No. 334 喘息をどのように予防するか? ―遺伝と環境からみた生活面での注意点―
2025年11月21日 喘息は、呼吸器疾患の中ではもっとも、一般的にみられる慢性の気道疾患です。幼児期から高齢者まで、あらゆる年齢層の患者さんを含むことが特徴です。現在、 世界で推定2億6000万人 の患者数と言われ、個人的な苦しみだけでなく 罹患率、死亡率、経済的 な3点でも大きな社会的問題となっています。 夜中など救急の受診が間に合わない時間に強い発作が起こり、治療が間に合わず、死に至る「喘息死」が大きな社会的な問題となった時期がありました。 厚労省関連の情報をたどっていくと、その頃、臨床研究に関わった医療者たちによる努力の跡が読み取れます。以下は、その時代の情報の一つです。 「気管支喘息は、5〜10%の国民が罹患し、苦しんでいるアレルギー性呼吸器疾患である。喘息の病態解明と治療に関する進歩は、喘息が慢性の気道炎症を伴い、長期管理を必要とし、抗炎症薬として吸入ステロイドが有効であるということを明らかにした。(中略)。厚労省関連の研究班として平成18年度から「喘息死ゼロ作戦」の展開に着手し、本研究の申請者は「 喘息死ゼロ作戦...
2 日前
No.333 多臓器の後遺症を残す新型コロナウィルス感染症
2025年11月19日 新型コロナウイルス感染症は、2019年末に中国から始まりました。その後の調査でそれ以前に他の地域で流行の予兆があったとも云われています。 20年1月15日に国内で初めて感染者が確認され、さらに、2月5日に大型クルーズ船ダイアモンド・プリンセス号での感染者報告があり、一気に緊張感が高まりました。 21年春に流行したアルファ株や同年夏のデルタ株は、若い人でも重症例が目立ち、 21年は65歳未満の死者が全体の11% を占めました。一方、ワクチンが普及し、オミクロン株が主流になった22年以降は、65歳未満の死者は全体の3%ほどになっています。20年には約96%が病院でしたが、22年以降は4人に1人が介護施設や老人ホーム、自宅などで亡くなっています。 23年5月、感染症法上の扱いが季節性インフルエンザと同じ 「5類感染症」 に変わりました。その結果、感染対策が緩和され感染者の全数把握がされなくなり、約5千の定点医療機関で診た患者数が報告されるようになり現在に至っています。世界では、20年と21年だけで推定1,500万人の超過
4 日前


No.332 子どもの睡眠呼吸障害が起こす脳の構造変化
2025年11月6日 小学生の子どものいびきが強いので、という相談を受けたことがあります。顎の形や体形が睡眠時無呼吸症候群で治療中の父によく似ていることや小児に特有な喉の解剖学的特徴から睡眠呼吸障害の疑いがあるので小児科の専門医の受診を強く勧めました。 子どもの頃の睡眠呼吸障害は、いびきだけでなく、授業中に居眠りが多くなることや集中力の低下が起こりやすいことが知られています。成人の睡眠時無呼吸症候群と類似した理由で高血圧や不整脈が起こりやすいことや認知能力と関係するという報告があります。 治療としての扁桃腺やアデノイドの外科的切除は、上気道の拡張による小児の睡眠呼吸障害の改善をもたらすことから手術が行われてきました。米国では、アデノ扁桃摘出術は15歳未満の子供では最も一般的な外科手術であり、年間50万件以上の手術が行われ、それによる死亡例が多いという報告があり、過剰ではないかという批判的な意見があります(JAMA, 2022)。 小児に対し、睡眠中の無呼吸発作を調べる検査は、機器が成人向きであり、同じ施設で実施することは事実上、困難になって
11月6日
No.331 連鎖を起こす高齢者の肺炎の怖さと解決すべき問題点
2025年11月4日 わが国の死亡原因とその数は、毎年、厚労省から発表されています。2024年の男女合わせた死亡数は160万5,378人で、前年の157万6,016人より2万9,362人増加し、調査開始以来、最多となりました。男女を合わせた死因のトップは、「悪性新生物(がん)」で全体の23.9%を占めています。全体の死因順位は以下の通りです。 1位:悪性新生物(23.9%) 2位:心疾患(14.1%) 3位:老衰(12.9%) 4位:脳血管疾患(6.4%) 5位:肺炎(5.0%) 6位:誤嚥性肺炎(4.0%) 第3位の老衰を死亡原因とする場合とは特定の臓器との関連性がはっきり決められなかった場合と考えられます。老衰は、わが国の死亡原因に挙げられていますが例えば、米国の死因統計には見られない診断名です。体力が著しく低下した高齢者では治療に結び付かない検査は不要と考えられますので、おそらく推定病名に近い位置づけであり、わが国では広く一般に受け入れられてきました。 5位は肺炎ですが、高齢者では肺だけではなく、体力が低下し、低栄養状態で全身的な炎症
11月4日
No.330 新しくなった気管支拡張症の治療の方向
2025年10月27日 気管支拡張症 は、わが国では中高年の女性に多い病気です。季節に関係なく、年余にわたる慢性的な咳と粘稠な痰が続く病気で、老後の患者さんをさらに、ひきこもりがちに追いこんでしまう病気でもあります。気道と呼ばれている気管支がところどころで部分的に病的に広がり過ぎとなった「拡張」があり、気管支壁の壁がところどころで炎症で厚くなる(肥厚する)病気です。慢性副鼻腔炎など鼻の病変を伴っていることがしばしばで、耳鼻咽喉科、呼吸器科医が共同で診療にあたることも少なくありません。 気管支拡張症の発症には複数の状態が関連していますが、病的に拡張した部分を含め気管支の広い範囲に治癒しにくい感染性の損傷をともなっていることが特徴です。 主な症状は、痰を伴う咳が続くことです。痰づまり、気管支(気道)の部分的な閉塞が問題ですが、近年の研究で遺伝子的な変化を伴うことが明らかになってきています。米国、欧州の気管支拡張症とわが国、中国、韓国の気管支拡張症は、成り立ちが異なるのではないかという意見があります。従って、欧米の研究結果は、東アジアの研究結
10月27日
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