2020年3月5日
新型コロナウィルス肺炎 (COVID-19)による重症患者の学術的な報告が少しずつ増えてきており、症状、診断、治療などの問題点が明らかになってきました。
ここで紹介する論文は、最近のLancet系列雑誌に掲載されたものです。
COVID-19により死亡した52症例について臨床的なデータを詳しく報告しています。武漢市にあるJin Yin-tan 病院で治療を行った実態ですが、ここには集中治療室があり、周辺の病院で治療が奏功しなかった患者が転院して治療を受け、しかも難治例にはECMO (体外式膜型人工肺装置)を使い治療しています。ECMOは多臓器不全、重症感染症の治療選択肢の一つとしてわが国でも高度救急救命治療を行っている病院で治療法として使われています。
この報告では、COVID-19ではARDS(急性呼吸窮迫症候群)の合併が多く、その治療目的でECMOが使われていました。
高度救急救命治療に拘わらず救命できなかったという重症例の報告ですが内容は、参考になります。
Q. COVID-19死亡者の特徴
2019年暮れから1月26日までに武漢市、Jin Yin-tan 病院に入院、搬送されたCOVID-19診断が確定した710人の調査。入院後28日での調査とした。
死亡者は52人。死亡者と生存者を比較すると、死亡者の年齢は高齢(51.9歳vs 64.6歳)で死亡者の81%はARDSとして治療され、94%は人工呼吸器を装着。29%が急性腎障害、23%が心機能障害、29%が肝障害を合併していた。治療中に院内肺炎(COVID-19肺炎に加えて細菌性肺炎を合併した)が13.5%。死亡率は7.3%と他の報告(平均 約2%)より高値であるが重症者が搬送治療されたという事情による可能性がある。
死亡者で多かった基礎疾患は、脳血管障害、糖尿病であった。
COVID-19により死亡者の大多数はARDSが原因であり、重症の呼吸不全を伴う多臓器障害を起こしていました。人工呼吸器の装着のほか、一部ではECMOによる治療や、抗ウィルス薬、ステロイド薬や各種の抗菌剤が並行して使用されていましたが救命できませんでした。死亡者は、高齢であり、慢性の疾患の治療を受けており、COVID-1の発症でARDSを含む多臓器障害が特徴的でした。重症例の治療が難しいことを示しています。
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