No.365 負の連鎖:高齢化―大気汚染―認知症
2026年8月3日 わが国では、大気汚染による公害が問題となり、その環境の中で生活する人たちには慢性呼吸器疾患が多く、かつ悪化しやすいことが知られてきました。大気汚染は、小児の呼吸器感染症の増加、成人のCOPDや喘息の悪化を起こすだけでなく近年、認知症の主要な危険因子として注目されています。ちなみに認知症とは、1つまたは複数の認知領域(学習および記憶、言語、実行機能、複雑性注意、知覚運動、社会的認知)における認知機能の低下を特徴とする後天性の疾患です。 微小粒子状物質(PM2.5)の長期曝露と認知機能低下や認知症発症率の増加との関連性を示す証拠が増えつつあります。人口の高齢化と大気汚染が同時に進んでいる中国では特に重要な社会問題となっています。 これまでの研究のほとんどは、PM2.5による健康への負担を時間経過とともにどのように進むかのプロセスで、曝露反応との関係を確立することに焦点が当てられてきました。幼少時の暴露が呼吸器系に与える影響は深く研究されてきましたが、この研究過程で新たな健康問題として浮かび上がってきたのが認知症との関係です。
8月3日


No.360 肺の老化とは何か
2026年6月16日 老化の予防、改善する薬や若返りの方法が、世の中に溢れています。欧米の医学雑誌にも新しい科学情報がたくさん見られます。Ageingという、言葉がキーワードの一つです。 Ageingという言葉は、手もとの辞書(リーダーズ英和辞典)では「年をとること、加齢、老化、経年変化、時間効果」とあります。老化研究の先進国、英国の辞書(オックスフォード現代英英辞典)では、Ageingを「the process of growing old」と表現し、変化の過程を重視しているようです。こちらの方が本来の意味を反映しています。 Ageingは多くの動植物に共通ともいえる生命現象であり、病気の発症と関係し、病気になり易くする、すなわち「感受性の増加に伴う進行的かつ広く予測可能な変化を特徴とする」ことです。老化は均質なプロセスではありません。同じ人でも臓器どうしが異なる割合で老化し、遺伝的構成、生活習慣、環境曝露など複数の要因に影響されます。例えば、細胞の変異は加齢とともに幹細胞内に蓄積しますが、臓器によって異なります。エピジェネティックなデオキ
6月16日


No.342 COPDで寝たきりにならないための工夫
2026年1月30日 喘息とは異なり、COPDは中高年に多い慢性疾患であることは世界に共通しています。しかし、発症年齢の比較では、米国では50歳代の半ばから多くなりますが、わが国では60歳半ば頃から多くなり、 高齢者層に多い病気 となっています。従って、COPDに特徴的な症状は、高齢者に多い他の慢性疾患と共通する問題点と重なり合ってくることになります。 COPDは、わが国では、咳、痰の症状が強い 慢性気管支炎型 よりも階段を昇る時が苦しい、というような 肺気腫型 が多くみられます。後者は、日常の生活で買い物や散歩などわずかな運動で息切れが起こり、患者さんの日常の活動性をしだいに低下させていき、日常生活を次第に不自由にしていく、やっかいな状態です。 加えてCOPDの治療で問題となるのが併存症、すなわちCOPDの悪化と並び、経過中に加わってくる 高齢者に共通する呼吸器以外の慢性の病気 です。 COPDの治療経過では次の3つのパターンが危険視 されています。これらは、いずれもCOPDの重症度には必ずしも関係しない形で起こることが知られています。.
1月30日
No.331 連鎖を起こす高齢者の肺炎の怖さと解決すべき問題点
2025年11月4日 わが国の死亡原因とその数は、毎年、厚労省から発表されています。2024年の男女合わせた死亡数は160万5,378人で、前年の157万6,016人より2万9,362人増加し、調査開始以来、最多となりました。男女を合わせた死因のトップは、「悪性新生物(がん)」で全体の23.9%を占めています。全体の死因順位は以下の通りです。 1位:悪性新生物(23.9%) 2位:心疾患(14.1%) 3位:老衰(12.9%) 4位:脳血管疾患(6.4%) 5位:肺炎(5.0%) 6位:誤嚥性肺炎(4.0%) 第3位の老衰を死亡原因とする場合とは特定の臓器との関連性がはっきり決められなかった場合と考えられます。老衰は、わが国の死亡原因に挙げられていますが例えば、米国の死因統計には見られない診断名です。体力が著しく低下した高齢者では治療に結び付かない検査は不要と考えられますので、おそらく推定病名に近い位置づけであり、わが国では広く一般に受け入れられてきました。 5位は肺炎ですが、高齢者では肺だけではなく、体力が低下し、低栄養状態で全身的な炎症
2025年11月4日


No.325 超高齢者の健康をどう守るか – 先端医療が抱える問題点の解決
2025年9月16日 9月15日は敬老の日です。全国で100歳以上の高齢者数は、2025年9月1日時点で約10万人であり、前年比では約4,600人の増加と報告されています。男女別では、女性が全体の88%を占めており、圧倒的に女性優位です。厚労省では平均寿命だけでなく、生...
2025年9月16日


No.322 老化現象は、どのように考えられているか?
2025年9月3日 生物では、それぞれの種族の別に、寿命に幅があります。カゲロウのように産卵後の成虫では、数時間という極めて短いものから象のように長いものまで、生物の種類により、およそ決まっています。寿命を決める共通の現象は「老化」です。...
2025年9月3日


No.319 寿命を延ばす方策はあるか?
2025年8月18日 「不老長寿」は「人類の永遠の夢」とも言われてきました。秦の始皇帝は万里の長城の整備・増設や、等身大の兵馬俑など世界遺産として後世に残ることになった大事業を行いました。この始皇帝にとりいったのが徐福(あるいは徐市)です。徐福は、東の海に伝説の蓬萊山...
2025年8月18日


No.314 中高年の慢性疾患:その予防策
2025年6月27日 病気は大きく分けて数日から数週間を越えない期間で元の状態に戻る場合と、長い期間、異常が持続する場合に分けられます。前者は 急性疾患 と呼ばれ、後者は 慢性疾患 と呼ばれています。 慢性疾患の特徴...
2025年6月27日


No.313 高齢者に多い栄養失調 ―変ってきた近年の考え方―
2025年6月24日 現代では、肥満、運動不足がリンクした健康状態が問題ですが戦後の早い時期に育った世代では、クラスでやせた子がいると校医による検診では栄養失調といわれました。 わが国で 栄養 という言葉が使われるようになったのは、栄養学の創始者である佐伯 矩の提言うす...
2025年6月24日


No.312 なぜ高齢者の肺炎は重症化するのか?
2025年6月20日 巨人軍の選手、監督として偉大な足跡を残した読売巨人軍の終身名誉監督であった長嶋茂雄さんは、6月3日、89歳で逝去されました。脳梗塞で倒れた後も、ファイトにあふれる現役時代のプレースタイル同様に、最期まで不屈の闘志で病と向き合った生活は、野球フアンだけ...
2025年6月20日


No.306 横隔膜の働きとその病気:高齢者の呼吸器疾患の鍵
2025年4月30日 しゃっくり は、横隔膜の痙攣であり、日本語では 吃逆 、英語では、 hiccup と呼ばれています。「ヒック」という音は、いかにも起こる状況を描写しているようです。 授乳中の乳児は、しゃっくり、げっぷ、により、母乳を飲む能力を増加させ、肺を守って...
2025年4月30日
No.288 医学の進歩による長寿の実現と問題点
2025年1月24日 秦の始皇帝(紀元前259-紀元前210年)は万里の長城の整備や強引な焚書坑儒の政策で知られていますが不老長寿の薬を探すことを命じたことでも知られています。不老長寿は、昔から多くの権力者の夢の一つでした。...
2025年1月24日
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