• 木田 厚瑞 医師

No.154 新型コロナウィルスのワクチン接種に伴う米国の問題


2021年3月29日


 米国では、ファイザー社とモデルナ社のワクチン接種が順調に進んでおり、2021年秋までには接種予定を完了すると見込まれています。

 通常、ワクチンが開発され、効果が検証され、安全性が確認されるまでには5~10年近くかかると言われます。両社が開発したワクチンは、短期間で開発され、ある程度の有効性と安全性が証明され、わが国でも接種が進められています。

 わが国では、十分なワクチン供給が遅れていることが問題ですが、他方、米国ではワクチンを巡って新たな問題点が指摘されています。

 ワクチン接種で現在、どのような問題が生じているか、それをどのように解決すべきか。ここで紹介する論文[1]は米国の苦悩を伝えています。




Q.臨床治験から見えない部分は?


・Pfizer-BiNTech ワクチンは、臨床試験では、44,000人、Modernaワクチンは30,000人が登録された。ワクチン投与直後に生ずる副反応の種類、頻度は把握できる可能性が高い。


・関節痛、アナフィラキシーのほか、脳炎、横断性脊髄炎、ギランバレー症候群など長期的に発生する可能性の副反応の中には、頻度が低いので広範囲に接種が進んだ段階で初めて発見されるものがありうる。




Q.米国でのワクチン禍、救済の仕組みは?


・通常は食品衛生局(FDA)がワクチンを承認。さらに米国疾病予防管理センター(CDC)が子供、妊婦に推奨すると全米ワクチン被害補償プログラム(VICP)を通じてすべてのレシピエントが傷害補償を受けることができる。


・VICPは、米国で投与される大部分のワクチンをカバーしている。


・VICPは、ワクチンによる負傷に対し、迅速かつ公正な補償を確保。同時に製造業者がワクチン開発、製造を奨励する責任からの免除の代替の法的手段を提供するため作成された。


・VICPは、2015年以来、毎年平均615人の請求者に年平均2億1,600万ドルを支払ってきた。




Q.コロナ禍で補償制度はどのように変わったか?


・2020年3月に保健社会福祉局が公衆衛生上の緊急事態を宣言したため、VICPよりCOVID-19ワクチンによる副反応被害が除外された。


・宣言の結果、公的準備と対策負傷補償プログラム(CICP)のみにもとづいて請求する連邦法が適応されることになった。


・CICPは、VICPよりもはるかに幅広く、アクセスしにくい。その理由は、最も深刻な被害のみを補償すること、VICPよりも立証責任が高く、ワクチン接種日から1年後は時効となる制度である。CICPは、ワクチン被害で就業できなくなった場合の補償は毎年50,000ドルに制限している。いわゆる慰謝料はない。弁護士料の負担はされない。

宣言が解除となってもワクチン被害は遡って請求できない。




Q.この論文の著者が指摘する問題点は?


・COVID-19のパンデミック被害は、これまでの公衆衛生上の災害と同様に低所得の人たちと有色人種が最大の犠牲者となる可能性は白人の2倍以上である。

 ➡従って、マイノリティおよび低所得者への接種を急ぐ必要がある。

 ➡ところがこれらの人たちには高率でワクチン懐疑論と消極的姿勢がある。


2020年8、9月実施の世論調査で白人の33%がワクチン接種をしないだろうと回答したが黒人の回答者では49%に達した。

11月の別の世論調査では、黒人回答者の71%で知人がCOVID-19で死亡したと答えた。ワクチン接種希望者は42%に過ぎなかった。

 ➡接種希望率を高めるためには、ワクチン副反応被害の救済措置が十分であることを周知徹底させる必要がある。




Q.この著者の提言は?


・ワクチン接種がもっとも必要な人たちが安心して受けられるようにCICPの適応により不公平感を改善するための措置が必要である。


・今後、接種者が増えていくと予想される妊婦、子供たちへの適応を含め、VICP法を適用していくこと。


・ワクチン被害補償信託基金に資金を提供するために、米国のパンデミックウイルスのすべてのワクチンに1本あたり75セントの物品税を適用すること。




 バイデン大統領の方針で2021年秋までにワクチン接種が終了する計画が立てられています。他方、ワクチン接種による副反応などの報告も見られるようになってきています。

 多くの人たちに安心して接種してもらうためにはわが国でも補償制度の詳しい内容を周知しておく必要があります。




参考文献:


1.Van Tassel, K.et al.Covid-19 vaccine injuries — Preventing inequities in compensation

New Eng J Med 384;10 in press. March 11, 2021

DOI: 10.1056/NEJMp2034438


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