2020年8月25日
COPD(慢性閉塞性肺疾患;肺気腫、慢性気管支炎)は、説明が難しい病気です。成人の約10%近くの頻度、と言われながら実際に、必要な注意や治療を受けている人は一部に過ぎません。病気の説明が難しい理由は、病気に個人差が大きいからです。症状は強いのに検査では異常がない人、逆にほとんど症状はないのに検査ではかなりの重症という人がいます。
ここでは、米国胸部学会が患者さんに症状、徴候をどのように説明しているかを紹介します。
Q. COPDではなぜ、息切れが起るのか?
・COPDではもっとも頻度が高い症状が息切れである。
・肺に空気を出入りするチューブである気道が狭くなっていることで息切れが起る。
・息切れがある人は、なるべく感じないようにするため活動を控えめにして感じないように自分で工夫していることが多い。
・しかし、このような対処法は、次第に日常生活の活動を下げるようになり、しかもこれに伴い息切れがさらに強くなっていく。
Q. 息切れを治すにはどうすればよいか?
・処方されている薬をきちんと使うこと。効きが悪いと思われるときには主治医に相談すべきである。自分の判断で中止してはならない。多くの場合では吸入薬の処方を変更することにより解決することが多い。
・筋力を高めるため運動習慣をつけること。
・息切れを抑えるような呼吸法を習得すること。
・筋力強化と息切れ改善の呼吸法の習得が呼吸リハビリテーションである。
Q. 主治医に相談すべき息切れとは何か?
・息切れがこれまでとは違ってきたときや、特に思い当たることがないのに悪化してきたときには直ぐに主治医に連絡すべきである。
・この時、伝えるべき内容は、いつからそのような息切れが始まったか、どのくらいの間、続いているか、どのようなことをすると悪くなるか、あるいは改善するか、の情報である。
Q. 疲れやすいはCOPDの症状か?
・疲労感はCOPDにみられる症状の一つである。疲労感は、活動的であろうと云う気持ちはあるが活動度がついていかないと云う状態であることが多い。
・何かをしようとすると少ししただけで疲労を覚える。すなわち、疲労の悪循環が起るようになることが多い。
Q. 自分のエネルギ―・レベルをどのように高めるか?
・疲れやすさを感じるようになれば、これを避けるために筋力増強のために運動習慣をつけるべきである。
・この時に大切なことは呼吸法を体得すべきである。
・そのためには呼吸リハビリテーションが大切である。
Q. どのような疲れやすさが問題か?
・いつもよりも疲労感が強く、運動がいつものようにできないようなら主治医に相談すべきである。
・疲労感がどのような状態で起こり始め、どのくらい続くか、何が悪化させ、どのように改善するか、を記録にとり受診の際に相談する。日誌を記録するのが良い。
Q. 痰はCOPDの症状か?
・痰がたくさん出るのはCOPDの症状である。
・ただし、粘液、痰は正常でも気道の湿度を保つために必要とされるものである。正常ではこれを飲み込んでいるのである。
・気道に感染がある場合、あるいは有害なものを吸い込むような刺激が加わると気道を守るためいつもより痰が増える。多くなった痰を気道の外に出す目的で咳が多くなる。
・それまでは透明か、白色であった痰は黄色か、膿性に変化する。この時は要注意である。
Q. どのようにして痰の量を減らすか?
・喫煙は痰を増やす。完全に禁煙をすべきである。また、電子タバコも同様に気道を刺激することが知られているので中止すべきである。
・受動喫煙や、その他、有害な汚染物質(ペンキ、クリーニング、洗剤など)や、強い香水もできるだけ吸い込まないように気を付ける。
・その上で、去痰薬や、抗生物質の処方が役立つことがある。
Q. 痰の変化を主治医に知らせる。
・COPDでは痰の量、色の変化は重要なサインであり主治医に知らせ、追加あるいは治療薬の変更が必要となることがある。
Q. 咳はCOPDの症状か?
・咳はCOPDで通常、認められる症状である。
・咳は一時的な悪化により増加した痰を気道から排出するために必要である。
・市販薬の咳止めを服薬すれば、痰が気道から排出されなくなるので気道感染が悪化しやすくなり肺炎を起こす危険性がある。
・しかし、少量の痰を気にして無理な咳をくりかえすことはかえって有害である。
Q. 咳をどのようにして止めるか?
・喫煙習慣が原因で咳がでることが多いので完全禁煙する。
・喉の刺激で咳が出る場合には、のど飴を利用しても良い。
・水分補給でも改善しない場合には、気管支拡張薬、去痰薬などの処方が必要。
・特に強い咳が続く場合に息切れがいつもより悪化することがある。この場合には、受診して処方薬を追加してもらう。
Q. どのような咳の場合に受診が必要か?
・多くの場合には少し咳が多くなっても問題はない。
・夜中の咳が強い場合、いつもより強く、あるいは回数が多く、気持ちが悪くなるようなことがあれば受診した方がよい。
COPDの治療が難しいのは、経過が長い場合が多く、その間に症状が悪化したり、改善したりをくり返すことです。採血や胸部レントゲン写真など検査データだけで判断することが難しく、患者さんの症状の変化や、肺の聴診所見などで判断せざるを得ないことが多いことも治療が難しい理由です。年余の間にゆっくりと体力が低下して次第に活動度が低下する場合、数日の間に症状が悪化する「増悪」が起る場合、さらには経過中に心筋梗塞や不整脈を起こしたり、肺がんの合併をみることもあります。治療は、これらに目配りしながら進めていきます。
日常生活での活動性をできるだけ低下させず、病気があっても仕事も生活も変わらずにしかも快適に続けられ、急な受診などが決して起らないようにしていくのが治療の目標です。
参考文献:
1.Lareau SZ. et al. American Thoracic Society, Information series. American Thoracic Society, Online version updated April 2019.
http://www.thoracic.org/patients
http://www.livebetter.org
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