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No.2 胎児の大気汚染被害が子どもの喘息を起こす

  • 執筆者の写真: 木田 厚瑞 医師
    木田 厚瑞 医師
  • 2019年8月23日
  • 読了時間: 2分

更新日:2023年3月15日

2019年8月23日


 肺は外界に直接、開放している内臓です。

タバコ煙をはじめ工場のばい煙など大気中の有害物質が呼吸器の病気を引き起こすことは古くから知られています。

最近、注目されているのは妊婦が大気汚染の被害を受け、その結果、生後に子供が喘息を発症する可能性が高くなるという研究論文です。




Q. 粒子状物質の有害性とは


 大気汚染による公害が被害を起こすのは子供とお年寄りで、咳や痰が多くなり、喘息症状を悪化させることは古くから知られてきました。

有害物質は粒子状物質(PM)と呼ばれマイクロメートル (μm) の大きさの個体や液体の微粒子のことを指します。1μmは1000分の1mmで、PM5やPM2.5と表現されます。

燃焼で生じた煤、風で舞い上がった土壌粒子(黄砂など)、工場や建設現場で生じる粉塵のほか、燃焼による排出ガスや、石油からの揮発成分が大気中で変質してできる粒子などからなっています。

これらは広い範囲の細い気管支の壁に付着し、傷つけ炎症を起こします。PM2.5以下の小さな粒子状物質でも同じように肺を傷つけることは想定されていましたが、測定方法が難しく深く分かっていませんでした。




Q. 超微小粒子が胎児の肺を傷つけるのではないか


 最近、カナダのグループが発表した研究は[1]、生活環境に浮遊する0.1μm以下の超微粒子を吸い込んだ妊婦では、超微粒子が胎盤を経由して胎児の血液中に入り、胎児の肺を傷つけ、それが生後6歳になるまでに喘息を引き起こすことを証明したというものです。

調査対象は合計約16万人の妊婦とその子供で6歳になった時点での喘息は約27,000人です。喘息の発症は、妊婦が妊娠6か月目の段階で吸引した0.1μm, 2.5μmや窒素酸化物の濃度と関係していることが判明しました。

妊娠6か月目のころは肺胞ができ上がる前の未熟な時期に相当します。また、これらの微粒子は主にジーゼルエンジンから排出されるガスに含まれています。




Q. 妊婦から胎児への影響とは


 妊婦が有害な微粒子、超微粒子を吸い込むと、細い気管支や肺胞の壁をすり抜けて妊婦の血管に流れ込みます。これが胎盤を通過し、成長発育の重要な段階にある胎児の肺を傷つけ、その結果、子供は6歳までに喘息になると考えられています。(図1)

このことは妊婦の受動喫煙が同じように将来、子供に喘息を起こす可能性を示唆する結果でもあり、注意しなければなりません。


(図1)

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図:Wright RJ. Am J Respir Crit Care Med. 2019;199:1448-を改変




参考文献:

1.Lavigne E.et al. Am J Repir Crit Care Med 2019;199: 1487-95.


※無断転載禁止


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