No.336 期待される間質性肺炎の新しい治療薬
2025年12月1日 肺は、最大の容積を持つ内臓です。大人では、ほぼ、バケツ一杯に相当する容積を持つ臓器ですが、その内部構造は極めて繊細です。気道から取り入れられた空気は肺胞の壁を経て酸素を取り込み、体内で不要となった二酸化炭素を外に排出します。平均的な大人で肺胞の総数は約3億個。肺胞は直径約0.1mmから0.2mmの小さな袋であり、壁の厚さは約0.5μm以下と非常に薄く、その総表面積は、100平米以上。2階建て一軒家の床面積に相当します。これを使って死に至るまで、生涯、休むことなく呼吸運動を続け、身体の全臓器の機能を支えています。 間質性肺炎は、 肺胞の壁 を中心に発症する線維化を伴う炎症病変であり、肺胞の中に広がる細菌性肺炎とは区別されます。線維化を元の構造に戻すことは、例えていえば、もつれた蜘蛛の糸を元の構造に戻すような難しさがあります。 間質性肺炎 の効果的な治療法の開発は、肺がんの化学療法と並び呼吸器領域の最大のテーマといえるものです。 特発性肺線維症(IPF)は、多数に分類されている間質性肺炎を構成する病気の一つです。慢性進行
No.335 重症肺炎の治療 ―議論が続くステロイド薬投与の利点と難しさ―
2025年11月25日 晩秋となり咳や痰の症状をもつ人が急に増えてきました。日常の生活の中で発症する肺炎は 市中肺炎 と呼ばれています。癌や心筋梗塞など、他の病気で入院中に発症する 院内肺炎 とは治療に対する考え方が異なるので区別されています。肺炎は、このほかに、施設に入居中の人が肺炎になる場合の3つに分けて治療方針が立てられています[1]。 市中肺炎は、世界中で病気の罹患率および死亡率において主要な原因疾患です。市中肺炎の症状は、咳、痰、発熱、呼吸困難など多岐にわたります。発熱と湿性咳嗽を特徴とする軽度の肺炎から、呼吸状態が今度に窮迫した敗⾎症を特徴とする重度の肺炎まで様々です。また、ほぼすべての呼吸器疾患の症状と類似しているので区別する鑑別診断は治療の出発点として重要です[2]。 肺炎は医療が発達した現在でも治療が難しい疾患であり、しかも高齢者に問題点が集中しています。ここで紹介する論文は、従来から使い方が難しいとされてきた、重症肺炎に対するステロイド薬の使い方の問題点を指摘した論文[3]と、医療事情が不十分で治療での選択肢が少ないケニ
No. 334 喘息をどのように予防するか? ―遺伝と環境からみた生活面での注意点―
2025年11月21日 喘息は、呼吸器疾患の中ではもっとも、一般的にみられる慢性の気道疾患です。幼児期から高齢者まで、あらゆる年齢層の患者さんを含むことが特徴です。現在、 世界で推定2億6000万人 の患者数と言われ、個人的な苦しみだけでなく 罹患率、死亡率、経済的 な3点でも大きな社会的問題となっています。 夜中など救急の受診が間に合わない時間に強い発作が起こり、治療が間に合わず、死に至る「喘息死」が大きな社会的な問題となった時期がありました。 厚労省関連の情報をたどっていくと、その頃、臨床研究に関わった医療者たちによる努力の跡が読み取れます。以下は、その時代の情報の一つです。 「気管支喘息は、5〜10%の国民が罹患し、苦しんでいるアレルギー性呼吸器疾患である。喘息の病態解明と治療に関する進歩は、喘息が慢性の気道炎症を伴い、長期管理を必要とし、抗炎症薬として吸入ステロイドが有効であるということを明らかにした。(中略)。厚労省関連の研究班として平成18年度から「喘息死ゼロ作戦」の展開に着手し、本研究の申請者は「 喘息死ゼロ作戦...
.png)




















