• 木田 厚瑞 医師

No.57 新型コロナウィルス感染症の臨床症状の問題点


2020年5月7日


 発熱や咳がでて症状から新型コロナウィルス感染症(COVID-19)が強く疑われる場合、地域ごとに保健所などあらかじめ決められた場所でPCR検査を実施し、診断を確定するというのが現在の流れになっています。

 ここで紹介する論文[1]は、中国全土の552の病院から収集し、診断が確定した1,099人の臨床症状、検査データの解析です。発症しても発熱が無い場合や、胸部X線写真やCTでも異常が認められない場合があることを指摘しています。

また、患者の中にスーパー・スプレッダーと呼ぶ感染を広げやすい一群の人たちがいることを示唆しています。



Q.どのように研究を進めたか?


2020年1月29日までに中国、30省の552の病院で診断がPCR法で確定した1,099人の解析である。




Q.調査結果の概要。


平均47歳。女性は41.9%。経過で重症化した問題症例は6.1%(67例)、集中治療室での治療は5.0%。人工呼吸器装着2.3%、死亡例は全体の1.4%。

発熱は、入院時に37.5℃以上が43.8%, 入院期間中の発熱は88.7%。咳は67.8%, 下痢は3.8%、平均潜伏期間は4日(2-7日間)。入院時の胸部X線、CT所見でスリガラス陰影ありは56.4%、異常なし17.5% (非重症例の17.9%、重症例の2.9%で異常なし)。

血液中のリンパ球数は1500以下を減少ありとすると、83.2%で減少。

血小板数は15万以下を減少とすると、36.2%で減少。白血球数減少は33.7%。その他、CRP, GOT, GPT, CPK, Dダイマーの上昇が見られた。

平均入院期間は12日間。




Q.問題点となる結果は何か?


・入院時に37.5℃以上の発熱は、43.8%と半数以下だった。

・咳は入院期間中まで広げても67.8%に過ぎない。

 発熱、咳は典型的な初期症状とはいえない。

・入院時の胸部X線、CT所見で所見あり、は56.4%に過ぎない。スリガラス陰影の読み取りが難しいことも理由となりそうである。

・血液検査では、リンパ球数の減少は83.2%でみられた。


 COVID-19の確定診断の目的で実施するPCR検査は、現在、検査結果が出るまでに時間がかかります。その間は、自宅待機になりますが、独居の患者さんの場合もあり、難しい問題があります。PCR検査は、比較的厳密ですが、陰性判断が後日、陽性と判断されたり、その逆の場合もあります。

 本研究では、発熱、咳を伴わない症例が少なくないことを示しています。このことは軽い症状で本人も気付かないまま、友人か家族への感染がありうることを示唆します。また、推定ですが、中にはCOVID-19の患者の中にスーパー・スプレッダーと呼ぶ感染を広げやすい一群の人たちがいることが推定されました。感染防止という点では特に重要な情報でしょう。

 血液データで注目すべき点は、リンパ球数の減少です。寝たきりに近い低栄養の高齢者の肺炎では、リンパ球数が減少したり、血液凝固に関係するDダイマーの上昇をみることがしばしばあります。しかし、日常生活が普通の元気さの人でリンパ球数や白血球数が異常に低下する場合は、多くはありません。さらに減少しているかどうかは、直近のデータがあれば比較するのにとても便利です。血液検査でこの論文に示された項目のうちDダイマー以外は、小さな医療機関でも30分以内に検査結果が出ることが多いので、手軽に応用できるという点で参考になる点が多いと云えます。



参考文献:


1. W. Guan, W. et al. Clinical characteristics of Coronavirus disease 2019 in China N Engl J Med 2020; 382: 1708-20. DOI: 10.1056/NEJMoa2002032

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