No.268 乳幼児と高齢者に感染者が多いRSウィルス感染症とは?

2022年11月21日


 新型コロナウィルス感染症(COVID-19)がパンデミックとなり、感染症情報は新型コロナが中心となっています。カゼの多い冬季を迎え、インフルエンザとコロナの混合感染が心配されています。しかし、冬季に多くなる呼吸器感染症を起こすウィルスは他にもたくさんの種類があります。

米国CDC(アメリカ疾病予防管理センター)からのレポート[1]は、以下のウィルス性呼吸器感染症の情報を伝えています。


インフルエンザウィルスとヒトメタニューモウィルスは、2021年5月までは歴史的な低水準で流行していました。2021年4月、RSV(呼吸器合胞体ウィルス)の活動が増加しました。一般的なヒトコロナウィルス(新型コロナではない)、パラインフルエンザウィルス、呼吸器アデノウィルスは、2021年1月または2月以降増加しています。ライノウィルスとエンテロウィルスは、2020年6月に増加し始めました[1]。


感染者が増加していると報告されたRSV(呼吸器合胞体ウィルス)は乳児とCOPDなど慢性呼吸器疾患を持つ高齢者が感染すると重症化することが知られています。他方で、これに対する予防法、治療法についての開発が進んできたという情報が集まっています。


 ここでは最近の研究論文を参考にRSV(呼吸器合胞体ウィルス)による呼吸器感染の情報をまとめてみます[1, 2]。




Q. 乳幼児のRSVウィルス感染症とは?


・RSV感染症は、乳幼児期にさまざま呼吸器症状を引き起こすことがある。一般的に多い症状は、風邪のような症状であるが、細気管支炎、肺炎などを起こすことがある。


・生後6か月未満の乳幼児の感染では1~2%が重症化して入院治療が必要となる。




Q. 乳幼児でRVウィルス感染症のリスクが高い場合とは?


・未熟児


・6か月以下の乳児


・慢性肺疾患または先天性心疾患の2歳未満の子供


・免疫系が抑制されている子供


喀痰出が困難な場合な人と含む、神経筋障害のある子供




Q. RSウィルス感染児の症状は?


・鼻漏、食欲低下が先行することがある。


・咳は通常、1~3日後に発症する。咳が発症した直後にくしゃみ、発熱、鳴が起こることがある。


・非常に幼い乳児では、過敏性、活動性の低下、また無呼吸が感染症の唯一の症状のことがある。




Q.高齢者や慢性疾患のある成人の場合は?


・成人では感染しても通常、軽症または無症状である。症状は通常、鼻漏、咽頭炎、咳、頭痛、倦怠感、発熱などの上気道感染症に一致している。症状は通常5日間程度。


・成人で症状が重くなるハイリスクの人は、65歳以上の高齢者、COPD、息、心不全などがある場合。特にCOPD、息、心不全がある場合には重症化の可能性がある。


・免疫力が低下している成人。




Q. 診断の確定は?


・咽頭粘膜のぬぐい液の抗原検査か、あるいはPCR検査であるが通常の診療機関では実施していない。




Q. どのようにRSV感染を防ぐか?


・乳幼児に触れる前に十分に手洗いを行う。


・自分の目、鼻、口の粘膜に触るようなことは避ける。


・ドアのノブ、おもちゃ、テーブル表面など感染ウィルスが残っている可能性がある部分を清潔にしておく。


・咳、くしゃみの人と話すときは少なくとも2mは離れて行う。


・タバコ煙、電子タバコを吸入すると感染リスクが高まる。




Q. 成人に対するワクチン必要の状況は?


・RSV感染により重症者は、虚弱な高齢者、うっ血性心不全、脳卒中、慢性腎臓病、COPD、免疫抑制の状態にある成人で増加している。


・米国では毎年、65歳以上の成人の3~7%で発症し、約177,000人の入院と14,000人の死亡をもたらしている。診断の検査方法が標準化されていないこと、低レベルのRSV放出のために高齢者のRSV感染が低評価されている可能性がある。従って、RSVワクチンの開発が急がれている。




Q. ワクチン開発の問題?


・1960年代に幼児を対象にホルマリン不活性化RSVワクチンついて臨床試験を行った結果、RSVに曝露されていないワクチン接種を受けた乳児が自然状態でRSVに感染した場合、ワクチン副反応が生じた。これがトラウマとなり最近になるまでワクチン開発は持ち越された。




Q. ワクチン開発の現状は?


・RSVはAタイプ、Bタイプがある。臨床段階の二価RSVプレフュージョンFタンパク質ベース(RSVpreF)ワクチン候補には、RSV サブグループAおよびBの安定化プレフュージョンF糖タンパク質が含まれている。


・臨床治験の I~II、およびIIb相の研究では、成人におけるRSVpreFワクチンによる免疫により、RSV中和力価が大幅に増加した。ワクチンの安全性プロファイルは良好だった。


・現在の第IIa相試験で は、ヒトの実験的RSVチャレンジに対するRSVpreFワクチンの有効性を18〜50歳の成人で確認した。今後は、高齢者を対象とした重要な第III相の治験を実施予定である[3,4]。




COVID-19が問題となる前のウィルス性呼吸器感染症は、インフルエンザ感染が主な問題であり、流行の時期となる晩秋から冬季にかけ毎年、注意が喚起されてきました。

 ここで取り上げたRSV感染は、新生児だけでなく慢性の疾患をもつ高齢者でもハイリスクであることが知られています。高齢者が肺炎で死亡するリスクは冬季に極めて高くなります。ウィルス感染後の細菌感染による肺炎死亡が多いのではないかと推測されますが明確な臨床データはありません。米国では多数の死亡例が疫学統計として報告されています。ワクチンの臨床応用が近くなっており最終的な臨床治験が終了すれば現在のインフルエンザ・ワクチンのように定期的に接種することになると予想されます。




参考文献:


1.Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)

Weekly/July 23,202/ 70(29); 1013-1019.


2.Sockrider M. What is Respiratory Syncytial Virus (RCV)?

Am J Respir Crit Care Med 2015; 191, p.3-p.4.


3. Schmoele-Thom B. et al. Vaccine efficacy in adults in a Respiratory Syncytial Virus challenge study

N Engl J Med 2022; 386:2377-2386.

DOI:10.1056/NEJMoa2116154


4. Griffin MR. A challenge to Respiratory Syncytial Virus illness I adults.

N Engl J Med 2022; 386:2427-2428

DOI: 10.1056/MEJMe2205701


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