top of page

NO.243 妊娠中の新型コロナウィルス感染症の注意点


2022年3月10日


 新型コロナウィルス感染症(Covid-19)の流行は、すでに長期間に及んでいます。妊娠あるいは授乳中の方でワクチン接種を迷っている方もいると思われます。最近の米国医師会雑誌、JAMAに妊婦および出産後の授乳期における、ワクチン接種の考え方についての論文が掲載されました[1]。米国CDC(アメリカ疾病予防管理センター)の見解を患者さん向きに解説したものです。




Q. CDCからの注意点とは?


・妊娠中、あるいは妊娠初期に新型コロナウィルス感染症に罹患するとハイリスクとなり、通常の治療に加えた治療が必要となることがある。


・米国CDCのデータによれば2020年1月22日より2021年11月29日の期間に、148,327人の妊婦が新型コロナウィルス感染症(Covid-19)に感染し、うち、241人が死亡した。

うち、121,973人の妊婦では病院からの情報があり、20.6%がCovid-19関連の状態で入院した。




Q. 妊婦がCovid-19に罹患するとどうなるか?


・妊婦では同世代の非妊婦と比較すると集中治療室、人工呼吸器、エクモが必要となる頻度が高い。


・Covid-19罹患による死亡率が高い。


・死亡のリスク因子は、高齢妊婦、肥満者、高血圧や糖尿病の合併症がある場合である。




Q. Covid-19の感染は胎児に影響を与えるか?


・早産、胎児の死亡リスクが高くなる。

➡CDC発表では、米国婦人で2020年3月から9月までのデータでは感染者のリスクとして早産は1.26%(273人/21653人中)であり非感染者では0.64%(7881 /1227,981)。




Q. 妊娠中のCovid-19ワクチンの接種は安全か?


・Covid-19ワクチンには生きたウィルスは含まれていないので妊婦、胎児が接種により感染することはない。


・ワクチン接種により早産を起こしたり、胎児および生下後の子供に有害事象を起こすことはない。


・Covid-19ワクチンは、妊娠前の接種が勧められるが、妊娠後では感染による母体および早産リスクを回避するため妊娠のどの時期でも接種が推奨される。


・CDCによれば米国では、18歳から49歳の妊婦ではわずか35%のみがワクチン接種済みに過ぎないと警告している(2021年11月27日、現在)。


・米国では、18歳以下では、ファイザー社製ワクチンのみが接種許可が出ている。

ジョンソン&ジョンソン社製のワクチンでは、妊婦、授乳中、50歳以下の妊娠初期では血小板減少、血栓形成、血小板減少症候群のリスクがあると注意勧告が発表されている。(注:わが国では使用されていない)。




Q. 授乳中のCovid-19ワクチン接種の安全性は?


・授乳中のワクチン接種は感染リスクを軽減するので推奨される。


ファイザー社製、モデルナ社製のmRNAワクチン接種により母乳中に抗体が検出されているので乳児の感染予防となる。




Q. 妊娠中および授乳中のブースター接種については?


・米国産婦人科学会では、妊婦および産後6週間まででは、追加のワクチン接種を勧めている。




CDCの見解をベースにわかりやすく解説していると思われます。このうち、最後のQに関するCDCの記載は以下の通りです[2]。


・授乳中ワクチン接種の安全性に関する理論的な懸念は、ワクチンを受けることの潜在的な利点を上回るものではなく、COVID-19ワクチン接種が授乳中に安全である。さらに、現在のデータでは、mRNA COVID-19ワクチンを受けた授乳中の人々が母乳中に抗体を有することを示しており、臨床的利益の程度はまだ知られていないが、乳児の感染に対する潜在的な保護効果を示唆している。




参考文献:


1.Walter K. JAMA patient page. Covid-19 and pregnancy. JAMA 2022; 327:790. doi:10.1001/jama.2021.22679


2.DeSisto CL, et al. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2021;70(47): 1640-1645. doi:10.15585/mmwr.mm7047e1. Zambrano LD, Ellington S, Strid P, et al. MMWR

1640-1645. doi:10.15585/mmwr.mm7047e1.

Zambrano LD, et al. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2020;69(44): 1641-1647. doi:10.15585/mmwr.mm6944e3


3.COVID-19 Vaccination Considerations for Obstetric–Gynecologic Care ACOG. Practice Advisory. December 2020. https://www.acog.org/clinical/clinical-guidance/practice-advisory/articles/2020/12/covid-19-vaccination-considerations-for-obstetric-gynecologic-care


※無断転載禁止

閲覧数:1,430回

最新記事

すべて表示

No.285 新型コロナウィルス感染症後にみられる間質性肺炎とは?

2023年10月3日 新型コロナウィルスによる肺の感染症で入院治療が必要となる重症呼吸窮迫症候群(ARDS)となった患者数は全世界で約6億人と言われています。 重症のウィルス感染がきっかけで間質性肺炎を起こすことは、HIV、サイトメガロウィルス、Epstein-Barrウィルス感染症でも知られています。 新型コロナウィルス感染後に、脳の霧(brain fog)といわれる状態や、息切れ、胸痛、動悸な

bottom of page