2019年12月30日
喘息も高血圧も頻度の高い慢性疾患です。
最近、臨床医学で一流と評価されている医学雑誌に高血圧を伴う喘息の治療の難しさを解説した論文が掲載されましたので、概要を紹介します。
米国では成人の喘息は全人口の約8%と推定されています。他方、高血圧は成人では3人に1人はいると云われ、心筋梗塞や脳梗塞など心血管疾患の原因として重視されています。わが国のデータもこれにかなり近くなっています。
Q. 高血圧と喘息が共存する場合の問題点
・喘息が重症になり肺機能が低下すると心血管疾患で死亡するリスクが高くなる。
・両方に共通する発症のリスクとして体質、ストレス、食習慣、運動習慣がある。
Q. 2つのタイプの喘息がある
・喘息は、タイプ2高値型(type 2-high)とタイプ2低値型(type2-low)に分類され、両者の割合はほぼ同数といわれている。
・タイプ2高値型は、幼児期に発症、若年者に多くみられ、高齢で重症化することがある。アトピー症状があり、炎症反応は好酸球の増加が特徴であり、吸入薬のステロイド薬などが効果的であることが知られる。
・タイプ2低値型は、成人発症が多く、高齢者でもみられ女性に多いという特徴がある。炎症反応は好中球やマクロファージにより起こり、重症化しやすいことが知られている。
Q. 高血圧と共存する喘息の特徴
高血圧から心血管病変が進行する理由は複雑ですが、この論文の中ではインターロイキン17(IL-17)という物質が増え、それが各臓器に傷害を与えるとしています。
すなわち、高血圧と喘息が共存する人ではこれにタイプ2低値型喘息が加わることになります。
悪化させる因子として以下を挙げています。
・環境因子:大気汚染など。
・免疫細胞の異常。
・体質:特有の遺伝子が関係している。
・ライフスタイル:食生活、運動など。
・ミクロビーム:体内の諸臓器の機能に有害、有益な細菌が関与している。
Q. 高血圧と共存する喘息の治療方針
・肥満が共通する危険因子。
・閉塞性睡眠時無呼吸症候群が共存することがあり、治療がなければこれが高血圧の原因となる。
・高血圧の治療薬ではβブロッカーに分類されるものは禁忌であり、喘息を悪化させる。
・推奨される降圧剤は、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB), アンギオテンシン変換 (ACE) 酵素阻害薬である。
喘息で高血圧の治療薬を服用している患者さんをたくさん診ています。
単に二つの病気が重なっているだけでなく、共通する発症理由があります。
治療では両者がうまくいくようにしなければなりません。
Comments