2022年4月25日
鼻や口から吸いこんだ空気は、喉を通り過ぎ、左右に分かれた気管支を経て肺胞に至り酸素を取り込み、二酸化炭素を外に排出するガス交換が行われます。
食べ物を送りこむ食道と気管支が分かれている部分に繋がる喉頭は体のなかでも一番、細くなっており、複雑な神経支配でコントロールされている部分です。しかも、この部位の病気に対する診療の分担は耳鼻咽喉科と消化器科、呼吸器内科に加え診療内科が関わりあう複雑な役割分担となっています。
ほぼ中央部に位置する声帯がある喉頭が炎症で浮腫(むく)むと喘息とほとんど同じような症状を呈することがあります。誘導性喉頭閉塞と呼ばれる病気は、喘息と重なる部分もかなりありますが喘息の治療薬が奏功しない厄介な状態です。研究は遅れていますが、最近の雑誌に
誘導性喉頭閉塞(ILO)を分かりやすく分類できないか、という提言があります。
はじめにILOの概略を説明し[1]、筆者たちの考え方を説明します[2]。
Q. 誘導性喉頭閉塞(ILO)はどのような病気か?
・ILOの別名は声帯機能不全症
・喘鳴、呼吸困難、咳を起こす。
・発症の機序➡息を吐いたり吸ったりすると、声帯がカーテンのように開き、肺に空気が入る。健常者では、吸気時に声帯は外転(開いた状態)、呼気時に部分的に内転(閉じた状態)する。
・ILOの人では、声帯が閉じたままになったり、少しだけ開いたりすることがある。これは、運動中や誤嚥などで喉を刺激した後に発生することがある。その結果、喘鳴、呼吸困難や他の症状を引き起こす。
・男女ともに起こりうるが女性に多い。全年齢で発症するが小児と成人に多い。
Q. ILOの原因は?
・ILOの症状を引き起こす声帯の問題は常に発生するわけではない。「誘導性」という意味はそれが何か他のものに反応して起こることを意味する。ILOを引き起こす可能性のあるものは「トリガー」と呼ばれる。
・以下がトリガーとなりうる状態である。
・運動中➡運動が最大になった状態で起こりうる。
・刺激性の煙や化学物質の吸入。
・胃酸の逆流。
・後鼻漏(鼻腔からの粘液が喉の奥に沿って滴り落ちるとき)。
・ストレスや不安。
・明白な引き金が無い場合もある。
Q. ILOが起るときの症状は何か?
・呼吸困難。
・呼吸するときにゼイゼイする、あるいはヒューヒューという音がする。首の前方で最も大きく、胸壁では聴かれにくい。気管支拡張作用を有する吸入薬の効果がない。
・喉の圧迫感。
・発作と発作の間期には嗄声を訴えることがある。
・喉の圧迫感、嗄声、断続的な喘鳴および呼吸困難のある場合に疑われる。
Q. 診断方法は?
・診断のためには気管支拡張薬による負荷テストが有力な情報となる。負荷テストに反応しないことが根拠となるが、喘息が合併していることが多いので決め手にはならない。
・耳鼻咽喉科医による喉頭鏡検査が不可欠である。喉頭鏡検査で声帯の異常な内転が観察されたときには吸気性ILOと診断される。これにより誘発されていなければ診断がつけにくい。
Q. ILOの問題点は何か?
・発症の仕方が複雑➡今後の研究で病態が明確になれば細分化し、それぞれに応じた診断法や治療法が確立されていく可能性がある。
以上は[1]による。
Q. 提案された4つの病型とは何か?
著者らが提案する4型を図示したものが下図である。
