top of page

No.23 2030年を目標としたWHOのリハビリ推進

  • 2019年12月16日
  • 読了時間: 3分

更新日:2023年3月15日


2019年12月16日


 Lancetは、英国から発行されているトップクラスの臨床医学雑誌です。WHO (世界保健機関)と協力関係を結んでいることもあり、WHO関連のニュースがしばしば掲載されます。

2030年を目標として各国がリハビリテーションの推進を行うよう提言しています。WHOのホームページでは、リハビリテーション2030(Rehabilitation 2030)を進めるにあたって特に地域での活動推進を勧めています。そのために各国語で記されたマニュアルが掲載されています。韓国語、中国語はありますが、残念ながら日本語のものはありません。


最近のLancet Respiratory Medicineでは、呼吸リハビリテーションの推進を特に取り上げています。




Q. WHOが掲げるリハ推進策


・リハビリを受けやすくするシステムの整備。

・リハビリの質を担保する。

・成果を挙げるようにする。




Q. 呼吸リハビリテーションを推進する理由


・息切れなど呼吸器症状を緩和させる。

・運動能力を向上させる。

・生活全般の質を向上させる。


特に途上国ではCOPD(慢性閉塞性肺疾患;肺気腫、慢性気管支炎)、肺結核後遺症のために息切れが強く就業できないこと、これにより国の生産活動が低下し、貧困に拍車をかけていると警告しています。




Q. 欧米の呼吸リハビリ・システム


 英米、オーストラリアの各国では最低6週間のプログラムを一人ひとりに組み、息切れなど呼吸器症状を緩和させる医療システムができ上がっています。


その目的は、運動能力を向上させる、生活全般の質を向上させるに加え、病気による不安感や鬱(うつ)状態を改善させるようにする効果が期待できます。COPDの国際的なガイドライン、GOLDでも呼吸リハビリの推進を勧めていますが、わが国では態勢は整備されておらず、本来なら重要な外来通院として継続していく呼吸リハの実施は実現が困難であるのが実情です。




Q. 呼吸リハの利点


・慢性呼吸器疾患があっても持てる能力をできるだけ回復させるという点では、投薬に比べて医療費が安上がりで効果が大きいという利点があります。




Q. 地域ごと、国ごとの特性を生かす


・運動療法に、ベトナムなどで行われている民族舞踊、インドのヨガ、中国の太極拳など地域の住民になじみがある運動を取り入れてみてはどうかと提案しています。


・スマートフォンや遠隔医療が進んでいる国ではその活用もあってもよいのではないか、しかし、それを用いた呼吸リハが確実に効果を挙げていることを検証していくシステムを構築すべきだとしています。


・途上国でこれを推進するには、適切で(appropriate), 受け入れられやすく(acceptable), 行きつきやすく(accessible), 手頃な(affordable) である条件を整えることにより労働力を向上し、生産力を高め、経済力を高める努力が必要だと述べています。その充実にはWHOの意を汲んで医療政策が反映されることが必要であると勧告しています。




 息切れが強いCOPDのような慢性呼吸器疾患により早期退職を余儀なくされた患者さんをたくさん診てきました。重症化すれば入退院の回数も多くなり、さらに活動度が低下すれば家族による介護が必要となります。

私たちは、自宅で継続実施できるような呼吸リハを組み入れた治療プランを進めたいと考えています。




参考文献:

1.Singh,SJ. et al. Exercise and pulmonary rehabilitation for people with chronic lung disease in LMICs: challenges and opportunities

Lancet Respir Med 2019, Published online October 16, 2019 https://doi.org/10.1016/S2213-2600(19)30364-9


※無断転載禁止

 
 

最新記事

すべて表示
No.344 肺と心臓の病気に関わるタバコ問題

2026年2月12日   呼吸器科医はタバコを天敵と考えているのだろう、昔、同僚の医師にからかわれたことがあります。彼の専門は、糖尿病でしたが彼自身が、ヘビー・スモーカーでした。当時の副院長は循環器内科が専門であり、タバコ嫌いで通っていました。「君が吸うのは、分かって吸うのだからしようがない。しかし、吸った煙は吐き出すな、他人に迷惑だ」と怒りをぶちまけたことを思い出します。  厚生労働省は、200

 
 
No.343 簡単な血液検査でCOPDの診断ができるか?

2026年2月4日  欧米では肺結核の治療方針が一段落した1950年代半ばから、呼吸器疾患の次の大きな課題はCOPDの早期診断と適切な治療に移りました。この時期にいわば暫定病名として提案されたCOPDの診断名が認知されてから70年以上になります。現在でも使われていますが、肺気腫、慢性気管支炎を統合した名称です。わが国では、慢性閉塞性肺疾患と呼ばれていますが、患者さんに病気を分かりやすく説明するのに

 
 
bottom of page