No.265 新型コロナワクチンの問題点

2022年10月3日


 第8波に備え、オミクロン株に対する5回目のワクチン接種が始まろうとしています。いったい、何回、ワクチン接種が必要となるのだろうか。多くの人たちの共通の不安だろうと思います。なぜ、くり返しワクチン接種が必要なのだろうか。以下に紹介する論文[1]は、その疑問に答えようとしたものです。臨床では最も評価の高い雑誌への掲載であり、ハーバード大学ウィルス学研究所に所属する著者が同大学で講演した内容が元になっています。




Q. ワクチンが感染予防に働く機序は?


・免疫系は大きく自然免疫系適応免疫系に分けられる。


自然免疫応答は、ウイルスに対する防御の最前線である。Toll様受容体などの細胞パターン認識受容体が病原体関連分子パターンを認識すると、急速に引き起こされる


適応免疫応答には、ウイルスエピトープの抗原特異的認識が関与する。適応免疫には、体液性免疫細胞性免疫という免疫系の2つの系統がある。


・新型コロナウイルス2(SARS-CoV-2) に対する体液性免疫には、SARS-CoV-2スパイクタンパク質に結合する抗体が含まれており、ウイルスを中和するか、他の効果的な機序を介して排除する


・SARS-CoV-2に対する細胞性免疫には、ウイルスに特異的なB細胞とT細胞が含まれ、これらは長期的な免疫記憶を提供し、抗原への再曝露で作用を急速に拡大する。

B細胞は抗体を産生し、CD8+T細胞はウイルスに感染した細胞を直接排除し、CD4+T細胞は免疫応答をサポートする


・SARS-CoV-2を含む急性ウイルス感染症の場合、感染の獲得を阻止するために中和抗体が重要である。

体液性および細胞性免疫応答の組み合わせが感染後のウイルス複製を制御し、重症化を予防する。

➡中和抗体をほとんど逃れる感染性の高いSARS-CoV-2変異株の場合、細胞性免疫は、重篤な疾患に対する長期的な防御に特に重要である可能性がある。


出典:Barouch DH. N Engl J Med 2022;387: 1011-20.より邦訳修正




Q. 現在のコロナワクチンは?


・世界保健機関 (WHO) 発表では、2022年5月6日の時点で300を超えるワクチンが前臨床または臨床開発段階にある。


・現在、使用されているワクチンは4種類の系統に分類されるが、わが国では以下のメッセンジャーRNAワクチンのみが使われている。

1)不活化ウイルスワクチン

2)メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン➡ModernaのSpikevax mRNA-1273、Pfizer-BioNTechのComirnatyBNT162b2。

3)アデノウイルスベクターベースのワクチン

4)アジュバント添加タンパク質ワクチン




Q. メッセンジャーRNAワクチンの副反応は?


・心筋炎および心膜炎は、BNT162b2およびmRNA-1273による合併症として報告されており、2回目の接種後に100万人のワクチン接種された思春期の少年および若い男性あたり52人から137人の割合で発生し、少なくとも10人の死亡が報告されている。


・2回目のmRNA投与後7日以内の心筋炎の発生率は、100万人・年あたり566件と報告されている。誘発性心筋炎のほとんどの症例は軽度であるが、重度の合併症が発生する可能性があり、心臓の磁気共鳴画像の変化は、回復後少なくとも3〜8か月間、かなりの割合の若い男性で持続することが報告されている。ただし、ワクチン接種なしにCovid-19に感染した場合に生ずる血栓症、心筋炎に比べればワクチン接種後に起こる方がはるかに少ない。




Q. ワクチンの耐久性は?


・BNT162b2およびmRNA-1273ワクチンは、優れた短期中和抗体反応と防御効果を誘発する。しかし、mRNAワクチンによって誘発された初期の高い血清中和抗体力価は、3~6か月で低下し、さらに8か月で低下する。半減期は約60日である。

➡その結果、ワクチン接種後の感染、すなわちブレークスルー感染が起こりうる。




Q. 変異株について?


・2020年の春、デルタ株は、SARS-CoV-2ゲノムに4つの変異を持つバリアントに急速に移行した。


・デルタの4つの変異とは対照的に、オミクロンにはスパイクタンパク質の30以上の変異を含む50以上の変異があり、その結果、ワクチン接種または非オミクロン変異体による以前の感染によって誘発された中和抗体応答から実質的に逃れることになり感染を起こす。


オミクロン系統は急速にサブバリアントBA.1、BA.1.1、BA.2、BA.2.12.1、BA.4、および BA.5に分裂した。




Q. オミクロン株に対する感染予防効果は?


・すべての初期ワクチンにより誘導された中和抗体はオミクロンとの交差反応性をほとんど示さない。しかし、追加免疫によりオミクロン中和抗体が大幅に増加する。


・これらの中和抗体力価の上昇と臨床効果は、3回目のmRNA免疫後4か月までに低下することが示されている。4回目のmRNAワクチン接種後、SARS-CoV-2オミクロンによる感染に対する保護は、わずか4週間で弱まることが報告されている。ただし、重症化予防はより長く持続する。


・オミクロンに対するワクチン誘導による中和抗体の効果減弱が早いのとは対照的に、ワクチンによって誘導されるT細胞応答は、オミクロンおよびそれ以前のバリアントに対して非常に良好な(>80%)交差反応性を示す。これらのデータは、SARS-CoV-2バリアントに対する細胞性免疫がほとんど損なわれていないことを示唆する。




Q. 新型コロナワクチンの将来は?


・Covid-19パンデミックは、超急性期から風土病期に移行しているようである。


・現在のCovid-19ワクチンは、以前のバリアントによる感染をブロックするよりも、オミクロンバリアントによる感染をブロックする効果が低い。しかし、重症化予防効果は大部分が維持されている。


・Covid-19ワクチンの主な目標は、長期間にわたり重篤な疾患、入院、および死亡を避けることである。


・したがって、Covid-19ワクチンとブースターの研究では、短期間の中和抗体力価だけでなく、抗体応答、記憶B細胞応答、および交差反応性T細胞応答の持続性という点での評価が重要である。




 新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)は、2020年、春ごろに4つの変異株に急速に移行してきました。2022年9月の現在、オミクロン株による第7波はやや沈静化しつつあります。本論文の著者は、将来、風土病化するだろうと予測しています。彼だけでなく将来予測する他の研究者の中にも同意見があります。特定の地域にのみ感染が広がるような形になる可能性がある、ということです。先進国ではワクチン接種率は70%以上が完全に受けていますがアフリカでは15%未満です。爆発的な感染拡大をくり返しており、罹患数が増えれば変異株を生みやすいことが問題となる、という意見は貴重です。途上国を置き去りにした感染対策は結局、廻り回って先進国に異なる株で戻ってきます。地球規模での長期対策が必要と言われる理由です。



参考文献

1. Barouch DH.Covid-19 Vaccines —Immunity, variants, boosters. N Engl J Med 2022;387: 1011-20. DOI: 10.1056/NEJMra22065


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2022年9月26日 新型コロナウィルス感染症(COVID-19)に罹患し、治ってから、さまざまな症状に悩まされている人が多く診られるようになってきています。long COVIDとも呼ばれています。症状は多彩ですが、注目されているのが「慢性疲労症候群」や「筋痛性脳脊髄炎」という病気との類似性です。 最近のScienceには、査読中のプレプリント版[1]であるが、と断って、新しい研究の意義を解説して