No.198 無症状の新型コロナ感染症が感染を拡大している

2021年8月23日


 新型コロナウィルス感染症(COVID-19)は、SARS-CoV-2と呼ばれるウィルスによる急性感染症です。緊急事態宣言が出てもCOVID-19の爆発的な感染拡大に効果が見いだせない、さらに徹底した人流抑制が必要だと全国知事会が提言しています(朝日新聞、令和3年8月21日)。

 感染した人が動き廻るので抑制すべきだと意見ですが、他方でCOVID-19に相当する症状がほとんどない無症候性感染者が、通常通りの通学や勤務をしていること人たちが相当数いるのではないか、と推定させる論文が発表されました[1]。掲載誌は、科学論文で評価の高いPNASの最新号です。




Q.無症候性感染者についてのこれまでの報告は?


・疫学的な調査研究の難しさがあり、無症候性の割合が4%と低いと主張する報告やメディア報道がある。他方で80〜90%に達するという報告がある。


・COVID-19パンデミック予測に関する米国疾病予防管理センターのガイドラインでは、無症候性の割合は10〜70%の広い範囲であり、正確なデータが乏しいことを示唆している。




Q.研究方法は?


・2020/01より2021/04までの利用可能なデータベース利用。全部で約11万編の論文が発表されている。研究開始時に、感染の1/3以上が無症候性であると仮定した。

多くの報告では発症前段階と無症候性の感染症を区別していないが明確な記載がある約350編の論文を解析した。




Q.研究結果は?


・若年者と高齢者では前者では無症候性多い。


・併存疾患なしはありより無症候性多い。


・真に無症候性は35%(30.7~39.9%)


感染症例の42.8%(95%CI: 5.2~91.1%)では症状なし


無症候性は子供では46.8%(95%CI:32.0~62.0%)、高齢者では19.7% (95%CI:12.7~29.4%)


・基礎疾患なしは併存症ありよりも無症候性感染が有意に多い。




Q.無症候性感染者となる理由などは?


・複数の臨床データでは、COVID-19の無症候性および症候性の感染におけるウイルス負荷は同様であり得ることが示されている➡ウィルス量が少ないので無症状となるのではない


・SARS-CoV-2の発症前の段階は非常に感染性が高く、この段階の人々からの感染が発生率の50%以上の原因である可能性がある


・感染性が症状発現後12日から14日でピークに達したSARS-CoV-1との顕著な違いである。




Q.本研究による新たな問題点とは?


・SARSと呼ばれたSARS-CoV-1では無症候性感染が報告されたが、他方、MERS症例では発生しなかった。

➡MERSコロナウイルス(MERS-CoV)は、2012年に中東呼吸器症候群(MERS)の原因として特定された

➡SARSコロナウイルス(SARS-CoV-1)は、2002年の終わりごろに始まった重症急性呼吸器症候群(SARS)の集団発生の原因として、2003年に特定された。


・症状がないか、あるいは軽症のCOVID-19感染のどちらも感染力ありという点で問題である。


・無症候性の過大評価は、SARS-CoV-2の毒性が低いという誤った認識を生む。他方、過小評価は、感染致死率や入院率などの主要な疫学的パラメーターを上向きに歪め、次善の政策決定を誤らせることになる。


インフルエンザでは無症候感染者は推定13〜19%以上である。SARS-CoV-1では13%。

本研究では、感染の42.8%(95%CI:5.2〜91.1%)が無症候性であった。

➡無症候感染者が多いことが対策を立てにくくしている。


・この率は、症状と、感染が検出可能またはRT-PCR検査の枠と検査に至るまでの時間枠に影響されている可能性がある➡診断の遅れがありうる。この間に他人に対する感染が起こりうる。


・COVID-19の症状の出にくさの遺伝的影響、環境リスク要因、性別による違い、および他の条件による交差反応性免疫も寄与している可能性があるが、症状の状態または重症度との関連を明確に示した研究はない。


・若者の間での無症候性SARS-CoV-2感染が多いことは、デイケア、学校、および大学の管理方針に重大な影響を及ぼす。


・若い個人の大規模なグループ間で密接かつ広範囲に接触している環境は、サーベイランスが症候性の症例だけに焦点を合わせている可能性があり、検出されない可能性のあるCOVID-19のスーパースプレッダーによるイベント感染の影響を特に受けやすくなる。

インフルエンザ、流行性耳下腺炎、麻疹は、多くの場合、より広範な地域社会におけるよりも学校や大学のキャンパスでより急速に感染が拡大する。


・学校や大学での、キャンパスでクラスター発生が多く報告されている。COVID-19の重症度は若者の間では低いが、検出されない大きな成分を伴うキャンパス内感染は、外で他の人々に対し容易に感染し、地域全体への拡散を促進する可能性がある。


・本研究の解析結果では、広範囲にわたるワクチン接種の対象を決める前に、無症候性感染のベースラインを明確にしておく必要がある。


・無症状感染を含めた感染者の接触追跡、検査、隔離を加速する必要がある。


・無症候性感染を検出する予防方針が必要。




無症状感染者については最近、小児で多い可能性は指摘されています(コラムNo.197)。

しかし、感染者の42.8%が無症状であるという推定は、1日あたり、5,000人発症と発表されていますが実際は、1万2000人近くの感染者がいることを意味することになります。

ワクチン接種率を高めること、さらに徹底した、隔離政策が必要となることを意味し、事態は極めて深刻です。




参考文献:


1. Sah P. et al. Asymptomatic SARS-CoV-2 infection: A systematic review and meta-analysis

PNAS 2021 Vol. 118 No. 34 e2109229118

https://doi.org/10.1073/pnas.2109229118


※無断転載禁止



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