• 木田 厚瑞 医師

No.20 どのような症状があればCOPDを疑うか


2019年11月25日


COPD (慢性閉塞性肺疾患;肺気腫、慢性気管支炎)は40歳以上では約10%に見られるというほどありふれた病気です。しかし、早期に気づく人は少なく、病気がかなり進行して初めて受診する人が大多数です。

米国胸部学会は、早期受診を勧めるため患者ガイドを発表しています[1]。

ここではそれに沿って概略を説明します。




Q.典型的な症状は何か


長い階段を上るときに息切れがある。疲れやすくなり、軽い労働でも一休みしたいと思う、あるいは咳と一緒に少し痰が出る。これらの症状のどれかが数週間くらいの期間でも変わらずに認める場合に疑います。




Q.COPDではなぜ息切れが起るのか


呼吸とは、肺の中に空気を出し入れすることにより行われます。

空気の通路が気道です。正常な気道は枝分かれしながら次第に細くなっていきますが、COPDでは細い気道の広い範囲で炎症が起きて狭くなります。

呼吸は肺が収縮、拡張をくり返すことで行われます。収縮できるからこそ、次に十分な空気を吸い込むことができます。収縮は息を吐き出すことです。

ところがこの収縮が著しく妨げられた状態がCOPDです。収縮を妨げる原因は気道が狭くなってしまったことに加え、肺の弾力性が失われ正常に収縮できなくなったためです。つまり、肺が気道の変化に加えゴム風船が紙風船のように変化した状態がCOPDです。




Q.息切れをどのように治療するか


COPDの基本的な治療薬は細くなった気道を広げる作用をもつ気管支拡張薬です。これは指示されたように規則正しく使うことが大切です。これと併行して適度な運動を規則正しく行っていくことで薬の効果を高めることができます。

また、細くなった気道をうまく空気が出ていくように呼吸法の工夫も必要です。これにより息切れがあっても日常の生活に制限を加えることなく行動範囲がなるべく広がるようにしていきます。




Q.息切れに対しどのタイミングで受診するか


以前よりも息切れが強くなった、あるいははっきりとした理由がないのに強くなってきた場合には受診すべきです。




Q.疲れやすさも症状の一つ


疲れやすさは自分にしか分からない感覚ですが、これまでしてきた同じ仕事や運動でも感じる場合は、COPDの症状として見られることがあります。

疲れやすいと感じることは、日常の活動度が低下する原因となります。息切れが強くなり、その結果、必要とするエネルギーの消費が増え、疲れやすくなります。




Q.どのように自分の活動度を高めていくか


自分に合った、安全で、しかも効果がある運動を継続する必要があります。呼吸リハビリテーションを行う目的がここにあります。




Q.痰がでるのは問題か


気道の内面を一面に覆っている細胞には線毛と呼ばれる細かな構造があり、1個の細胞が200本以上も持っています。これが絶え間なく一定方向に動くことにより呼吸により肺の中に持ち込まれた有害な微粒子などは肺の外に運びだされます。線毛がうまく動くためにも気道の中は適度な水分と湿度が必要です。痰は肺の中に余分となった粘稠な水分や細胞の破砕成分などから成り立っています。少量の痰が出ることは健常な状態でも見られます。




Q.痰を観察する


透明や白色の痰は健常でも見られますが、色がついてくると問題です。特に膿に近い色のものは少量でも問題です。血液が混じっている場合は常に異常の可能性があり、糸のような血線と呼ばれるものは肺がんの疑いもあり、放置してはいけません。




Q.危険な咳と痰とは何か


COPDの治療中に悪化することがあり、これは増悪と呼ばれます。増悪の時の主な症状は、咳や痰がこれまで以上に強くなることです。軽症のCOPDでも増悪を起こすと重症となることがあり、重症のCOPDではいのちが危険な状態になります。息切れが強くなり、咳や痰が夜中にもでるようになった状態は増悪の可能性があり、受診を急ぐべきです。




COPDの診断率は、どこの国から発表されるデータもいずれも低値であり、早期診断が遅れています。最大の理由は、受診のタイミングが分かりにくいことですが、他方、受け入れる医療側の問題では、患者さんがカゼをひきましたと受診した場合には、カゼではなく、COPDや他の病気の可能性がないかを常に考えて診療すべきだと思われます。



参考文献:

1.Signs and symptoms of COPD. Patient Education/Information Series, American Thoracic Society, 2015.



※無断転載禁止



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