• 木田 厚瑞 医師

No.3 CPAP発明と発展の歴史

2019年9月2日



睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、閉塞性無呼吸症候群(OSAS)と中枢性無呼吸症候群(CSAS)に分けられています。呼吸器内科医が治療にあたるのは、大多数が前者であり、その主な治療手段がCPAPと呼ばれる医療機器です。

発明したのはオーストラリアの医師、Sullivan (サリバン)。彼が発明に至るまでの経緯と将来展望について書いています。




Q.母親の死が出発点


サリバンが医学部の学生だった1968年7月朝、母親がベッドの中で死亡しているのを発見します。発見した時にはまだ体に温かさが残っていました。

母は甲状腺機能低下症の治療を受けていました。彼が夜、遅く帰宅すると大きないびきがいつも聴こえ、それは朝5時まで続いていました。

母の急死事件は、彼を睡眠障害の研究へと引っ張るきっかけとなります。




Q.研究から発明まで


サリバンがSASという病気があることに気づいたのは1973 年のことでした。

睡眠障害の初期研究で知られるGuilleminaultの論文に惹かれます。また、イタリアで開催された睡眠呼吸障害のシンポジウムに出席したことも良い刺激になりました。

1979年、サリバンはシドニー大学附属病院、皇太子アルフレッド記念病院で臨床医として働くかたわら睡眠障害の研究に従事していました。

ヒトの研究だけでなく睡眠障害犬を使った基礎研究も行っていました。研究ノートの記録は次第に増えていきます。


いびき-睡眠障害を結び付ける研究は、脳波、軟口蓋や喉を通過する気流、圧、胸郭の動きと次第にいびきで生ずる問題点を追いつめていきます。

特に、その頃発明された睡眠中に血液中を流れる酸素の変動を持続的に測定できるパルスオキシメーターは、格段に問題点の解明に役立ちました。

約5年間の研究の結果、eureka (=しめた! アルキメデスが王冠の純度を測る方法を発見したときの叫び声)、と声を上げる発見に至ります。




Q.CPAPの製作


1980年7月、発見した理論に基づきCPAP(持続陽圧呼吸療法)の試作第1号を作り上げました。低圧の空気を送りこむことで十分であることが分かったことは大きな成果でした。

臨床治験が開始されましたが、開始後3カ月でこれまで苦しんでいたさまざまな症状が著明に改善し、中止すると元に戻ることを確認しました。

オーストラリアで酸素療法の機器を製作していた会社に機器を製造させ、1989年の段階で約1,000人が使用していました。CPAP製造は、1989年にResMed社に引き継がれ、現在に至っています。




Q.SASで起こる病気


サリバンのSASに関する研究は、さらに進んでいきます。

その結果、SASに伴って起こる病気として、糖尿病、心房細動、心不全、COPD (慢性閉塞性肺新患; 肺気腫、慢性気管支炎)、脳血管障害が多いことを指摘します。

さらに睡眠障害と認知症の初期変化が関係すること、アルツハイマー病の原因と言われるアミロイドβの脳内への蓄積と除去が睡眠に関係すること、交感神経の異常が起こりやすいこと、体に動脈硬化や発癌の原因となる慢性炎症を悪化させること、などを指摘していきます。

これらはSASにより繰り返し、体の中で生ずる低酸素が問題とされ、論点は多くの研究者に引き継がれています。さらに、彼は乳幼児突然死症候群が睡眠障害によることを明らかにし、これに対してもCPAP治療が有用であることを示しています。




Q.CPAP治療の問題点


現在、CPAPはOSAには確立された治療として知られていますが、批判も多くあります。サリバン自身も論文だけでなく学会に出席したときなどに寄せられる批判があることを知っています。いわく、あれは、blunderbuss (へぼラッパの意味)、palliative (一時的な緩和ケア)であると。

CPAP批判のもっとも大きな点は使用時間がきちんと守られていないことです。使用者の約半数しか決められた通り使っている人はいません。半数は治療が必要ですが、脱落してしまうのです。サリバンは反論します。心血管病で処方されている薬だってきちんと服薬している人は約50%と言われるではないか、同じレベルだ、と。




サリバンの努力は、実は母親の死がきっかけでした。CPAPの発明で睡眠障害の多くの人を救ったことは彼の輝かしい業績です。

SASは、全身の病気を作り出す可能性があります。医師は単にCPAP機器の管理だけが求められているのではないということであり、彼のその後の研究成果から多くのことを教えられます。





参考文献:

1. Sullivan CE. Nasal positive airway pressure and sleep apnea. Reflection on an experimental method that became a therapy.

Am J Respir Crit Care Med 2018; 198: 581-587.



※無断転載禁止


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