2020年6月12日
新型コロナウィルス感染症(COVID-19)が合併症の多い、男性に多いことは中国、欧州、米国からのデータに共通しています。イタリア、ボンバルディアでは3月18日までに集中治療室で治療を受けた1,591人のうち82%が男性でした。
ニュ―ヨークでは5,700 人の重症患者では男性の死亡率が有意に高率でした[1]。合併症を中心に調べた中国からの報告では、重症例、1,590例の平均年齢は48.9歳で男性が57.3%を占めていました[2]。
合併症では、高血圧、16.9%, 糖尿病 8.2%でしたが、年齢、喫煙歴を補正するとCOPD (慢性閉塞性肺疾患;肺気腫、慢性気管支炎)のハザード比は2.681でした。
男性患者が多い理由も大きな研究課題ですが、男性に多い喫煙歴に焦点を当てた研究があります[3]。著者の属するCrystal研究室は間質性肺炎の研究では、歴史のある施設です。喫煙男性、COPDにCOVID-19が多いという問いに答えています。
Q. 研究の概略は?
・喫煙者、非喫煙者およびCOPDを区別した計267名に気管支鏡検査を実施(COVID-19の流行前に実施)。気管支、細気管支より生検標本、計744検体を解析。
・Covid-19を起こすウィルス(SARS-CoV-2 virus)が細胞に付着し侵入口となっている
アンギオテンシン変換酵素(ACE2)が生検標本のどの部位でどのくらいの頻度で分布しているかを明らかにした。
Q. 何が判明したか?
・ACE2は、太い気道(LAE)の方が細い気道(SAE)よりも分布が多い。
・SAEでは線毛細胞、基底細胞など広く5種の細胞群に分布していた。
・喫煙者の男性のSAEでは有意にACE2が多い。
・喫煙者にACE2が多い理由はmiR-1246 の発現と関係している。
・同じことを培養した細胞でも証明した。
研究者たちは、ACE2に結合したウィルスがその後、どのような機序を経て細胞の中に取り込まれ、増殖に関係するかの一部を明らかにしています。複雑な過程のどこを抑えればウィルスの増殖を防ぐことができるか、について候補物質を挙げています。
COPDの大多数は喫煙習慣で発症します。この論文では、COPDの発症の始まりとなる細い気道にACE2が増えること、さらにこれが男性の喫煙者に多いことを示しました。
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