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No.260 睡眠時無呼吸症候群とCOPDの合併症

2022年7月25日


 典型的なCOPDの症状は、階段や坂を上るときに息が苦しいという症状で気づかれます。他方、重症の気管支喘息では、夜中や明け方に悪化し、咳き込む症状が知られています。COPDが昼の病気なら喘息は夜の病気ということになりますが、実はCOPDも夜が危険な状態となることがあります。


 COPDと閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)の合併は古くから注目されてきました。英国のCOPD研究の大家として知られるFlenleyは今から35年以上前に、その関係を次のように警告しています[1]。


肥満を伴うCOPDでは睡眠時無呼吸症候群の合併があり、日中でも低酸素血症と高二酸化炭素血症を起こしやすいが、睡眠が深くなったREM睡眠でさらに悪化する。この状態は「オーバーラップ症候群」と呼ばれる。


・その機序は、睡眠中にガス交換に関わる肺内を流れる血流と気流のバランスが崩れる部分が多いことに加え、機能的残気量が変化するためだろうと推定されている。


低酸素血症が強いと心筋組織の低酸素を来し、心臓発作を起こす


・これらの状態は酸素療法を行うことにより改善されるが、酸素療法の開始で夜間睡眠中に高二酸化炭素血症は増強するが、継続するうちに次第に改善していくことが多い。



 現在では、オーバーラップ症候群に対し、夜間睡眠中にCPAP治療が選ばれることが多くなっています。

 ここで紹介する論文[2]は、オーバーラップ症候群に対し、処方されたCPAP治療を決められた時間以上、使用している場合にはCOPDが悪化して(増悪)、緊急受診となったり、入院となるようなことを回避できることを証明した論文です。




Q. オーバーラップ症候群とはなにか?


・COPDとOSAはそれぞれ、成人の一般人口の約10%に相当する。


・COPDで体重増加があり腹部膨満となると横隔膜が押し上げられOSAとなりやすい。


・OSAでは上気道の炎症に加え、COPDが併存すると下気道の炎症を伴うことになる。


OSAもCOPDも共通して心血管病変を悪化させる局所的、全身的な炎症反応と関わっている。オーバーラップ症候群では、心血管病変が死因となることが多い


・オーバーラップ症候群の特徴の一つは肺高血圧症を伴うことである。


・動物実験では、OSAに相当する慢性間歇性低酸素血症により生じた心血管系の病変は正常酸素により改善することが証明されている。




Q. COPDとOSAの相互の関係は?


現在の情報を総合した両者の関係は下図のように要約される[2]。



図: Ioachimescu OC. Am J Resp Crit Care Med 2022; 206:197-205のFig1を一部邦訳修正


多くのCOPDは肥満型COPDとやせ型COPDの二つのタイプに分かれることが知られている。両タイプのCOPDはいずれもOSAとの併存が注目されている。




Q. オーバーラップ症候群ではCPAP療法はどのような影響を与えるか?


これまでの研究ではオーバーラップ症候群では、CPAP療法を実施した場合と実施しない場合を比較すると、実施群のCOPDでは生存率が改善し、救急入院の回数が減少することが報告されてきたが、多数の患者比較での効果は不明であった。




Q.本研究の概要と結論は?


・米国で実施。地域が異なる100以上の医療機関でCPAP治療を実施している人、計6,810人のCPAP使用状況を、使用良好群を毎夜4時間以上、観察期間中の70%以上の日数、および中間使用群、使用不良群に分け、2年間観察した。


・34%が使用不良群と判明。ここに含まれる患者では、COPDの増悪回数が多く、他の併存疾患(高血圧、糖尿病、脳血管疾患など)の悪化があり、1年目では583弗、2年目では506弗の医療費負担が増加していた。


結論:オーバーラップ症候群でCPAP使用を順守しない場合にはCOPDおよび併存疾患の悪化を起こしやすく、毎年、500弗以上の医療費負担が多くなる。




Q. 本論文から学ぶことは?


・オーバーラップ症候群でCPAP使用をしている場合には使用が低くなる場合にはCOPDおよび併存する疾患の悪化が多くなると指摘されていたが、本論文は多数例でこれが正しいことを証明した。




 OSAとCOPDの併存は極めて頻度が高く、私たちが日常的に診る病気です。軽症から中等症程度に重症のOSAが合併していることが多いようです。35年以上も前にFlenleyが警告した心血管病変との合併もしばしば遭遇します。連携病院で冠動脈造影の結果、ステント治療を受けられた方も相当数になります。

 CPAP治療が効果を上げるためには、睡眠中の決められた時間を規則正しく継続することが大切です。本論文では、使用時間をかなり甘く、広くとってその使用時間での効果をみています。使用時間を厳しく設定し、守った人だけを調査すれば本研究の結果はさらに明確になる可能性があります。


 慢性疾患が重複してきた場合の管理の難しさをこの論文は指摘しています。悪化する場合には連鎖で悪化することが多くなることをこの論文は指摘しています。




参考文献:

1.Flenley DC. Sleep in chronic obstructive lung disease. Clinics in Chest Medicine 1985; 6: 651-661.


2.Ioachimescu OC. et al. Chronic obstructive pulmonary disease–obstructive sleep apnea overlap: More than a casual acquaintance

Am J Resp Crit Care Med 2022; 206:197-205. Originally Published in Press as DOI: 10.1164/rccm.202204-0695ED

on May 11, 2022.


3.Sterling KL. et al. Impact of positive airway pressure therapy adherence on outcomes in patients with obstructive sleep apnea and chronic obstructive pulmonary disease

Am J Respir Crit Care Med 2022; 206:197–205. Originally Published in Press as DOI: 10.1164/rccm.202109-2035OC on April 18, 2022.


※無断転載禁止

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