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No.61 新型コロナウィルス感染症の死亡に関連した因子


2020年5月14日


 武漢で新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のクラスター感染が起こった頃から死亡では急死が多く、その原因が心血管疾患にあるのではないかと推定されていました。冬季に多発するインフルエンザ感染でも流行年には心血管病変に関連した不整脈、心筋梗塞、心不全による死亡が多いことが報告されています。その理由は、ウィルス感染により血液凝固能が高まること、全身に炎症変化が及ぶこと、血管の内側を覆っている内皮細胞が広い範囲にわたり傷害を受けること、などが理由とされています。


COVID-19でも同じような変化が起こるのか、心血管病に影響を与える高血圧や、喫煙の影響、さらには高血圧の治療薬として広く用いられているACE阻害薬、ARBと分類されている薬物投与がCOVID-19の感染を誘導している可能性はないか、を疫学的に明らかにしたのがこの論文です。ACE阻害薬、ARBとCOVID-19の関係については、No.59「降圧薬が新型コロナウィルス感染症にかかりやすくさせるか?」をご覧ください。



Q. 研究の方法?


 COVID-19の診断が確定し、病院に入院して治療を受けた計8,910人を対象とした。うち、515人は入院中に死亡。8,395人は生存退院。調査の内訳は、女性が40.0%、白人63.5%、黒人7.9%、ヒスパニック6.3%、アジア人19.3%。

平均年齢:生存者48.7歳、死亡者55.8歳。



Q. 研究結果?


・死亡者に多い合併症の内訳は以下の通り。

 冠動脈疾患20.0%, 心不全5.6%、不整脈6.8%、糖尿病18.8%、高血圧25.2%、COPD 6.2%、現喫煙者8.9%, 元喫煙者16.1%

・服薬中の薬

 死亡原因と関係あるものなし


・死亡例が特に多い比率

 COPD+現喫煙者。

・死因と相関がある項目

 65歳以上、冠動脈疾患、心不全、不整脈、COPD

一般に、COPDの死亡原因は大別して、全体の1/3が肺炎などによる呼吸不全悪化、1/3は心血管病変、残り1/3は肺がんなど悪性腫瘍と報告されています。



 COVID-19の感染でCOPDの急性悪化(増悪)が起こり、呼吸不全が悪化。これに、COVID-19で増悪しやすく、さらに突然死の原因となる心血管病変、不整脈などが合併する複合的な悪化があるようです。

今回の調査ではCOPDと良く似た慢性呼吸器疾患の喘息は挙げられていません。他の調査結果でも同様です。喘息では心血管病変はCOPDほど多くないからです。

COPDの主な原因は長年の喫煙。この機会に禁煙を始められてはいかがですか。

高血圧の薬は種類に拘わらずリスクに入っていませんでした。

参考文献:

1.Mehra MR. et al. Cardiovascular disease, drug therapy, and mortality in Covid-19. New Eng J Med 2020; May 1.DOI: 10.1056/NEJMoa2007621


※無断転載禁止

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