top of page

No.147 COPD発症の前段階とは何か?

  • 2021年3月1日
  • 読了時間: 3分

更新日:2023年5月10日


2021年3月1日


 COPD(慢性閉塞性肺疾患)に関する診断、治療などは、GOLDと呼ばれる国際的な委員会で厳密に診療ガイドラインに相当するものが作成されています。2021年版が発表されていました[1]。


COPDの診断は、スパイロメトリーと呼ばれる肺機能検査を用いて、喘息と区別するため気管支拡張薬を吸ったあとで1秒量 / 努力性肺活量(FEV1/FVC)が0.7以下の場合に診断されます。

しかし、胸部CTでは、肺組織が壊れた肺気腫の所見があるにも拘わらず、スパイロメトリーが正常という患者さんがたくさんみられます。厳密にいえば、この人たちはCOPDではありませんが、経過中に一時的に症状が悪化する「増悪」がしばしば、見られる患者さんがいます。以前にはCOPDステージ0という考え方がありました(下記のQ参照)。


 COPD前段階(Pre-COPD)という考え方が今、再検討されています[1]。

その理由は、現在、COPDの臨床診断として使われているスパイロメトリーによるFEV1が鋭敏に初期病変を検出しないので病変が進行した人にしか当てはまらないことです。




Q. COPDのステージ0とは何か?


・2001年、GOLD委員会のレポートではCOPDのステージ0(GOLD 0)を提案した。

スパイロメトリーは正常で、危険因子(喫煙)、症状(慢性の咳、痰)がある場合と定義

➡その後の追跡調査でGOLD 0は必ずしもCOPDに進行していくわけではないことが判明したのでGOLD 0 案は廃止。




Q.Pre-COPDとは何か?


・痰や咳を慢性症状として認める患者。

・スパイロメトリーで1秒量は同性の同年齢者よりも低いことと、肺拡散能検査が低値。

・胸部CTで肺気腫や細い気道の壁が炎症により肥厚している。




Q.Pre-COPDの特徴は?


特に慢性の咳、痰がある場合には以下のような特徴がある。


・GOLDの定義に合致した本物のCOPDに移行していく可能性が高い。

・気道には痰を過剰に産生する、すなわちムチン産生が増加している。

・胸部CTで気道の壁が肥厚している。




Q. 非閉塞性慢性気管支炎(NOCB)の提案の意味?


・Pre-COPDをCOPDの一つの病型とみなす考え方が英国グループにより提唱されている。

➡これらの異常が認められる場合には、非閉塞性慢性気管支炎(NOCB)と呼ぶことが提案された。これは古く、1965年に英国の研究者により提唱された概念であるが最近の病理学的研究とこれに対応する胸部CT所見などの対応などで新たに見直された。


・これは将来、COPDに移行していく可能性がある。これは、長年の喫煙などで重大な気道壁の損傷を起こしていることを示唆する。




Q. pre-COPDをどのように診断していくか?

 

以下の組み合わせで診断するのが妥当である。



出典:Han MK. et al. From GOLD 0 to Pre-COPD. Am J Respir Crit Care Med 2021; 203: 414–423.

Originally Published in Press as DOI: 10.1164/rccm.202008-3328PP on November 19, 2020より一部改変



 COPDの診療は、簡単ではありません。GOLDがCOPDの診断として取り決めているのはスパイロメトリーの検査で、定義された枠内に入る場合です。この場合、発症の背景として、長年の喫煙歴などがあり(喫煙歴がないCOPDもある)、症状が労作時息切れ、咳や痰が長く続き、類似の状態を示す喘息や気管支拡張症などの可能性が除外された場合にCOPDと診断します。しかし、実臨床では、COPDと診断される患者さんの数倍、その予備群と考えられる人たちがいます。この場合でも、「増悪」を起こしたときには、予備軍と診断されているにも関わらずCOPD確定の人たちと同じような重症となります。また、心血管疾患や肺がんの併存リスクも高いことが知られています。

 軽症のCOPDをどのように見つけ、悪化させないようにしていくかが、治療経過でもっとも大切になります。




参考文献:


1. Global Initiative for Chronic Obstructive Pulmonary Disease: 2021 Report.


2. Han MK. et al. From GOLD 0 to Pre-COPD. Am J Respir Crit Care Med 2021; 203: 414–423. Originally Published in Press as DOI: 10.1164/rccm.202008-3328PP on November 19, 2020


3.Definition and classification of chronic bronchitis for clinical and epidemiological purposes. A report to the Medical Research Council by their Committee on the Aetiology of Chronic Bronchitis

Lancet 1965; 7389:775-779. PMID: 4165081


※無断転載禁止

最新記事

すべて表示
No.346 社会的な背景が大きいCOPD                  ―コロンビア、英国にみる苦悩と対策―

2026年2月25日      COPDの発症は、遺伝的な負荷要因も指摘されていますが多くの未解決な社会的背景を特徴としています。これは喘息とは異なる点の一つです。  COPDの主な原因は喫煙と大気汚染と言われてきましたが、喫煙率が低下し、公害と騒がれた時代の大気汚染はわが国では今では改善してきました。わが国の統計ではCOPDは次第に患者数が減りつつあると言われています。しかし、私たちのような診療

 
 
No.344 肺と心臓の病気に関わるタバコ問題

2026年2月12日   呼吸器科医はタバコを天敵と考えているのだろう、昔、同僚の医師にからかわれたことがあります。彼の専門は、糖尿病でしたが彼自身が、ヘビー・スモーカーでした。当時の副院長は循環器内科が専門であり、タバコ嫌いで通っていました。「君が吸うのは、分かって吸うのだからしようがない。しかし、吸った煙は吐き出すな、他人に迷惑だ」と怒りをぶちまけたことを思い出します。  厚生労働省は、200

 
 
No.343 簡単な血液検査でCOPDの診断ができるか?

2026年2月4日  欧米では肺結核の治療方針が一段落した1950年代半ばから、呼吸器疾患の次の大きな課題はCOPDの早期診断と適切な治療に移りました。この時期にいわば暫定病名として提案されたCOPDの診断名が認知されてから70年以上になります。現在でも使われていますが、肺気腫、慢性気管支炎を統合した名称です。わが国では、慢性閉塞性肺疾患と呼ばれていますが、患者さんに病気を分かりやすく説明するのに

 
 
bottom of page