• 木田 厚瑞 医師

No.173 新型コロナウィルス感染症:ワクチン接種後にも残る疑問点


2021年6月2日


 新型コロナウィルス感染症(COVID-19)は、患者数では、米国が断トツで、約3,324万人。他方、わが国では約78.9万人。米国では、2021年1月よりワクチン接種が進み、1回でも接種した人は約50%、2回目の接種が終了した人は、約40%です。ワクチン接種が進んだ結果、感染者数は、急速に減少してきました。それでも、現在、感染者数は、わが国を少し上回るほどで推移しています。一方、わが国では、1回目の接種終了者は6.4%、2回接種した人は2.4%です(以上、2021年5月30日現在、朝日新聞による)。今後、わが国の接種率が急速に進み、感染者数が激減することを祈る気持ちですが見通しは不透明です。


 ワクチン接種が進行し、感染者数が激減した米国のようになったとして、なお、多くの疑問点があります。米国医師会雑誌、JAMAに問題点を整頓した論文が掲載されています[1]。

基本的に米国の現在の対策を踏まえた指摘になっていることにご注意下さい。



Q.どのワクチンが最適で、どのように展開する見込みか?


米国では、現在、2種のmRNAワクチン(ファイザー社製、モデルナ社製)と1種のアデノウイルスベクターワクチン(ヤンセン社製、ジョンソン・エンド・ジョンソン社製) が、米国食品医薬品局(FDA)によって緊急の使用許可(EUA)を受けている。


・ヤンセン・ワクチンは、最初のアデノウイルスベクターワクチンである。このワクチンは、新型コロナウィルス(SARS-CoV-2) スパイクタンパク質の遺伝子コードを運ぶように設計された風邪のウィルス(Ad26)を使⽤している。単回投与ワクチンであるという利点がある。


・ただし、ワクチン有効性の比較は困難である。2種類のmRNAワクチンは、症状のあるCOVID-19の予防に対して同様の効果(約95%)があり、2回の投与後にCOVID-19 による死亡を防ぐ効果はほぼ100%である。


・これらのワクチンはいずれも変異ウィルスに対する効果は未確認である。


・ヤンセン社製ワクチンは、使用された地理的な差異があるが、中程度から重度のCOVID-19に対して66%の予防効果があった。重症予防では85%の効果があり、入院や死亡に対して100%の予防効果があった。しかし、変異ウィルスに対しては、⽶国では72%の防御力、南アフリカでは57%の防御力しかなかった。


・可能なら個⼈が選択すべきワクチンはどれか、という質問に対しては、当初の回答は、接種資格が得られたときに利⽤可能なワクチンを受け取るべきであるということであった。しかし、供給の制限が緩和されるにつれて、重症疾患や合併症のリスクが高いグループ (例えば、高齢者、免疫不全の⼈) では、mRNAワクチンが利点となる可能性がある。2回⽬の接種が難しい場合は、ヤンセン・ワクチンの単回投与ワクチンが望ましい場合がある。




Q.ワクチンは感染を防ぎ、蔓延を防ぐか?


・COVID-19ワクチンは、パンデミックを止めるために重要であるが、完全に抑制するという明確な証拠はまだない。感染者の減少は複数の要因による可能性があるので、感染流行の予防を証明するのは難しい。


・臨床試験第3相試験からの予備データでは、ワクチン接種後では無症候性感染をある程度の減少を示唆する。イスラエルでの初期の結果は、ワクチン接種後の感染症と症候性疾患の減少を示唆している。ワクチンによる、感染防御の効果は現時点では不明である。




Q.ワクチンへの忌避の人たちにどのように対処するか?


ワクチン忌避とは、ワクチン接種サービスが利用できるにもかかわらず、ワクチン接種の受け入れ拒否を指す。


・ワクチン忌避の主な理由は、強制力を嫌がる、現在の健康や疾病への悪影響、ワクチン禍の情報、企業や政府の公衆衛生機関への信頼の欠如など、いくつかの要因がある。


・ワクチン接種を躊躇している人への対処は、技術 (mRNAまたはアデノウイルスベクター)の説明、安全性の懸念(たとえば、mRNAは人の遺伝に影響しないかなど)への対処、誤報や陰謀説への反論から始まる。しかし、何よりもまず、接種を行うコミュニティ内での信頼の醸成が重要である。




Q.ワクチンを完全に接種したら、人々が安全にできることは何か?


米国疾病予防管理センター(CDC)の発表では、2回目のワクチン接種後、14日以降は隔離する必要なしと表明している。


ワクチン接種終了者どうしの交流は安全であるが、未接種者が含まれる可能性が高いので、引き続きマスク着用、ソーシャル・デイスタンスを守ること、換気を保つこと、大規模な屋内集会は避けるべきである。




Q.現在のワクチンは新しい変異ウィルスに対して効果的か?


・SARS-CoV-2が蔓延している限り、変異ウィルスは出現することは避けられない。


・変異ウィルスに対する有効性のデータはばらつきがある。mRNA-1273ワクチン(モデルナ社製)の場合、英国、南アフリカ、イスラエルからの報告では有効性は60-89%である。




Q.投与間隔をあけることができるか? ワクチンを混合して使用することはできるか?


・提供できるワクチンの数量が限られていた期間では、例えば英国では、ファイザー社製の2回目接種を42-6週後まで延ばしたことがあった。CDCは42日から6週後まで延期できるとしている。ワクチンの間隔を延ばすと効果が不十分となり変異ウィルスの出現を増やす危険がある。


・種類が異なるワクチンの組み合わせ接種をCDCは禁止している。




Q.1 回だけの接種を受けるとどうなるか?


・すでに感染した人は1回目のワクチン接種で2回目接種を受けたと同じくらい強い抗体反応が得られる。しかし、1回のみの接種では、変異株の出現を多くする可能性があり危険である。




Q.免疫はどのくらい持続するか?


ワクチン接種後、抗体が生成されること、メモリーT細胞による免疫応答の誘導である。ワクチン接種後の免疫がどのくらいの期間、持続するかは不明であるがウィルスの進化、変異株の出現を考えると追加接種が必要となる可能性がある。




Q.COVID-19は将来、風土病になるか?


・今後、数か月後にCOVID-19が排除される国もあれば持続する国もありうる。


・長期的にはインフルエンザと同様に、冬季流行、風土病化、あるいは季節性となる可能性がある。




 ワクチン接種が進んだとしても、COVID-19を完全に封じ込めることは不可能であるというのが研究者たちの見解です。また、マスク着用、3密回避などの注意点が大幅に緩和されることにはならない可能性が高いと思われます。

 今年は、手洗い、うがいの徹底、マスク着用などの効果でインフルエンザ感染者は激減しました。また、成人の喘息は気道のウィルス感染で悪化することが知られていますが、これも例年よりも低頻度でした。

COVID-19が抑えられたとしてもアフター・コロナの生活は、これまでと違った注意が求められそうです。




参考文献:


1. del Rio C. et al. COVID-19 in 2021-Continuing uncertainty.

JAMA 325: 1389-1390: 2021.


※無断転載禁止

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