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No.229 気候変動の中で自分の健康を守る

  • 執筆者の写真: 木田 厚瑞 医師
    木田 厚瑞 医師
  • 2022年1月13日
  • 読了時間: 4分

更新日:2023年2月10日

2022年1月13日


 温室効果ガス排出量を2050年に実質ゼロにする目標が掲げられ、再生可能エネルギーを主軸にした「脱炭素社会」への移行が世界的規模で進められています。

 

気候変動は、平常の天候が、強い気温、雨量の変動が、ある地域にある時期から起こりやすくなった状態を指しています。

 気候変動は、温室ガス効果によると考えられています。温室ガス効果とは、二酸化炭素、メタン、二酸化窒素、オゾンなどが地球環境に増加し、地球の熱遮断、熱を逃がすことが処断され、その結果として地球の温暖化が進むと考えられています。


 米国胸部学会では、気候変動で健康にどのような問題が生ずるか、どのようなことに注意すべきかを一般向けに解説し、患者ガイドと呼ばれています。

 ここでは、気候温暖化と健康について解説します。




Q.気候変動の要点は何か?


・地球温暖化に関与する因子は多彩である。


・科学者の多くは、温暖化は100年前より始まったと解説している。その理由は、人間の活動が温室ガスを生み出したからだという。これらの活動とは、化石燃料、車、パワープラントなどである。


・気候変動の結果、気温の変動が大きくなり、雨量が増加した。熱波は激しくなりその頻度が増加。山火事、干ばつ、雷、洪水、台風の被害増加。


・気候変動は健康を害する。健康被害を防ぐための説明をするものである。


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出典:Sharon Chinthrajah, S. et al.Climate Change Health Effects and What You Can Do

Am J Respir Crit Care Med Vol. 205, P1-P2, 2022より一部改変




Q.気候変動で健康への影響に対して最も脆弱なのは誰か?


・誰もが健康上の問題を抱えているリスクがある。


・成長期の子供たちは、大人よりも体重あたり、より多くの空気を吸い、より多くの水を飲む。また、免疫システムが成長段階である。

屋外でより多くの時間を過ごし、多くの危険に曝露される危険がある。


・妊婦は、極端な温度変化に対して脆弱であり、脱水などにも弱い。極度の熱と大気汚染が影響を及ぼす。胎児の発育が遅れ、早産(早産)や低出産などが起こしやすくなる。


・高齢者は免疫システムが脆弱である。多くの場合、他の健康問題があり、運動範囲が制限されている。


・低所得のコミュニティでは、緊急時に避難するリソースへのアクセスが少ない。




Q.環境要因への曝露の増加がみられる場合とは?


・健康状態の悪化に関連する大気汚染。


・先住民を含む有色人種のコミュニティと移民では、健康格差がある。

これは構造的な人種差別であり、言語の壁を含むものであり、文化的障壁もあるかもしれない。


・特定の職業グループも環境要因への曝露の増加に直面する可能性がある。

働く場所と種類によるリスク。彼らが行う屋外での仕事に、異常気象が影響を与える可能性がある。屋内で働く屋内労働者では極端な熱が影響を与える可能性がある。




Q. 極度の暑さではどう対応するか?


・毎年春に、家庭のファン、空気を確認すること。エアコン、その他の冷却装置の場所を知る。それらが正しく機能していることを確認する。


・メンテの方法を熟知しておく。


・屋外または肉体的に過酷な仕事をしている場合。

頻繁に休憩を取り、十分な水を飲むようにする。


・大気汚染と山火事の場合や大気汚染が激しい屋外での激しい運動は避けること。


・屋外の大気汚染レベルが非常に高い場合は、窓やドアを閉めた状態とし、

エアコンユニットを使用する。


・高効率の室内空気清浄機の使用を検討する。粒子状空気(HEPA)フィルターを利用する。




 2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする目標があるとしても地球温暖化が今、住んでいる人たちの健康をどのように害することになるのか、の研究は必ずしも十分ではありません。

 患者ガイドとしてまとめられている内容も断片的であり、必ずしも十分とは言えません。

現在の温室効果ガスによる被害の実態が明確にならなければ2050年には全て解決するという希望的観測だけにとどまりそうです。




参考文献:


1.Sharon Chinthrajah, S. et al.Climate Change Health Effects and What You Can Do. Am J Respir Crit Care Med Vol. 205, P1-P2, 2022

ATS Patient Education Series


※無断転載禁止

 
 

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