2021年1月9日
新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の流行は第3波の中にあり、効率的な感染予防の方法の目途は立っていません。
多くの感染症でかかりやすい人とかかりにくい人がいることは事実です。年齢、性別、栄養状態、免疫能や基礎疾患の種類などなど多彩な理由が考えられます。
ここで紹介する論文は、COVID-19のかかりやすさを遺伝子レベルで調査し、その結果、血液型の違いが感染にかかりやすさの一つであることを明らかにしたものです[1]
Q.これまでに報告されているCOVID-19の背景因子とは?
・男性は女性よりも死亡率が高い。
・高血圧、糖尿病、心血管疾患、糖尿病があるとかかりやすい。
・血栓を起こしやすい理由として血管の内側を構成する内皮細胞の異常が考えられるが相対的な役割は不明。
Q.本研究の方法は?
・COVID-19に感染し、重症の呼吸不全となった、1,980人の患者の協力。
・PCR法により診断を確定。
・対象は、イタリアとスペインにある7カ所の病院。
・比較のためイタリア、スペインから2,381人のCOVID-19感染がない人。
・イタリアで無作為に選んだ献血者、998人。このうち40人は過去にCOVID-19に感染し、抗SARS-CoV-2抗体が陽性だった。
・遺伝子型を決定するため、396人をイタリア及び987人をスペインからのボランティア献血者のデータを用いた。
・血液からDNAを抽出し、遺伝子検索を行った。また、血液型も調べた。
Q.研究の結果は?
・GWAS(ゲノムワイド関連解析法)では有意に重症呼吸不全となる2つの遺伝子座あった。3p21.31, 9q34.2
・すでに発表されているCOVID-19で呼吸不全となる症例では遺伝子座 3P21.31を構成する6つの遺伝子で構成されていた。
3P21.31(rs11385942)の遺伝子を持つ場合に重症となった。年齢、性別補正でオッズ比1.56, 95%CI 1.17-2.01
・ABO血液型:
A型ではCOVID-19で人工呼吸器装着となる重症呼吸不全となるリスクは他の血液型よりも高値であった。オッズ比 1.45(95%CI 1.20-1.75)
O型では保護効果があった。オッズ比 0.65 (95%CI 0.53-0.79)
・HLA分析:COVID-19の重症度との関連性なし。
Q.考察は?
・以前にCOVID-19とABO血液型の関連性が指摘されていたが本研究ではこれを裏付けた。
・このデータが基礎となり、中和抗体の開発や、血液凝固異常を防ぐ治療の開発に結び付く可能性がある。
新型コロナウィルス感染症では、感染者の一部が重症化して、集中治療室で人工呼吸器が必要になることが知られています。本論文は感染し呼吸不全が重症となった人たちが、健康人と比較してどのような遺伝子の差異が見られるかを明らかにしたものです。
A型が危険、O型は安全という簡単な結論が導かれた点がユニークです。
高齢者、肥満者、喫煙者、基礎疾患の多い人ではリスクが高くなることが判明していますが血液型で重症の呼吸不全を起こすかどうかの発見は貴重です。
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