 呼吸器科医はタバコを天敵と考えているのだろう、昔、同僚の医師にからかわれたことがあります。彼の専門は、糖尿病でしたが彼自身が、ヘビー・スモーカーでした。当時の副院長は循環器内科が専門であり、タバコ嫌いで通っていました。「君が吸うのは、分かって吸うのだからしようがない。しかし、吸った煙は吐き出すな、他人に迷惑だ」と怒りをぶちまけたことを思い出します。 厚生労働省は、2000年から、健康増進を図るための国民運動「健康日本21(二十一世紀における国民健康づくり運動)」を進めています。健康で長生きする「健康寿命の延伸を図る」が目的です。健康課題に対して目標数値を定め、計画的に生活習慣の改善などを目指しています。その内訳は、「栄養・食生活」「身体活動・運動」「休養・こころの健康づくり」「歯の健康」「たばこ」「アルコール」「糖尿病」「循環器病」「がん」の9分野です。この運動は、2024年度より「健康日本21(第三次)」の活動に引き継がれています。 COPDと心血管疾患は高頻度で併存する ことが知られており、両疾患が併存することで
2月12日
No.343 簡単な血液検査でCOPDの診断ができるか?
2026年2月4日 欧米では肺結核の治療方針が一段落した1950年代半ばから、呼吸器疾患の次の大きな課題はCOPDの早期診断と適切な治療に移りました。この時期にいわば暫定病名として提案されたCOPDの診断名が認知されてから70年以上になります。現在でも使われていますが、肺気腫、慢性気管支炎を統合した名称です。わが国では、慢性閉塞性肺疾患と呼ばれていますが、患者さんに病気を分かりやすく説明するのに苦労する病名の一つです。 COPDの治療の目標は、日々、苦しめている症状と将来、さらに問題を起こすだろう、という問題を区別して解決策を立てること、さらに急に悪化する 増悪 がないように気配りを継続することが必要です。説明をさらに難しくしているのは 併存症 と呼ばれている病気の種類の多さです。 現在、 COPDの併存症 として報告されている疾患は以下の通りです。 肺がん、心血管病変、睡眠呼吸障害、糖尿病、腎機能障害、骨粗鬆症、胃食道逆流症、鬱病や不安障害。さらに認知症などが挙げられています。 通常、実施されるような検診でCOPDの早期病変が指摘される
2月4日


No.342 COPDで寝たきりにならないための工夫
2026年1月30日 喘息とは異なり、COPDは中高年に多い慢性疾患であることは世界に共通しています。しかし、発症年齢の比較では、米国では50歳代の半ばから多くなりますが、わが国では60歳半ば頃から多くなり、 高齢者層に多い病気 となっています。従って、COPDに特徴的な症状は、高齢者に多い他の慢性疾患と共通する問題点と重なり合ってくることになります。 COPDは、わが国では、咳、痰の症状が強い 慢性気管支炎型 よりも階段を昇る時が苦しい、というような 肺気腫型 が多くみられます。後者は、日常の生活で買い物や散歩などわずかな運動で息切れが起こり、患者さんの日常の活動性をしだいに低下させていき、日常生活を次第に不自由にしていく、やっかいな状態です。 加えてCOPDの治療で問題となるのが併存症、すなわちCOPDの悪化と並び、経過中に加わってくる 高齢者に共通する呼吸器以外の慢性の病気 です。 COPDの治療経過では次の3つのパターンが危険視 されています。これらは、いずれもCOPDの重症度には必ずしも関係しない形で起こることが知られています。.
1月30日
No.339 栄養管理が大切な高齢者のCOPD
2026年1月16日 COPDは、中高年に多い疾患ですが、古くから、体形により太ったCOPD、やせたCOPDの2つのタイプがあることが知られています。太ったCOPDは blue bloater型 , やせたCOPDは pink puffer型 と呼ばれてきました。極端な、太りすぎも痩せすぎもCOPDの治療を難しくさせます。 当初は、blue bloater型は痰が多い慢性気管支炎型であり、pink puffer型は肺気腫型と考えられていました。現在では、体形から分類されることはありませんが、肥満を伴うCOPDは、閉塞性睡眠時無呼吸症候群を伴うことが多く、CPAP治療が必要となることが多く、他方、やせたCOPDでは、息切れが強く、しかも重症化とともに低酸素血症がみられることが多く、治療として在宅酸素療法が行われることが多いようです。 以前の分類であるblue bloater型も、pink puffer型も呼吸器系の治療と同時に栄養管理が共通して大切です。 pink puffer型では、主にエネルギー需要の増加と栄養摂取不足により、栄養状態の異
1月16日
No.329 COPDという病気の問題点
2025年10月24日 COPD 、邦名では、 慢性閉塞性肺疾患 という難しい呼び名は、すでに千年以上の歴史をもつ喘息という病名に比べれば新参者のイメージがあります。この病名に至るまでは、慢性気管支炎、肺気腫という病名が使われていました。 最近までCOPDは喫煙歴のある中高年男性の病気というのが医療者だけでなく一般の人たちの考え方でした。2000年、たばこ規制枠組条約の発効に先駆けて、世界で最初に画像入りのたばこ警告表示を採用したのはカナダでした。これは、カナダの呼吸器疾患の研究グループが1960年代より、世界でもっともタバコ関連の呼吸器疾患の研究をリードしていたことが背景にあります。その後、わが国もたばこ規制枠組条約に加盟し「たばこ事業法」「たばこ事業法施行規則」さらに「健康増進法」に至る法律が整備され喫煙者本人だけでなく受動喫煙の配慮義務が規定され、現在に至っています。 厚生労働省の統計によると2023年のCOPDによる死亡者数は16,941人、死亡率は14.0%でした。近年、少しずつ、増加傾向となっています。COPDは20年以上の喫煙
2025年10月24日


No.309 COPDの増悪が発作性の心房細動を起こす ―異なる臓器の相互関係―
2025年6月2日 COPDが喘息と異なる点は、同じ肺の病気でありながら、COPDは、さまざまな他の臓器の病変と共存し、さらに時に一致して悪化することです。特に 心血管系との関係 は、日常の診療の中でも判断が難しいことがあり、循環器内科医の助言を求めることがしばしばありま...
2025年6月2日


No.308 通常のCOPDの治療に吸入ステロイド薬は必要か、それとも不要か?
2025年5月21日 COPDの診療では、息切れや痰などの不快な症状の改善と 日常生活が不自由になることがないような治療 と経過中に生ずる、一時的な悪化、すなわち 「増悪」の回避 、新たに生ずる 併存症の予防と早期発見、早期治療 が重要です。...
2025年5月21日
No.307 在宅酸素療法をめぐる新たな課題
2025年5月12日 呼吸器の病気には、歴史的な変遷があります。わが国では戦後のある時期まで肺結核が重要な国民病とされていましたが、欧米諸国では、1960年代、すでに次の対策は、COPDと位置づけられていました。肺の病気が重くなると動脈の中を流れる血液中の酸素分圧が高度に...
2025年5月12日


No.304 一石二鳥の薬となるか:COPDに対する脂質異常症の治療薬スタチンの効果
2025年4月23日 COPD(慢性閉塞性肺疾患)の主な死亡原因は、経過中に発症する 重症の肺炎、肺がん に加え心筋梗塞、狭心症などの 心血管病変 です。治療する側の医療者にとって、軽症のCOPDであってもつねに念頭に置くべき目標です。心血管病変の大きな原因にコレステロー...
2025年4月23日
No.303 社会的な正義が必要とされるCOPD対策
2025年4月9日 COPDは、歴史的には社会性の高い疾患として知られています。肺結核に関する治療が一段落した1960年代初頭から、発症の原因として、環境問題、喫煙問題が取り上げられてきました。 「ロンドン- 慢性気管支炎、シカゴ-...
2025年4月9日
No.292 患者さん、家族、臨床医が解決したいと願う「息切れ対策」研究のトップ10の項目
2025年2月17日 人間を苦しめる病気は、呼吸器領域だけでも極めて多く知られています。毎日、悩みながら生活している人にとって、一日も早く問題点を解決してほしい、と願うのは当然のことでしょう。また、苦しんでいる人を毎日、看病している家族や、介護職や看護師、医師たちも新し...
2025年2月17日


No.291 心血管の病変が多いCOPD―呼吸器医グループから循環器医グループへの呼びかけ―
2025年2月13日 近年の医療は、専門分野が高度に先鋭化しています。臓器移植だけでなく、臓器そのものを人工的に作るあるいは、人工的に臓器の一部を修復する技術は、急速に進歩し、具体化してきました。将来的には、新しい治療法として人工臓器の開発と並行して従来にはなかった考え方...
2025年2月13日
No.290 死亡率の上昇と関連する高齢者の花粉症被害
2025年2月6日 気候変動は、気温と降水量に大きな変化を与えており、その結果、地球規模で花粉症のシーズンが長くなり、これに伴う被害が広がっています。高齢でCOPDなどの慢性呼吸器疾患を持つ患者さんが花粉症でどのような被害を受けるかについては、明確なデータはありませんでし...
2025年2月6日
No.287 低体重でうまれた子供が成人後にCOPD となるリスク
2025年1月22日 生まれたときの身体の完成度は、動物種により異なります。生まれたあと、短時間でも自分で動き廻る能力を持つ動物がいますが人間は、母親の庇護の下、乳幼児、小児期を経て成長し続けるゆっくり発育型です。さらに身体を構成する臓器の成熟度は、必ずしも同じではありま...
2025年1月22日
No.286 胎児の段階からの発症が判明してきた呼吸器の慢性疾患COPD
2025年1月20日 晩秋から春ごろまで、咳や痰が長く続き困っている、という患者さんがたくさん受診されます。多くは、カゼが治らないので、という訴えですが、私たち呼吸器医は、別の病気が基礎にあってそれが、冬季に悪化しているのではないか、と疑いを持ちながら診察します。...
2025年1月20日


No.279 COPDの発症が腸の病気と密接に関係しているのではないか?
2023年6月1日 多くの人たちを対象に調査した疫学的な研究からCOPD(慢性閉塞性肺疾患)が腸の病気と密接に関係しているのではないか、と考えられています。COPDの発症に深く関わる喫煙が腸の病気に関わっているというデータもあります。実際に、COPDと潰瘍性大腸炎が合併して...
2023年6月1日


No.277 個人的に異なる環境変化とCOPD増悪の関係を研究する
2023年5月24日 COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、慢性の息切れや咳、痰を特徴とする病気です。その原因はタバコが主と言われてきましたが喫煙者の約25%程度であり、発症にはそれ以外の原因が推定されていますが明らかになっていません。...
2023年5月24日
No.266 タバコの害と禁煙方法
2022年10月11日 タバコは1543年(天文12年)、ポルトガルより鉄砲とともに種子島に伝来したといわれています。嗜好品の中で、タバコは酒と並んで古い歴史を持っています。1589年(天正17年)、九州から中国を経て北陸地方まで急速に広がった背景には文禄、慶長の役、関が原...
2022年10月11日
No.262 COPDの最新研究は何を問題としているか?
2022年8月18日 慢性閉塞性肺疾患 (COPD) は、階段や坂道で苦しくなり、数年にわたり、日常的に咳や痰が続くやっかいな病気です。有病率は国によって異なり、年齢とともに増加しますが、40歳以上の約10%がCOPDを患っています。米国では、COPD...
2022年8月18日
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