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No.374 COPDの新しい治療薬ニュース: アステゴリマブの効果

6 時間前
読了時間: 8分

 2026年11月6日


 呼吸器疾患のさらに新しい治療薬が待たれる領域は、肺がん、間質性肺炎あるいは肺線維症、COPD、喘息などが挙げられています。これらは、いずれも私たち呼吸器内科医が診療とする重要な疾患ですが、対する治療薬は、一部の患者さんには確かに効果が期待されますが、全ての患者さんについては必ずしも十分といえる段階ではない、というのが多くの専門研究者の意見です。

 この問題と並行して検討されるべき問題点は、臨床医サイドでの判断であり、どの状態の病気に対し、どの薬が最も効果を挙げるかの見極めが十分ではない、つまり判断として用いる検査項目が十分ではない、ということも挙げられます。


 COPDは、タバコ病として知られる時代がありました。しかし、現在では、喫煙が理由で発症するCOPDは、2割程度と言われ、しかも中年から高齢男性だけに多い、慢性の呼吸器疾患ではなく、胎児期にすでに起源をもつ慢性疾患という意見もあります。病気の原因、経過に関する研究成果が多くなり、病気全体の見直しが進んでいることも治療のゴールを見えにくくしている理由ともなっています。


 COPDは、研究の歴史から咳、痰が多い、慢性気管支炎と、息切れを主な症状とする肺気腫に分けられてきました。しかし、胸部CT撮影など、画像診断技術が進むにつれ、両者の区分はむしろ不明確になってきました。慢性気管支炎、肺気腫の両者は、発症の初期は細い気管支(細気管支)から始まる点は共通していますが、その治療は両者を区別して行うには至っていません。また、現在の治療薬に追加すべきか、あるいはこれらを置き換える新しい薬となるのかの、見通しも十分ではありません。


 最近、COPDの新しい治療薬アステゴリマブについて検証した論文があります。ここでは、評価の高い雑誌に紹介された治療成績について述べた論文 [1]とこれに対する編集者のコメント[2]を紹介します。


 COPDの治療は、慢性安定期に行うべき薬物治療と急に症状が悪化した増悪期に分かれます。ここで、慢性安定期の治療目的は、増悪をいかに回避するか、という点に置かれています。

問題点を段階的に追っていきます。




Q. COPDの増悪とは何か?


・増悪とは以下の主要症状の1つ以上が14日以内の期間で激に悪化してくることをいう。


 ➡咳(頻度および重症度の増加)、痰の増加(量の増加)と性質の変化(膿性、切れにくくなる)、または呼吸困難(レベルが上がる、または活動量が減る)。

 ➡また、これに伴う徴候は、頻呼吸(呼吸数が増える)、頻脈(脈が速くなる)、低酸素血症(動脈血の酸素濃度が低下する)、ガス交換障害(二酸化炭素濃度が高くなる)などがある。


 ➡増悪は気道および全身の炎症と関連し、多くの場合、気道感染、汚染、その他の急性気道障害によって引き起こされる。




Q. なぜ増悪が問題か?


・増悪は特に入院や救急外来 (ED) 受診を伴うなど、大きな医療負担をもたらす。


・多くのCOPD患者は、標準的な吸入維持療法を受けている間も悪化のリスクが高いままである。

 ➡気道の炎症とこれに伴う痰の変化と量の増加➡粘液機能障害の両方がCOPD悪化の主な要因である。




Q. COPDの増悪がもたらす状態とは?


・肺機能の急速な低下、健康関連の生活の質(QOL)の低下、さらなる増悪エピソードの反復、心肺イベント、死亡するに至るリスク増加と関連した臨床的に重要な出来事である。

 ➡増悪はCOPDの経過では最もリスクが高い状態である。

 ➡重症の増悪では入院治療が必要となる。

 ➡増悪では生存の危機と医療費負担が膨大となることが問題である。




Q. COPDの増悪で患者側に生ずる問題とは?


・日常と比較して症状が著しく増強する(例 :これまで無かった安静時の呼吸困難など)。

 ➡酸素必要量の増加を伴う新たな徴候の発現(例:意識状態の変化、下肢の浮腫など)。➡高度に近い呼吸窮迫の徴候(呼吸困難の悪化)、肺炎の発症など。

 ➡呼吸悪化に伴う不整脈、心不全など循環器系の問題が加わる。

 ➡多臓器の障害➡コントロール不良の糖尿病、腎不全または肝不全を含む重篤な併存疾患外来または救急外来での治療に対しても不十分な反応を示すようになる。




Q. アステゴリマブの治験成績は?


背景:

・COPDの多くの患者は、現在の標準的な吸入薬による維持療法を受けていても悪化を起こすことがある。


・その調節不全の原因➡インターロイキン-33 シグナル伝達の異常がCOPDの増悪に関与している可能性がある。


・アステゴリマブはインターロイキン-33の活性を阻害するモノクローナル抗体である。

➡これによるCOPDの増悪予防を目的とした治療効果を検証する。



目的:

・アステゴリマブはCOPDの増悪予防を目的として開発された注射薬である。

➡効果検証を第3相の治験として実施された2つの治験を合わせて有効性を評価する。



背景:COPDの多くの患者は、標準的な吸⼊維持療法を受けていても増悪(悪化)を起こす。

 ➡調節不全のインターロイキン-33 シグナル伝達はCOPDの発症機質に関与している。アステゴリマブはインターロイキン-33の活性を阻害するモノクローナル抗体である

 ➡アステゴリマブは増悪を予防する効果があるのではないか?



方法:

・2つの重複第3相試験 (OBERON試験およびTITANIA試験) では、現在または元喫煙者であり、前年に悪化の既往歴があったCOPD成人を対象とした。これらは安定した標準治療の吸入維持療法を受けていたにもかかわらず経過中に増悪を起こしていた。


・患者は無作為に、皮下アステゴリマブ (300mg) または偽薬を追加で4週間ごとに52週間投与された。

 ➡投与効果は、元喫煙者の間で52週間にわたり発生した中等度または重度の悪化の年率であり、最初の重要な二次終点は、全人口における中等度または重度の悪化の年率とした。

 


結果:

合計2,682名が臨床治験に参加した。条件を揃え、以下の患者数となった。


・アステゴリマブ群が446人、プラセボ群が431人、TINAIA試験ではアステゴリマブ群が 438人、プラセボ群が435人。

元喫煙者における中等度または重度の悪化の年率はアステゴリマブ群で1.34回、偽薬群で1.90回 (P=0.002)。



結果:

・アステゴリマブはQ2W群で中等度/重度の悪化率を年率15%有意に減少させた(P = 0.0077)、第4四半期群では12%増加(P = 0.0265)。

重度COPDの年間の悪化率は有意に減少した(発症率比0.68 [95%信頼区間 0.52-0.87])、P=0.0028)。アステゴリマブによる副反応は許容範囲であった。

 


結論:

・アステゴリマブを2週間ごとに投与することにより、頻繁な悪化を伴う臨床的に多様なCOPDグループにおいて、中等度から重度の悪化の年率が減少した。




Q. 本論文に対する問題点の指摘は?


・前述の論文で、Wedzichaらは、COPDにおけるアステゴリマブを試験した第2相bのALIANTOおよび第3相ARNASAプラセボ対照ランダム化試験の事前指定された統合解析結果を発表した[1]。重複するが下記がまとめである。


・概要は以下の通りである。

 ➡ランダム化患者は症状があり、登録前の12か月間に2回以上の悪化があり、74%以上が吸入型コルチコステロイド(ICS)、長作用型ベータ作動薬(LABA)、および長期作用型抗ムスカリン薬(LAMA)を服用していた。

 ➡現在、重要なことは、血中好酸球に関する適格要件がなく、患者の約87%が300細胞/μL未満で、この数値を下回るとデュピルマブやメポリズマブの効果ははるかに低いことである。

 ➡個別の研究も最近発表されており、両研究ともアステゴリマブの用量(476 mg/2週間)が高い用量で、中等度または重度の悪化(主要評価項目)の発生率を約15%減少させたことが示されている。ただし、ALIANTOでは統計的有意な意地が認めらたが、ARNASAでは統計的有意性が認められていない(それぞれP = 0.049 vs P = 0.068)。


 ➡以下が問題点と考えられる。

・アステゴリマブが悪化率低下としての有効性は、IL-33関連免疫細胞の活性化低下によって説明されると考えられる。

 ➡しかし、IL-33活性を制限するデコイ受容体として作用する可溶性ST2(sST2)の役割も考慮すべきである。

 ➡アステゴリマブは、sST2に結合し、細胞表面ST2に結合する抗体の量を減少させたり、結合していないIL-33レベルを増加させ(細胞表面ST2の活性化につながる)可能性がある。

 ➡これらのポイントはヒト肺での生体内研究は困難であるが、ST2を標的化することでIL-33シグナル伝達を抑制することはIL-33自体を標的化するよりも効率的で劣る可能性がある。


 ➡ALIANTOおよびARNASAの両研究のサンプルサイズは、両研究で観察された効果を上回る20%の悪化率減少を検出する90%の検出力を示した➡この予想より低い効果のメカニズムは、アステゴリマブとsST2の相互作用にある可能性がある。

 ➡さらに、本研究は20%未満の効果量を検出する統計的検出力が低く、偽陰性の可能性が高まっている。




 近年、多くの研究成果から、喘息とCOPDとは、発症の機序、経過、合併症(併存症)なでで異なることが明らかになりました。両者とも血液中の好酸球数が増え、悪化する場合がありますが、その場合には、近年、臨床現場で使われている抗体薬が著効を示します。

 これは、好酸球増多を伴うアレルギー性炎症反応という点で共通した治療効果を示すのでしょう。しかし、安定期にある場合のCOPDは喘息とどのように区分して治療を行うべきか、明確な回答のないのが現状です。


 ここで紹介した論文は、COPDに新しい治療薬を導入する可能性を示したものです。従来、COPDの治療薬と言えば、主に症状改善に目が向けられてきました。吸入ステロイドが使われていますが、効果は否定的ではありませんが必ずしも一定ではありません。

編集者たちのコメント[2]も厳しいものであり、アステゴリマブの使用により、必ずしも一定の効果が得られていない、という点が問題です。

アステゴリマブは従来の薬に上乗せ効果が期待できそう、という点でユニークです。悪化の減少効果は実証されたとしても日常生活の改善に至るかどうかは、追加試験の報告を期待したいと思います。




参考論文:

 

1. Wedzicha, JA. et al.

 Astegolimab for chronic obstructive pulmonary disease with frequent exacerbations: pooled analysis of the ALIENTO and ARNASA trials.

Am J Respir Crit Care Med. 2026; 212: 2050–2060 https://doi.org/10.1093/ajrccm/aamag226


2. Singh D. et al.

Astegolimab in COPD: success or failure? Am J Respir Crit Care Med. 2026; 212: 1902–1903 https://doi.org/10.1093/ajrccm/aamag343


※無断転載禁止

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