No.185 新型コロナウィルス・デルタ変異株に対するワクチンの有効性


2021年8月2日


 新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)のデルタ変異体(いわゆるインド株)による感染拡大が問題となっています。

 ワクチン接種が、進められており、7月30日現在で65歳以上の高齢者では1回目終了が86%、2回目終了は74%に達しています(読売新聞、令和3年8月1日)。

 そこで、現在、進められているワクチンがデルタ変異体にも有効かどうか、が問題ですがそのデータは限られています。

 英国では、わが国より少し早い時期にワクチン接種が開始されています。その英国で、ワクチン接種がデルタ変異体による感染をどの程度、抑えているかのデータが発表されました[1]。




Q.デルタ変異体とは何か?


・2020年12月にインドで最初にみられた。その後、2021年4月中旬よりインドで最多となった。2021年5月19日現在、世界43か国に広がっている。


・デルタ変異体とは、スパイク蛋白質の変異としてT19R, Δ157-158, L452R, T478K, D614G, D950Nが見られる場合である。


・これらの変異のいくつかでは、受容体結合蛋白質の主要な抗原領域(452および478)およびN末端ドメインの一部の欠失に対する免疫応答に影響を与える可能性がある。


・特にP681RはS1-S2切断部位にあり、その部位に変異がある株では複製が増加している可能性があり、これによりウィルス量が増加し、感染者が急増している可能性がある。




Q.英国におけるワクチンの接種の方針と状況は?


・ワクチン接種は高齢者、医療関係者より開始され、次いで若い世代へ接種が広げられている。この点は、わが国とほぼ同じ状況にある。




Q.本研究の方法は?


・2つの方法で検討した。


1)新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の症状に合致する人のワクチン接種後、症状があるがPCR検査が陽性であった人でワクチンの種類別に検討した。 


2)主な循環ウィルス(アルファ変異体)と比較したデルタ変異体により引き起こされた症例の割合をワクチン接種状況に従い推定した。


・ワクチン接種歴は、英国で行っている全国ワクチン登録簿(全国免疫管理システム)に拠った(2021年5月17日現在のデータ)。ただし、英国では、ワクチン供給体制が遅れたため2回目接種が最大12週間の間隔を空けざるを得なかった。




Q.バリアントの識別は?


・PCRによるスパイク遺伝子のSターゲット陰性の98%から100%はアルファ変異体と判明しているのでSターゲット陽性例だけをデルタ変異体とした。英国では、デルタ変異体は2021年4月のサンプルの72.2%, 5月の93.0%を占めている。




Q.対象として症例の背景は?


・10歳幅の年齢層、性別、人種、居住地域、海外渡航歴、職業、基礎疾患、病歴などを全て登録システムより明らかにした。




Q.本研究の要点は?


・ワクチン接種時のデータは92.9%で得られた。


・38,592人がワクチン接種者でありシーケンステストあり。


・アストラ社製ワクチン(ChAdOx1nCoV-19)、ファイザー社製ワクチン(BNT162b2)、16歳以上の症例をそれぞれ別個に解析できた。


・アルファ変異体:計14,837人(77.6%)。デルタ変異体:計4,272人(36.8%)。合計 19,109人。


・60歳以上の割合は全体の5.8%。16歳から29歳までは全体の36.1%、30-39歳は全体の28.1%。この群でのアルファおよびデルタ変異体数はほぼ同数。


・男女はほぼ同数。ほぼ全員が健常者であり、ワクチン接種以来の海外渡航歴ありは少数。


・1回目ワクチン接種後ではデルタ変異体に対しての有効性はファイザー社製で11.9%, アストラ社製で18.7%と有効性に差あり。


・2回目ワクチン接種後では、ファイザー社製の方がアストラ社製よりも有効性が高かった。ただし、アストラ社製ではアルファ変異体とデルタ変異体での有効性の差は小さかった。


ファイザー社製では2回接種後の有効性はアルファ変異体では93.7%、デルタ変異体では88.0%。アストラ社製はアルファ変異体に対しては74.5%, デルタ変異体では67.0%であった。




Q.本研究のまとめは?


図1が結果のまとめである。


図1:mRNAワクチンの種類別にみたアルファおよびデルタ変異体に対する有効性。

95%信頼区間を線分で示した。

出典:Bernal JL. et al. Effectiveness of Covid-19 Vaccines against the B.1.617.2 (Delta) Variant. New Eng J Med. This article was published on July 21, 2021, at NEJM.org.DOI:10.1056/NEJMoa2108891


 英国での2021年5月のデータですが、ワクチン接種が約3カ月遅れた現在のわが国の状況と良く似ています。高齢者へのワクチン接種が先に進んだ結果、発症者は明らかに少なくなっています。感染者は20歳代が最多で次いで30歳代となっています。

 この結果によれば、ワクチンの有効性は明らかです。しかし、有効率は100%ではありません。ワクチン接種後でも感染予防のためには厳重な注意が必要です。


参考文献:


1.Bernal JL. et al. Effectiveness of Covid-19 Vaccines against the B.1.617.2 (Delta) Variant

New Eng J Med. This article was published on July 21, 2021, at NEJM.org.

DOI:10.1056/NEJMoa2108891


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2022年9月26日 新型コロナウィルス感染症(COVID-19)に罹患し、治ってから、さまざまな症状に悩まされている人が多く診られるようになってきています。long COVIDとも呼ばれています。症状は多彩ですが、注目されているのが「慢性疲労症候群」や「筋痛性脳脊髄炎」という病気との類似性です。 最近のScienceには、査読中のプレプリント版[1]であるが、と断って、新しい研究の意義を解説して