No.75 妊娠中の睡眠時無呼吸症候群と糖尿病


2020年6月16日

 肥満が多い米国では、妊婦の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)の増加が問題となっています。

 妊娠中の閉塞性睡眠時無呼吸の合併が糖尿病の発症にどのように関連するかについては疫学調査では知られていますが、厳密に検証した成績は多くありません。

 ここでは、OSAがある妊婦では糖尿病となる頻度が高くなる、という看護研究の論文[1]を参考に判明していることを紹介します[2]。




Q.妊婦でみられるOSAの頻度は?


・妊婦、3,300人を調査した研究ではAHI指数(=無呼吸低呼吸指数;睡眠中の1時間に生ずる無呼吸低呼吸の頻度)が5以上は、妊娠初期では3.6%, 中期では8.3%にみられる。



Q.妊婦でみられる睡眠中の変化?


・32%がいびきをかくようになる。妊娠初期では眠気が強く、睡眠時間が延長する。これは妊娠中に血中のプロゲステロン値が増加するためと考えられている。


・妊娠に伴い咽頭径が狭くなり、鼻腔も粘膜の浮腫が強くなり、狭くなる。1回換気量が減り、分時換気量が増加する。



Q.妊婦のOSAとは?


・妊婦が昼間眠くなるのは病的な現象ではないと医師あるいは妊婦が考えることがあり、OSAに気づくのが遅れることがある。


・妊娠前にOSAがある場合には妊娠により悪化することがあり、経過中に終夜の酸素飽和度のチェックが勧められている。


・妊婦のOSAがあると子癇の原因となることがある。ただし、妊婦のOSAが胎児の発育に影響するかについては不明である。



Q.OSAがある妊婦は糖尿病になりやすいか?


・米国の2つの大学の共同研究[1]。妊婦の年齢、妊娠月数、BMI(=体重と身長の二乗比)、人種差を揃えたcase-control 研究を実施。AHI>5のOSA群では妊娠糖尿病は22%でAHI が5以下の対照群では9%であった(P<0.001)。OSAがあると妊娠糖尿病となるオッズ比は4.71であった。妊娠前のBMIは、OSA群は30.6,対照群では30.09で差はなし、喫煙率は前者が35.6%,後者は23.9%。いびきは前者が34%、後者が17.4%であった。




成人のOSAが糖尿病の発症原因となることは知られています。妊婦のOSAについては、肥満者の多い米国で特に注意が喚起されてきています。早期診断の方法、妊娠中の注意の方法、医療者間の連携と役割分担など整頓すべき課題が多いとしており「妊婦の睡眠時無呼吸症候群の治療指針」の整備が急がれています[2]。



参考文献:

1.Balserak, BI.et al. Obstructive sleep apnea is associated with newly diagnosed gestational diabetes mellitus

Ann Am Thorac Soc 2020; 17, 754–761. Jun 2020

DOI: 10.1513/AnnalsATS.201906-473OC

2.Louis, J. et al. Obstructive sleep apnea in pregnancy. UpToDate, Last updated May 1, 2020.


※無断転載禁止

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