No.263 新型コロナウィルス感染症の後遺症

2022年9月26日


 新型コロナウィルス感染症(COVID-19)に罹患し、治ってから、さまざまな症状に悩まされている人が多く診られるようになってきています。long COVIDとも呼ばれています。症状は多彩ですが、注目されているのが「慢性疲労症候群」や「筋痛性脳脊髄炎」という病気との類似性です。

 最近のScienceには、査読中のプレプリント版[1]であるが、と断って、新しい研究の意義を解説しています[2]。これまでに見られない新しい研究結果であること、ユニークではあるが調査の対象例が少数例に過ぎないので大規模調査につなぐべきだと主張しています。プレプリントであるので内容の詳細は知らされていないことをお断りしておきます。なお、参考として「慢性疲労症候群」の現状を簡単に記します[3]。




Q.プレプリント版にみるlong COVID-19に関する発見とは?

以下は概要。


・long COVIDと診断された人に共通の症状は、持続する疲労感、労作時の倦怠感、認知機能、自律神経機能障害であるが共通する生物学的メカニズムは不明である。


・long COVIDを有する215人の解析を行った。機械学習法と組み合わせて血液分析から免疫学的な解析を実施した。その結果、新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)に対する免疫応答の上昇がみられた。さらに、非SARS-CoV-2ウイルス病原体、特にエプスタイン-バーウイルスに対する抗体応答においても同じ上昇がみられた。


・その他の免疫メディエーターおよび様々な種々のホルモンの分析ではコルチゾールのレベルが対照群と比較してlong COVIDで一様に低かった。免疫表現型データと機械学習モデルを対比すると、long COVIDのコルチゾールのレベルの低下が識別機能低下の予測因子となった。これらの新知見は、long COVIDの病態生理に関わる観察事項であり、将来のlong COVIDの客観的バイオマーカーの開発に役立つ可能性がある。


詳細な内容は以下の通り。

・long COVID患者のほとんどでは、激しい疲労感、脳の霧(brain fog)、その他の症状に苦しんでいる。本研究では、炎症、ブドウ糖代謝、睡眠サイクルなどを制御するのに役立つストレスホルモンであるコルチゾールのレベルが低いことが判明した。さらに免疫系に関わるT 細胞の変化の特徴は、SARS-CoV-2やエプスタイン-バーウイルスなど免疫系が正体不明の侵入者、病原体と戦っていることを示した。


・long COVID患者の血中コルチゾール値が正常値の約半分と低下していたが疲労や筋力低下などの症状は、このホルモンの減少に関連していることから説明可能だが、原因は不明である。コルチゾールの産生を制御する下垂体によって作られるホルモンであるACTHは、long COVIDでは正常なレベルであった。


・研究対象外のlong COVIDにおいて、低コルチゾールを治療する目的でステロイドの短期投与を試みたが改善効果は得られなかった。


・COVID-19から回復した多くのボランティアは、自分は健康であると述べたが、以前は普通にできたジムでのトレーニングは疲れすぎて再開できないことが判明した。すなわちlong COVIDの可能性が高い。


・Long COVIDでのコルチゾール値が正常値の約半分と低下。高度の疲労感や筋力低下などの症状は、ホルモンの減少に関連しているが原因は不明である。コルチゾールの産生を制御する下垂体によって作られるホルモンであるACTHは、Long COVIDグループでは正常レベルだった。


・long COVIDの血液サンプルでは、それらが発現する特定のマーカーによって認識できるT細胞の枯渇状態も判明した。さらに、血中に放出されたウイルスタンパク質に対する抗体のレベルを測定することにより、この研究では、エプスタイン-バーウイルスや、感染した細胞内で遺伝子が長期間休眠状態にある他のヘルペスウイルスの再活性化も指摘された。


・SARS-CoV-2 がlong COVID患者では残存している可能性がある。


・ほぼ同じ現象が筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群 (ME/CFS) の一部で認められており、エプスタイン-バーウイルスの再活性化、低コルチゾールおよび T細胞枯渇がみられlong COVIDとの共通性が問題となった。




Q. 慢性疲労症候群あるいは筋痛性脳脊髄炎とは何か?


・慢性疲労症候群 (CFS) は、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群 (ME/CFS) としても知られている。


・原因不明の持続性および再発性疲労を特徴とする複雑な疾患である。


・罹患した患者の神経系、免疫系、および代謝機能の根底にある共通の異常所見がある。ただし、十分な感度と特異度を備えた検査がないため、診断が難しい場合がある。


慢性疲労症候群 (CFS) に対して多くの治療法が試みられてきたが、治癒に至る確実なものはない。したがって、治療は対症療法であり、睡眠障害、痛み、うつ病と不安、記憶と集中力の困難、めまいと立ちくらみなどの一般的な症状と併存疾患の治療に焦点を当てているのが現状である。




Q. 慢性疲労症候群 (CFS)の一般的な治療は?


・現在までのところ明確で有効な治療方針は報告されていない。しかし、実際には相当数の患者がいることを見込み米国疾病管理予防センター (CDC) は、これらの各状態の管理に関する追加の患者アドバイスを提供している。

・治療のために、多くの投薬、食事、および行動介入が評価されているが、効果がないことが判明している。




Q. 慢性疲労症候群 (CFS)の予後は?


・一般的に不良とされているが他方で長期予後は良いという意見があり一定しない。




 多くのlong COVIDの論文が発表されていますが、オミクロン株感染でもデルタ株感染と同じであるかどうかは不明です。新型コロナウィルスSARS-CoV-2が体内に残存しているという論文も見られるし、ここで取り上げたように他のウィルス感染でも同じ現象がみられること、感染により免疫系統やホルモンの異常がもたらされたのではないか、という研究も見られています。これまで原因や、治療の手がかりがなかった慢性疲労症候群 (CFS)との類似点が見つけられたことはポスト・コロナへの朗報と言えるかも知れません。今後の研究結果を待ちたいと思います。




参考文献:


1. Couzin-Frankel J. Long Covid clues emerge from patients’ blood. Science 2022; 377: 803. https://www.science.org/doi/10.1126/science.ade4427


2.Klein J. et al. Distinguishing features of Long COVID identified through immune profiling. medRxiv. doi: https://doi.org/10.1101/2022.08.09.22278592


3.Smith ME, et al. Treatment of myalgic encephalomyelitis/chronic fatigue syndrome: A systematic review for a National Institutes of Health Pathways to Prevention Workshop.

Ann Intern Med. 2015; 162: 841-50.

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