2022年9月29日
新型コロナウィルス感染症(COVID-19)では、デルタ株が主であったころは、重症者が多くなり、ベッド数が限られた構造で運営している集中治療室では対応しきれなくなり、医療崩壊となりました。重症COVID-19では、肺以外の多臓器の傷害が特徴の一つでした。
ここで紹介する論文[1]は多臓器に傷害が起る原因を説明する仮説です。
特に、細胞傷害性アミロイド (Aβ)の産生が起る可能性を説明しています。アミロイドは電子顕微鏡で観察すると微細な線維状の物質で肺などでは慢性炎症が持続すると沈着することがあり、アルツハイマー型認知症では脳に沈着する物質として注目されています。
Q. 感染に伴い多臓器に見られる症状と変化は?
(図1) Arbov E. et al. Am J Respir Cell Mol Biol 2022; 67: 275–283.を一部邦訳修正
新型コロナウィルス(SARS-CoV-2) 感染に伴う各臓器への潜在的なメカニズムを図示(図1)した。
これらのメカニズムが相互作用して EOD を引き起こすかどうか、どの程度、またはどのような機序で発生するかは現在不明である。将来の研究の情報源として仮説が立てられている。
( 1 ) SARS-CoV-2 は空気感染によって肺に感染し、肺炎を含むウイルス性肺感染症の症状を引き起こす。
( 2 ) 肺への SARS-CoV-2 感染は、制御不能な炎症誘発性反応、ミトコンドリア機能障害、およびおそらく細胞傷害性アミロイド (Aβ) の産生を引き起こす。
不明点が多いが、将来の調査の情報源として仮説が立てられている。これらの末端器官には、( a ) 心血管系、( b ) 内分泌系、( c ) 胃腸系、( d ) 呼吸器系、( e ) 脳/中枢神経系、および ( f ) 腎系がある。
COVID-19 感染の長期後遺症では、これらのメカニズムのどれが同時に存在するか、またはそれらのメカニズムが重複しているか、および/または相乗的に作用しているかは現在不明である。
Q. 具体的にどのような臓器にどのような変化が生ずるか?
・心臓血管系:コロナウィルス、SARS-CoV-2 が 受容体ACE2 への結合することにより、心筋炎、急性心筋損傷、静脈血栓塞栓症、凝固、不整脈のリスク増加など、さまざまな形態の心臓損傷を引き起こす。
・内分泌系:糖尿病は、COVID-19 患者にとって非常に重要な合併症である。高血糖は ACE2の発現に影響を与え感染しやすくなる。新型コロナウィルスと似たSARS(サーズ) では視床下部 - 下垂体への関与が報告されている。
・胃腸系:発症の初期では多くの患者が吐き気、嘔吐、下痢、または腹痛を訴えている。腸バリアの完全性や腸内微生物叢を喪失すること、および便中に新型コロナウィルスの存在が報告されている。
・呼吸器系:気道、肺実質、肺血管、呼吸神経障害はすべて COVID-19 の特徴である。重度のCOVID-19 で最も多い臨床症状は、急性呼吸窮迫症候群および重度の肺炎と一致する急性呼吸不全である。
・脳および中枢神経系:一部の患者では、せん妄および精神状態の変化、脳卒中
脳出血、記憶喪失、脳炎、さらに重症例の一部では急性播種性脳脊髄炎がみられる。また、多くの患者が ICU に入院し、その結果、せん妄などを伴う集中治療後症候群に陥るがこれも後遺症を残すことが知られている。
・腎臓:COVID-19 患者の腎臓組織学に関するデータはほとんどないがタンパク尿、血尿、腎機能障害が報告されている。COVID-19 の 51 人の患者を対象とした研究では、100% がコンピューター断層撮影スキャンで腎臓の異常を呈したという報告がある。
新型コロナウィルス感染症は、急に発症し、ある程度の日数が経過すれば体内からウィルス量が減り、回復していくと考えられていた時期がありましたが、一部の人では後遺症を残すlong COVIDとなることが判明してきました。多彩な症状を呈することが判明しています(コラムNo. 258, 263参照)。
新しい病気の解明は多くの研究者の興味であり、急速に進みつつあります。
ความคิดเห็น