No.208 新型コロナ後遺症(Long Covid)の対策とは?


2021年10月4日


 新型コロナウイルス(Covid-19)対策で、政府は19都道府県の緊急事態宣言と8県のまん延防止等重点措置について、9月30日の期限をもってすべて解除することを決めました。宣言と重点措置がどの地域にも出されていない状況はおよそ半年ぶりになります(令和3年10月2日現在)。

他方で、私たちのクリニックでもCovid-19の後遺症を訴えて受診する患者さんが少しずつ増えてきています。これは正式な医学用語ではありませんがLong Covidと呼ばれています。多くは、若い世代でワクチン未接種の状態で感染した人たちです。

Long Covidの対策は急がねばなりません。ここでは、Scienceが解説記事として取り上げたLong Covidの対策についての提言を紹介します[1]。




Q.病名としてのLong Covidとは?


Long Covidは、SNSなどソーシャルメディアを通じて患者たちにより定義された最初の病名である。2020年初頭の流行で、感染後の長期症状のオンライン証言がソースとなった。2020年の夏ごろまでに数千人が意見をかわし共通のテーマが問題となった。


・別名としてCOVID-19後症候群、COVID-19後の状態、COVID-19の急性後遺症などがある。国、機関により異なる。




Q.コロナ後遺症の頻度は?


・症状を伴っている症候性COVI-19の3人に1人は発症後12週間でも症状が残るといわれた。


・Long Covidは急性重症者だけでなく、またすべての年齢層が経験する可能性がある。


・2~16歳の推定33,000人がLong Covidに罹患し、そのうち26,000人が少なくとも12週間、9000人が少なくとも1年間症状を呈した。


・英国での調査(REACT-2)は、非入院例の50万人以上を対象としているが38%(男性33%、女性42%)で少なくとも1つの症状が12週間以上続き、15%では少なくとも3つの症状が12週間以上、持続した。


・英国国家統計局(ONS)は、2021年6月にCOVID-19に感染した約100万人が4週間以上症状を呈したと推定している(人口の1.5%)。うち、385,000人は1年前の感染によったと推定されている。


・ONSによる全人口におけるLong Covidの有病率は、推定25~34歳で1.6%、35~69歳で2.1%であった。2~11歳では推定人口有病率は、それぞれ1000人に2人、12~16歳では1000人に対し、5人であった。




Q.コロナ後遺症の症状は?


・症状は、広範囲、多臓器、変動または再発することが特徴。


・もっとも一般的な症状は、「疲労」である。休息しても改善されない。倦怠感。記憶力や集中力の低下、混乱、脳の霧(brain fog)などの認知機能障害。

胸痛、息切れ、頭痛、筋肉痛、めまい、動悸の頻度も高い。


・心肺系、神経認知系、胃腸系、皮膚、眼への影響、疼痛など多彩である。

多系統性疾患である。


・症状悪化の引き金には身体活動、ストレス、睡眠障害、認知課題がある。




Q.Long Covidの問題点は?


・医療専門家における認識の欠如。


・受診することにより症状の改善があるか、あるいは解雇されるか、不安を持ち続ける。

汚名と差別が患者側の深刻な個人的な問題である。


・初期に軽度とされた人たちがLong Covidとなることが多い。後でさらに多臓器関与となることがある。


・問題点は、COVID-19の数週間後、数か月後に診断された臓器の病理診断が含まれるかどうか、あるいはこれらが別の病変とみなされるか、あるいは「原因不明」の症状がある患者のみがLongを有するのか、という問題点がある。




Q.Long Covidの診断基準は?


・標準化されたものはない。




Q.類似例があるか?


・他のコロナウィルス疾患であるSARSおよび中東呼吸器症候群(MERS)の患者の1/4ないし1/3では長引く肺機能低下、運動能力の低下、心理的症状を呈する。


・ウィルス性疾患後の自律神経機能障害は、体位性頻脈症候群、筋痛性脳脊髄炎、慢性疲労症候群など障害症候群を引き起こすことが知られている。総称してポストウィルス症候群と呼ばれているがこれらの正確な定義が必要である。




Q.機序は何か?


・Long Covidには、血管損傷、凝固亢進、微小血栓症などの機序の関与が考えられるが実証されていない。


・他の潜在的な機序として免疫系の調節不全、自己抗体がある。Long Covidでは感染後8カ月で血清中のサイトカイン濃度が上昇していた。免疫および炎症性メディエータの亢進状態が見られた。


・SARS-CoV-2ヌクレオカプシド蛋白質は感染後6か月まで、腸、肝臓、胆嚢、リンパ節などの肺外組織で検出されている。


・COVID-19ワクチン接種に対する反応として免疫系が残留ウィルスの排除に役立つ可能性がある。または、機序が自己免疫である場合には、免疫化は免疫系を「リセット」する可能性がある。

➡ワクチン接種を受けた人たちのフォロアップのデータがLong Covidの解明に貢献する可能性がある。




Q.Long Covidの解決策の4R


・COVID-19パンデミックに対する公衆衛生上の対応は、進行中のパンデミックと並び長期的影響に適切に対処する必要がある。


・4つのR,すなわちReporting(報告)、Recognition(認識),Rehabilitation(リハビリテーション),Research(研究)のそれぞれについて適切な対策を組み込む必要がある。



図:Alwan NA. The road to addressing Long Covid. 邦訳

 



 わが国だけでもCovid-19の感染既往者数は約170万人に達しています(令和3年10月2日現在)。多くの人たちが、身体的症状や就業などの悩みを抱えて暮らしていると思われます。この論文では、課題を4つのRにまとめています。ワクチンや治療薬だけでなく、Long Covidで悩む人たちの対策を急ぐ必要があります。私は特に、呼吸器科医からの立場からリハビリテーションとしての治療方法に関心を寄せています。




参考文献:


1. Alwan NA. The road to addressing Long Covid

Science 2021; 373, issue 6554, 30 Jul 2021.

DOI:10.1126/science.abg7113


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