2021年2月15日
新型コロナウィルス感染症 (COVID-19)は、コロナウィルス(SARS-C0V-2)による急性の感染症です。無症状感染から最重症で人工呼吸器や、エクモが必要になる場合があり、その病型は多彩です。最重症では、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)という状態になることが知られています。ARDSの一部(5%以下)では回復後も肺に間質性線維症を残すことがあります。加えて肺に見られる変化は、高度の炎症病変に加えて微少血栓が多発することです。これらに加え、多臓器に病変が起こり、さまざまな症状が続く場合があり、Long COVIDという呼び方をしている研究者がいます[1]。
Long COVIDに生ずる問題点を明らかにしたのがこの論文です[2]。
Q.COVID-19に罹患した後に生ずる症状は?
・後遺症の中で最も多いのは息切れと倦怠感である。
➡この症状が生ずる機序は不明である。息切れは、呼吸器系だけの問題点ではなく、多彩な理由が挙げられている。
Q.COVID-19の追跡研究をどのように行ったか?
・2020年3月より5月までにアイルランド、ダブリンの病院で治療された症例の解析。
・次の2条件のいずれかを満たす症例の検討:1)外来加療の症例ではCOVID-19の急性症状から6週間経過、2)入院は、通常病棟か、集中治療室での治療終了から6週間経過した患者。
・以上を満たす、COVID-19の既往歴をもつ患者に来院してもらい、胸部XP, 6分間平地歩行テスト(6MWT)、各種の炎症マーカー(CRP, Dダイマー、IL-6, 可溶性CD25)、息切れ、倦怠感、フレイルの状態をいずれも数値化し、統計処理を実施した。
・計712名の患者を対象。86人(12%)は死亡者。400人(56%)は外来で治療。312人(44%)は入院して治療。44人(44/312=14%)は集中治療室で治療。調査可能であった153人を対象とした。集中治療室で加療は19/153 (12%)。
・高齢、男性がよりフレイルとなった。
・6MWTでは、中央値は460m、入院期間が長いほど、距離は短縮。3%では歩行中の酸素飽和度低下が見られた。
・疲労感は女性の方が強かった。
Q.結果から読み取れることは?
・COVID-19 治癒後に起こる変化は、1)息切れ、歩行時の酸素飽和度の低下をはじめとする呼吸器系の問題点、これに関連した日常生活の障害、2)疲労感、倦怠感などが強く、活動性の障害。元の職場に戻れない。これは、新たな経済的な問題点に繋がる。
入院期間が長い人ほど下肢の筋力低下を起こし、その後の生活に支障をきたしている。
COVID-19と診断された後、平均75日目の段階で、呼吸器関連症状がまだ残っていること、倦怠感など原因が不明な症状が持続している人が多いことが判明しました。特に高齢者では、回復が遅く、活動性の回復が遅く、その後の生活が不自由となっていることが推定されます。女性では、倦怠感などの症状が続く場合が多いことが分かりました。
COVID-19の重症度や必ずしも呼吸器系に関係しない症状が持続していることが問題です。今後は、Long COVIDに悩む患者さんが増えそうです。
私たちのクリニックでもCOVID-19から回復しても症状が残っている人の受診がみられるようになってきました。今後は、治療のありかた、適切な呼吸リハビリテーションの態勢を整える必要を感じています。
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