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No.369 COPD治療で難しい増悪の判断

4 時間前
読了時間: 7分

2026年9月9日


 気候の変わり目の時期には咳や痰、息切れなどの呼吸器症状で受診する方が多くなります。アレルギーだけでなく、インフルエンザなどウィルス性の感染症も増えるのでしょう。COPDの増悪も気候の変わり目に多くみられます。

 COPDはタバコ病と呼ばれた時期がありました。現在では喫煙者の2割余りが発症するだけといわれ、中高年男性に多いタバコ病というみかたは、適切ではありません。発症しやすい人がいて、しかも、一部は幼少時からすでに発症しているというデータがあります。全貌がいまに至っても明確にとらえにくい病気であることがその特徴であり、また長期の治療を難しくする点です。


 COPDの典型的な症状は、咳や痰、息切れですが、これらの症状も訴え方により病状の正確な把握が難しく、かつ個人差が大きいことが知られています。COPDの経過で、注意しなければならないことは以下の3点にまとめられることが知られています。


1)経過中に起こる肺炎など感染症で急に病気が悪化する➡増悪と呼ばれる。

2)心血管病変が多い。なかでも働き盛りにおこる心筋梗塞は大問題である。

3)経過中に肺がんの合併が多い。


 COPDの病気を説明する場合には、つねに、この3点を回避するための注意情報を伝えておくことが必要です。

 米国胸部学会からの最近のCOPDに対する見解が発表されていますが、現行の検診として実施されている肺がん検診は、適切なアプローチとはいえない、むしろ、その前段階となる「COPD検診」を実施する方が、費用対効果が高い、という意見は極めて納得できます。


 COPDでは、予防や治療法を信頼できる先端情報に基づき進めるためのガイドラインがあります(GOLD日本委員会: GOLD Japan Committee、https://www.gold-jac.jp)。


 ここでは、COPDの発症、増悪に関わる注意点[1]を取り上げます。




Q. わが国におけるタバコ被害の問題点とは?


 都医ニュース(令和8年8月15日版)に東京都医師会の蓮沼 剛医師が分かり易く解説している。以下が要約である。


・わが国の喫煙率は、長期的に低下しているが喫煙は予防可能な最大の健康因子の一つである。


・受動喫煙被害も看過できない。


・わが国には、たばこ事業法および日本たばこ産業株式会社法(JT法)があり、国の財政収入源となっている。国は現在もJT株を保有している。


・国際的には、WHOたばこ規制枠組み条約(FCTC)は、たばこ規制枠組み条約(FCTC)として、タバコ対策を公衆衛生政策として推進することを求めている。特に、タバコ産業の利害から政策決定を保護することは条約の重要な原則である➡わが国も締約国として、その理念をより積極的に実現していく必要がある。

➡喫煙はCOPDの増悪原因としても重要である。




Q. COPDの増悪の症状とは何か?


・以下の COPDの主要症状の一つ以上が14日以内の期間で急激に増悪(悪化)してくることを特徴としている。

 ➡ 咳嗽(頻度および重症度の増加)

 ➡ 痰の変化と増加と(量の増加および / 喀痰産生(量の増加やまたは性状の変化)

 ➡ 呼吸困難(レベルが上がる、または活動量が減る)


COPD増悪に伴う徴候には、頻呼吸(呼吸数が多い:正常呼吸数は1分間に12-20回)、頻脈(脈拍数が1分間に100以上)、低酸素血症(動脈血酸素分圧が60mmHg以下)、ガス交換障害(肺胞と毛細血管間で酸素の取り込みや二酸化炭素の排出が正常に行われない状態などがある。

 ➡増悪は気道および全身の炎症と関連する。多くの場合、気道感染(細菌性、ウィルス性)、大気汚染、その他の急性気道障害によって引き起こされる。


・COPDの増悪は、COPDそのものの進行に寄与するため、COPDの進行において重要な出来事である➡健康状態の低下、入院と死亡率に関係する➡したがって、悪化は治療介入の重要な標的となる。

 ➡問題点は、多くの研究にもかかわらず、将来の悪化リスクを示す信頼できるバイオマーカーは特定されていない。それゆえ血液生化学検査のみで診断できない➡これらの理由から「増悪」の診断は容易ではない。




Q.  COPDの増悪に関する研究は?


・本研究(ECLIPSE観察研究と呼ぶ)では、3年間にわたって悪化を追跡した。軽症から重症に至る(すべてのGOLD段階)における将来の悪化リスクの最良の予測因子は、過去12か月間の患者回想に基づく悪化の既往であった➡肺機能検査、血液生化学検査での予測ができない。


・COPDの一部には、頻繁な増悪を起こす一群の患者がいる。

 ➡悪化リスクが高い人の特徴は、「12か月間に2回以上の中等度または1回の重度の悪化があるCOPD患者」と定義されている。

 ➡これらの患者記憶に基づく基準はCOPD治療ガイドラインに組み込まれ、多くのCOPD臨床介入試験の包含基準として採用されている。




Q.増悪回数の評価は?


➡従来の研究結果では「増悪」が起こる可能性の推定は、今後の12か月間に限定されており、より長い期間の予測研究は実施されていない。

➡しかし、「増悪」は不規則な事象である➡特に頻繁な悪化因子の悪化率は完全に安定しているわけではない。


・ECLIPSE研究では、追跡開始の最初の2年間で頻繁に悪化があったCOPDにおける呼吸器ウイルス感染症は悪化の主な引き金であった➡カゼが増悪のきっかけとなることが多い。


・ウイルスの疫学(新型コロナウィルスあるいはインフルエンザの種類など)は季節ごとに数年にわたって異なる場合がある。

 ➡COPD患者は、2年間に2回と標準治療群を行ったグループでの悪化率は、悪化の既往歴から予測されるよりも常に低くなっている。さらに、治療時間の経過とともに悪化率も低下している。


・12カ月間で1回の悪化でも肺機能の低下と関連していることが報告されている➡データベース研究で、12か月間で悪化の増加が死亡率の増加と関連した。

 ➡2026年のCOPDの診療に関するGOLD更新では、中等度または重度の悪化が12カ月間で1回という提言が発表された。

 ➡GOLDはまた、中等度または重度の悪化が1回あれば治療内容をアップすることが適切と推奨している。

 ➡本論文では、さまざまなCOPD悪化率カテゴリーの将来の悪化予測における識別的パフォーマンスと臨床的有用性を研究した。

 ➡COPDの多くの患者では、この期間に何回、悪化治療を受けたかの記憶に頼ることは難しい可能性がある患者に2年間の増悪の履歴を正確に思い出させることは困難である。

 ➡しかし、これにもとづきCOPD患者の悪化の想起を確認することが重要であり、つねに診療録には正確な記録が記載されるべきである。

 ➡本研究では、12か月のリコール期間がその後の事象を予測できることが判明した。

 ➡悪化リスク評価に2年間の期間を設けた場合、悪化率を確認するために正確な医療記録が必要となる。

 ➡ COPD治療では、増悪の検出や未報告・未治療の事象の認識を高める患者日記が有効である。少なくとも過去2年間にわたる増悪の回数とその重症度を記録し、現在および将来の治療に参考とすることが大切である。




 本論文[1]は、現在の国際的なCOPDの診療ガイドラインでのウィークポイントを示唆しています。多くのCOPD治療薬の治験研究は、ガイドラインに沿って実施されています。その評価基準では過去2年間の増悪回数の正確な把握が大切であることを提言しています[2]。

 軽症の増悪は、カゼ症状と類似しています。患者さんごとにこの1年間でカゼによる治療を行った回数およびその重症度、治療薬の種類とその内容を参考に次の1,2年間の治療効果予測を行うという提言は極めて納得できる提言です。

 COPDと診断された後の継続治療では、増悪の予防、早期発見、早期治療は病気の進行や死亡に寄与するため、できるだけ早く患者を治療する必要があります。すべての「増悪」も正確な把握が重要なのは、特に悪化が回復しない場合、肺機能の低下に寄与する可能性があるからです。増悪は心血管リスクの増加に関係するので入院が必要な増悪は、次回の増悪予防には十分、注意する必要があります。想定される患者さんでは、症状や悪化の影響について専門の医療スタッフによる教育を続け、増悪の回避・予防、早期発見とその適切な治療を継続する必要があります。私たちは患者さんに日誌の記録を勧めています。


 COPDの「増悪」に関するさまざまな定義が提案されていますが、最終的には、患者さんが悪化の症状が出ていることを認識し、早期に受診し、治療を受けることに依存しています。

 COPDの治療中のほとんどの患者さんでは、カゼが治りませんと受診されることが多いようです。「増悪」を回避し、早期に治療を開始し、短期間に安定した状態にもっていくことがCOPDの治療では極めて大切であることをこの論文は改めて主張しています。また、本論文に対する編集者のコメントも極めて同調できるものです[3]。




参考文献:

 

1. Bhatt SP, et al.

Discriminative perfor­mance and clinical utility of COPD exacerbation categories for predicting future exacerbations.

Am J Respir Crit Care Med. 2026; 212: 1721-1729.

https://doi.org/10.1093/ajrccm/aamag118


2. Wedzicha, JA.

Every exacerbation counts: shifting the dial for future exacerbation risk, Am J Respir Crit Care Med. 2026; 212: 1675–1676.

https://doi.org/10.1093/ajrccm/aamag296


3.Exacerbation of COP:management.

Up to Date. https://www.wolterskluwer.com/en/solutions/uptodate


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