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No.17 気管支喘息の新治療に関連する発見

  • 2019年11月8日
  • 読了時間: 3分

更新日:2023年3月15日


2019年11月8日

 重症の喘息患者の痰を顕微鏡で調べると、シャルコー・ライデン結晶と呼ばれるひし形の構造物が見られることは医学生時代に習いました。痰が出しきれなくて苦しいという重症喘息の患者さんがたくさんいます。粘稠な痰が多数の細い気管支を詰めており、その中に不思議な結晶が見られます。この結晶物質が喘息の悪さの一因となっているらしいことは古くから知られていました。


最近、サイエンスに発表された研究内容[1]を、米国の有名な臨床雑誌が分かりやすく解説しています[2]。ここでは、後者を紹介します。




Q. シャルコー・ライデン結晶とは何か


 気道に詰まっているシャルコー・ライデン結晶は、痰を粘稠にして出しにくくします。これを治療で溶かすような吸入薬でもできれば新しい治療と成る可能性があります。

シャルコー・ライデン結晶は、19世紀に発見され、その名称は二人の発見者に由来しています。




Q. どのように研究を進めたか


 複雑なアレルギー反応が関係している重症の喘息、鼻炎があり鼻ポリープの人の協力による小さな組織標本を用いて遺伝子解析を行いました。シャルコー・ライデン結晶にはガレクチン10という物質が関係していることが分かっています。これを作り出すアミノ酸構造が結晶を作ることに関係し、この部分を人工的に変化させると結晶が作られないことを明らかにします。

さらに、マウスの肺にヒトから得たシャルコー・ライデン結晶を注入すると、肺の中に喘息と同じ炎症が起こることを確認し、ついで、構造を人為的に変化させたガレクチン10の抗体をナノボデイと呼ばれる特別の蛋白と結びつけたものを作成することに成功し、これがシャルコー・ライデン結晶を作らせないようにする新薬となる可能性を実験的に明らかにしました。




Q. シャルコー・ライデン結晶の形成に関係している科学物質


 シャルコー・ライデン結晶に見られる物質の遺伝子解析からガレクチン10という物質が鍵を握っていることが判明したのが出発点です。

ガレクチンは糖とタンパクが結合した化学物質で現在までに20種類のガレクチンが知られています。最近の別の研究論文ではガレクチン3がアルツハイマー型認知症の髄液中に増えていることが判明し、注目されています。アルツハイマー型認知症では脳の中に溶けにくい構造のアミロイドβと呼ばれる物質が沈着することで悪化することが知られています。




Q. 不思議な物質、ガレクチン


 ガレクチンに関連した糖タンパクはキノコに多く含まれています。さらに、寄生虫、昆虫、真菌(カビ)は溶けにくいキチンと呼ばれる物質と関係し、これがヒトを含む脊椎動物のアレルギー反応を引き起こすことが知られています。キチンはヒトを含む哺乳類にみられるシャルコー・ライデン結晶と対応しているのではないか、と考える研究者がいます。




 難治性の喘息についての研究が急速に進んで来ています。難治性喘息にはいくつかの異なる病型があることが分かってきました。抗体薬と呼ばれる新しい薬が難治性喘息の一部に極めて効果的ですが、治療の目安になる指標(バイオマーカー)がはっきりしていないことが問題です。


私たちは併設の臨床呼吸器疾患研究所で難治性喘息の臨床的な研究についても取り組んでいます。また、平松久弥子医師は、数年来、ガレクチン3が呼吸器、循環器疾患と臨床的にどのように関わっているか、の研究に取り組んでいます。




参考文献:

1. Persson EK, et al. Protein crystallization promotes type 2 immunity and is reversible by antibody treatment. Science 2019; 24: 364(6442).


2. Fahy JV. Et al. Making Asthma Crystal Clear. N Eng J Med 2019; 381:882-884.


※無断転載禁止



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